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「蒼穹」 梶井基次郎 を読んで。(青空文庫コラム)

(あらすじ)

午後、日差しのもと、渓(たに)と山の織りなす景色は心を休めるものだった。
夜、まだ(時代的に電灯のない)街道を歩いていると提灯も持たずに、家の明かりから闇へと消えていく人影を見た。そこに限りない虚無を見て恐怖を感じた。

(感想)

作者は、昼、空に広がる雲を見て、そのどこまでもあるような壮大さに鼓たれます。

けれども、夜の闇の中で、雲のその無限な神秘は、虚無に繋がっていることに気づきました。

そして、それを恐れるとともに、「情熱」すら感じた……。

この、死の予感とも言える虚無に「情熱」を感じたことに、ぼくは引っかかりました。

恐ろしさにそんな熱い心の動きを持つのでしょうか?

そして、それは哀惜(あいせき)の念ではないかと思い至りました。終わりのある自らの命をかわいいと思う気持ち……。

ぼくたちは、自分の生きることを尊いと想うこともあるのではないでしょうか。そうです、作者の「情熱」は、滅びのなかの生に何かを見たからです。

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