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映画『あのこは貴族』が描いた「分断と連帯」、そして「抑圧と解放」について。

映画『あのこは貴族』が描いた「分断と連帯」、そして「抑圧と解放」について。

【『あのこは貴族』/岨手由貴子監督】

長きにわたる映画史において、時代を超えて継承されてきた「シスターフッド」の精神。それぞれの年代において、女性同士の連帯を描く傑作が次々と生まれてきた。

そして2020年代を迎えた今、劇的なパラダイムシフトに合わせて、ついにこのジャンルが一つの美しい結実を見せ始めている。

昨年には、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』という一つの金字塔が打ち立

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もう一度、僕たちは宇多田ヒカルに「初恋」をする

もう一度、僕たちは宇多田ヒカルに「初恋」をする

【宇多田ヒカル/『初恋』】

宇多田ヒカルの新作タイトルが『初恋』だと知った時、心を強く動かされた人は多いと思う。語弊を恐れずに言えば、それは、彼女の1stアルバムのタイトルが『First Love』だったからだ。

《最後のキスは/タバコのflavorがした/ニガくてせつない香り》("First Love")

1999年、たった16歳の少女が、「初恋」の概念を変えてしまった。

あのデビューア

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タイトルの極意

タイトルの極意

「コンテンツを見せる」時には、相手の気持ちに立って、3つのT(ターゲット、タイミング、タイトル)を考える。ターゲットの本当に望むものやタイミングを考え、それをタイトルに反映させる。

「編集力とは何か」で編集の定義を「誰かに何かを魅力的に伝えること」としたが、タイトルを考えるときも、何を伝えたいのか、売りは何なのかを明確にすることから始める。ここで間違えてはいけないのが、あくまでも相手が魅力的に感

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何を書くか構成を決める

何を書くか構成を決める

文を書くのが苦手、気が重いという人に、文章を書くための大きなポイントを3つ、お伝えしよう。文を書くのが好き、すらすら書けちゃうという人にはまったく無益なので、そういう人は読まなくていい。

文章が苦手な人にまず聞きたいのは、「何を書くか、決めてある?」ということ。「そりゃ当然ですよ」と言うかもしれないが、「本当に?」と尋ねたい。「そりゃ当然ですよ、◯◯に対する弊社の取り組みです」「そりゃ当然ですよ

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『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』の文体の話

『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』の文体の話

3月1日に書籍『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』を上梓しました。noteで『そのプロジェクトに役立つ(かもしれない)「編集力」』マガジンにまとめている記事をもとに、より言葉に特化した視点で書き下ろしたものです。

noteが若い編集者に向けて書いたものだとしたら、書籍は編集者やライターではない人、でも仕事で文を書くことになってしまったような人に向けています。だからというわけでもないのですが、not

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編集者のデザイン力

編集者のデザイン力

「編集力とは何か」、企画力、取材力、発想力、表現力、文章力、デザイン力、各5回全30回の予定で書き始めたが、とり急ぎ駆け足でデザイン力まで終わらせることにする。

最近しきりと「デザイン思考」「デザイン経営」と言われるが、これは広義のデザイン。そういった本の受け売りだが「人々の問題やニーズを解決する方法を設計(design)する」ための考え方がデザイン思考で、「社内外の問題やニーズを解決する方法を

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webメディアの「継続」は毎日の食事づくりみたいな

webメディアの「継続」は毎日の食事づくりみたいな

宣伝会議の「自社メディアやnote、メルマガ等で発信する企業の担当者のためのコラムライティング基礎講座」でコラム企画の考え方を講義しました。「コラム企画で大切なのは、テーマや切り口、準備段階が9割です」という準備の話がメインで、「継続は毎日の食事づくりみたいなものです」という継続のイメージを付け加えたのですが、コラム記事の継続を食事づくりに例えるのは我ながら上手いなぁ、小さなトラブルも食事づくりに

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紙に書くということ

紙に書くということ

書籍『なぜか惹かれる言葉のつくりかた』のなかで、付箋ワークを紹介しています。原稿を書いたり、企画を立てたり、何かをコンテンツ化するときに役立つ方法です。

ざっくり言うと、こんな感じ。目の前のコンテンツ(考えなければならない企画のお題)について、思うことを、文でも単語でも、ひとつにつき付箋1枚、書き出します。良いことも悪いこともOKです。五感を使って(見た目は?匂いは?音は?味は?触覚は?)、5W

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雑誌POPEYEに学ぶ、企画・文章のつくりかた

雑誌POPEYEに学ぶ、企画・文章のつくりかた

私は沖縄住まいのローカルガールでありながら、シティボーイ御用達の雑誌POPEYEを定期購読している。

シティボーイに憧れているわけではない。むしろ興味がない。なのに圧倒的に企画と文章が面白くて、あまりにも毎回”つい”買ってしまうので、もう観念して定期購読することにしたのだ。

ターゲット層から著しく外れるはずの自分がこんなに惹かれるなんて...と思いつつ、ひとつ疑問に思うことがあった。そもそもP

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本のカバーの下にある、素敵な「表紙」の世界#2

本のカバーの下にある、素敵な「表紙」の世界#2

本のカバーを見るのって、とっても楽しくないですか?

素敵な装画に素敵なデザイン。
小説そのものを心とするならば、本のカバーは体や洋服のようなもので、その二つが一体になってこそ「本」という存在なんじゃないかなあと思ったりします。

ところでみなさん、本のカバーって、めくったことありますか?

カバーの下にあるもの、それは本の「表紙」。
ふだんはカバーがかかっているから目に入らないし、カバーを外して

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本のカバーの下にある、素敵な「表紙」の世界

本のカバーの下にある、素敵な「表紙」の世界

本のカバーを見るのって、とっても楽しくないですか?

素敵な装画に素敵なデザイン。
小説そのものを心とするならば、本のカバーは体や洋服のようなもので、その二つが一体になってこそ「本」という存在なんじゃないかなあと思ったりします。

ところでみなさん、本のカバーって、めくったことありますか?

カバーの下にあるもの、それは本の「表紙」。
ふだんはカバーがかかっているから目に入らないし、カバーを外して

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本に宿る温かさ

本に宿る温かさ

本とコーヒーを取り扱うお店をはじめて、数ヶ月が経過した。お店といってもまだオンライン販売のみで、たまにイベントなどで出店する程度のもの。特に大きな活動はしていないが、それでもたくさんの方に購入して頂けてとても嬉しかった。

実店舗は自分の暮らしを大切にできる、自然豊かな場所に作ろうと考えている。来年には城崎を出て新たな地域へ移住をするので、そこでいい場所を見つけられたらいいな。

生産背景を大切に

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遠野遥×カツセマサヒコ|ぼくらは小説をこう書いてきた。

遠野遥×カツセマサヒコ|ぼくらは小説をこう書いてきた。

新人賞デビューから2作目の『破局』で第163回芥川賞を受賞した遠野遥さんと、今年6月に刊行したデビュー作『明け方の若者たち』が大ヒット中のカツセマサヒコさん。令和の文壇に彗星のごとく現れた2人の若き小説家は、どのように物語を書いてきたのか。互いの創作の秘密を語り合った。

作家デビューのきっかけ遠野 新人賞をとって出版するのではなく、出版社からオファーがかかるって稀だと思うんですが、Twitter

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クズほど愛おしいものはない!【登場人物がろくでもない小説おすすめ4選】

クズほど愛おしいものはない!【登場人物がろくでもない小説おすすめ4選】

久しぶりに観た映画『欲望という名の電車』(1951)のとあるシーンがずっと焼きついている。

仲間たちとのポーカーを邪魔されたスタンリーはかっとなって妊娠中の妻を蹴りつけてしまう。押さえようとする仲間ともみくちゃになり、ぴちぴちの白Tはぼろぼろ。最後は頭から水を掛けられ落ち着くのだが、時すでに遅し。妻が出ていったとわかると途端に情けない顔で外へ飛び出し、「ステラーーーーーー!!!」と叫ぶのである。

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