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100字の物語

5か月前

本日のChatGPT 「100字物語・『エリザベート』」

ビールのある風景 100字小説

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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第212話:新しいメガネと新しい夢。

「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第215話:青春の影を口ずさんで。

「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第197話:note構想中。

「初めての人生の歩き方」(有原ときみとぼくの日記) 第44房:ほぼ100字小説始めました。そして鬱について。

深夜、全長160メートルの大仏が眩い後光を発しながら匍匐前進していた。山を砕き川を溢れさせ、町や村を破壊しつつどこかを目指していた。軍も出動し、包囲こそするが御仏への攻撃は躊躇され、解決の糸口は掴めずにいた。明け方、その終焉は目的地に着き呆気なく訪れた。自らの掌の上に着いたのだ。

『タクシー』 著名な占い師に薦められ、タクシーの運転手に転職した。当初は生活も不安定だったが、ある客を乗せてからは事情が変わった。それはもうこの世の者ではなかった。が、実に羽振りがよかった。その仲間も次々と乗せ、思い出巡りを手伝った。彼らの間で私は“故人タクシー”と呼ばれている。

流れ星だけで作られたという星に辿り着いた。思いのほか青くにじんだ星だ。零れ落ちた空の涙で出来た星とも言われているらしい。ここには宇宙の流れ者達が長い間降ろすに降ろせなかった傷を埋めにやって来る。その傷を養分にして育った樹が青く輝き、星の道を照らして次なる巡礼者を呼び寄せるのだ。

【ほぼ百字小説】特にどの本とどの本の間ということはなく、一、二冊指し抜かれた頼りない隙間にそれは出る。その隙間の左右の本が眠たげに寄りかかりあって長い二等辺三角形のトンネルを作ると必ずそれはやってくるのだ。けして目を合わせてもいけないが無視もいけない。それが今、こっちを見ている。

【ほぼ百字小説】各駅の月光列車で“指野原”に降りると見渡す限り白い指がはえていた。よく見るとうっすら透けており、血管や関節のようなものが見える。歩くと程よい弾力があり、一歩一歩が軽く浮き上がってしまう。まるでどこかへ運ばれているような感覚。いや、実際に運ばれていたのだ。首野原へ。

深夜。マンション3階の自宅にふらふらで辿り着いた。だが鍵が合わないのかドアが開かない。仕方なく呼び鈴を鳴らし、妻を待った。起きる気配はない。ガチャガチャとノブを強く回して音を立ててみるが変化はない。諦めてどこかで暇でも潰すか、とエレベーターに乗り込み気が付いた。そこは4階だった。

送られて来ているのはわかった。わかったというより、感じるといった方が正しい。それはチラシの見出しであったり、電車のつり革広告の一言であったり、公衆トイレの落書きであったり。姿かたちを変え、至るところに現れる。間違いなく俺へのサインだ。だが一体何のための? #もやもや系非百字小説

古い洋館が音を立てて燃えていた。巨大な蝋燭が灯ったように町全体がやけに明るい。業火に包まれた館から舞い上がる火の粉が漆黒の夜空へと吸い込まれていく。材木の爆ぜる音と軋む音が強くなった。半壊が近い。館を囲んだ群衆は身動ぎもせずじっと見ていた。燃え盛る炎ではなく真後ろにいるこの私を。

七人の巨人たちが音もなく街に近づいていた。肌寒い外気の中、彼らの周囲だけが陽炎のように揺らめいている。彼らには共通の特徴があった。裸体で一切の体毛がないのだ。だが一番の特徴は首の角度だろう。全員「?」と疑問符を浮かべるように首を傾げている。彼らはそのままゆっくりと街を素通りした。

“僕を見たら死ぬ”――それが都市伝説みたいに広まっていて誰も見向きもしてくれない。初めは軽いイジメのつもりだったのかもしれないけれど、トラウマのせいか僕には人生前半の記憶がない。気が付いたら忌み嫌われていて目が合うだけで皆青い顔で逃げ出すんだ。そして必ず死ぬ。言霊って本当に怖い。

毎日一個ずつ月が増え、ついにあと一個で空が完全に埋まる。七個目までは皆騒いでいたけれど、百個目くらいからはたまに見上げて会話するくらいになった。千個目ではもう飽きられていた。ところが空が半分以上埋まり出した時パニックと暴動が起き、人類はあっけなく滅んだ。それでもパズルは完成した。

赤い小さなトンネルと青い大きなトンネルがあって、自分は透明で、煙みたいに漂っていたように思います。施設というよりは劇場に近くって、100年前と変わらずに、3億年くらい未来から少しずつつ浸食してきて今ちょうどここに差し掛かってる星の光みたいな存在なんです。淡いけど壊れない。永遠に。

【ほぼ百字小説】白い塔に登る。気がつくとそう思っていた。この街に住んでいればどこからでもその白い塔を目にすることができる。いつ誰が何のために建てたのかは思い出せない。だがあの塔が街の中心であり、ランドマークであることは間違いない。その塔に登る。登れば何を為すべきかもわかるはずだ。

【ほぼ百字小説】あ、来た――というのはすぐにわかった。机の上に広げっぱなしにしていたノートにペタペタと足跡がついたからだ。ちょっとした間があり、次の瞬間棚の上の埃が舞った。ジャンプもできるようだ。それはしばらくあちこち嗅ぎ回り、今は恐らく私の頭の中にいる。こいつは一体なんだろう?

知らない宛先からメールが届いた。きっと迷惑メールの類いだろう。普段なら開けないのだが、タップを連打する癖でつい開けてしまった。メールには画像が三枚貼り付けられていた。一枚目は黒髪の美しい女性の写真だった。二枚目は彼女が僕と腕組みしている写真。三枚目は僕が首を吊っている写真だった。

人身事故で電車が止まるたび、またかよと思う。生きていて嫌気がさす日もあるのだろうが他に方法は無かったのかと責めたくもなる。だが違った。“あれ”は常に口を開けていたのだ。ストレスや疲れを溜め込むとまるでテレビのチャンネルが噛み合ったように忽然と姿を現すあれ。それが今、俺には見える。

旅館で締め切り原稿に追われていた。ライフワークだった作品の結末が決まらないのだ。ふと視線を感じて振り返ると押入が僅かに開いている。開けた記憶はない。閉め直して執筆に取り掛かる。が、気づくとまた押入が開いていた。さすがに怖くなって中を確かめた。瞬間、「シメナイデ」背後から声がした。

【ほぼ百字小説】それは確かライオンのタテガミを拾ってしまったリスの話で、威張っていたライオンが実は途方もなく小心者だったことがわかる筋道だったと思う。寝物語をせがまれ、なんとなく話し出してみたけれど、ふと我に返ってみるとどうもおかしい。私はまだ結婚もしてなければ子供もいないのだ。

傷つかなかったと言ったら嘘になる。勝手に好きになって勝手に諦めただけなのに。妻子がある人に言い寄るつもりなんてこれっぽっちもなかった。でも気がついたら貴方の優しい声、匂い、しぐさ、そしてそのひやっとした冷たい手。全部を愛しいと思ってた。でも……もう諦めます。 ただの猫に戻ります。

『価値』 その星に来て驚いた。自分が半額で売られていたのだ。すぐに店主を呼びつけ問い詰めると「値段を下げろと言ってくる客は多いが上げろと言われたのは初めてだ」と困り顔。私は全員を買い占め次の星へ飛んだ。そこで再び驚いた。自分が倍の値段で売られていたのだ。私はいい商売を思いついた。

『再生』 ずっと妙だとは思っていた。毎日飽きずに同じ朝食を食べ、同じ笑顔で見送られ、一秒の狂いもなくご近所さんと挨拶をかわし、働いて家に帰る。必ず同じハプニングに遭い、ギリギリで解決し、完璧に同じタイミングで感動していた。 だが、妻の笑顔にノイズを見つけた日、僕は全てを理解した。

【ほぼ百字小説】学校で事件が起きた。まあ、事件てほどではない気がするんだけど保護者全員が呼ばれたみたいだから事件なんだろうね。学校裏の鶏舎で飼われていたチャボたちの鶏冠が何者かに全部切り取られていたって話。それが今うちの冷蔵庫にあるってわかったら、ハハ、お母さんきっと驚くだろな。

コタツに穴が空いていた。いや、“コタツの中に穴がある”と言った方が正しい。つい昨日まで普通のコタツだったはずが今は掘りごたつのような縦穴が空いている。しかも底は見えないほど深い。妻にも早く見せねばと慌てて名を呼んだ。返事がない。そういえば今日は朝から一度も妻を見ていない気がする。

『日記』 この行為は不毛。記憶の上書きによる蓄積は事実上の個体性の獲得を可能にしたが、仮に個体同士のニューシナプスが顕現したとして――昔の言葉では“友情”というらしい――即メインクラウドで共有される為オリジナルの定義からは逸脱する。よって不毛たりえる。 追記:人類は三億年前に滅亡

【ほぼ百字小説】貧乏な風間家の台所にも地下収納はある。開けられたのは三年前の一度きり。後にも先にもここが使われることは二度とない。いや、この存在が大っぴらになることすらないに違いない。黙っていれば邦男夫婦には年金が入る。儂の体がこのコンクリートよりも冷たくなってからもう三年か……

『彼ら』 彼らの話をしておこう。いやぜひしておかねばならない。 彼らはどこにでもいる。そしていつでもいる。無論こうしている今も我々に近づき続けている。 だがその姿を見た者は誰もいない。 彼らは視覚で認識するものではない。 それを体感する時、我々はいない。 彼らは“死”そのものだ。

戦争はとっくに終わったらしいが、未だに地下に埋め込まれた土管の中で暮らしている。暇なので時々花を摘んだり、古い金貨を拾ったりしている。花は何科の植物か知らないが食べると火を吹くほどに辛い! たまに生えてくる巨大キノコは栄養たっぷりらしく私が生きていられるのは恐らくそのお陰だろう。

草原では野生のカステラたちの大移動が始まろうとしていた。カラメル色の薄ら甘い羽根を広げ一匹が飛び立つと他のカステラたちも一斉に後を追った。彼らが目指すのは一年を通して黒い雨が降るという黒糖海岸だ。そこには雌のバームクーヘンたちも産卵に押し寄せる。タイ焼きの私は泳いで現地へ向かう。

好きではなかった。むしろ憎んでいた。勝手放題で家族を振り回し、脳梗塞で救急車に運ばれては戻ってくる。そんな父親が退院し、町内会の役員として挨拶をしていた。口もよく回らないのに何か気の利いた冗談を言おうとして目を泳がせている。失笑が広がった。瞬間、父を笑った人間全員に殺意を覚えた。

小籠包に擬態したそれは敷地のトウキビ畑へ素早く滑り込み身を隠した。茜色の陽に照らされたトウキビの葉がサラサラと音を立てて揺れた。妹への成りすましを見破ったまではよかったが。長い夜になりそうだ。奴ら一体どこまで入れ替わりを進めている? まさか我々以外にも侵略者が潜んでいるとはな。

【ほぼ百字小説】交番勤務初日。初めての相談がシマウマのシマの落とし物だった。見れば透明な皮膚の上に縞状の黒い模様が確かに張り付いている。正式に遺失物として受け付けたものの当人が駆け込んでくる気配もなく三ヶ月。シマは届けに来た白馬の物に。元のシマウマは今後は僕と同じただのウマだな。

【ほぼ百字小説】 「パパ、今日は電車を一本おくらせて。ママは午後三時を過ぎるまで買い物に出ないで。お兄ちゃんはいつもの近道に近づかないこと。お姉ちゃんが次に這い出て来るのは二日後の深夜一時。いい?」朝食後、妹の見立てにそれぞれ頷き、解散した。これで今日も無事に生き延びられるはず。

【ほぼ百字小説】墓標都市と呼ばれるだけあって厳かに建ち並んでいるのはいずれも誰かさんのお墓ばかりだ。眺めているだけで気が滅入ってくる。用がなければ近づきもしなかったが今回ばかりはやむを得まい。まさか千番目の俺の“遺体”がこんな所に紛れ込んでいたとはな。見つけ次第“合成”してやる。