七緒よう

物書きです。 森の奥、ひっそりと書いています。 お仕事のご依頼もお待ちしています。 ㅤ

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プロフィール

こんにちは。七緒ようです。 自分では「物書き」と名乗っていますが、いわゆるフリーライターとして活動しています。 「明日の世界をちょっと面白く」をモットーに、今日も文章を書いています 新潟県新潟市出身/岐阜県在住 主な仕事は、個人事業主や中小企業のHPライティング、メルマガ代筆、事業計画書ライティング ほか。 最近では、作家を軸としていくために、コンテスト応募(結果待ち)や童話絵本の自費出版も始めました。 お仕事のスタンス 自分の名前が表に出ないライティングを多くやって

    • ままならない感情に、言葉の灯をともす

      こんにちは。 七緒ようです。 いつも私の作品を読んでくださって、応援していただきありがとうございます。 私は、「スキ」をいただいた通知がスマホに届くたびに喜ぶ程度に単純ですので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。 電子書籍を編纂中です―弱さも、違和感も、私たちの物語になる。 私の根底には、もしかしたら、そんな想いがあるのかもしれません。 自らの弱さに辟易しながら、それを捨てきれず、他人からの善意を疑う自分に嫌悪しながら、それでもただ生きようとする人々の姿を描こう

      • 流行病(はやりやまい)

        ※以前、「すごい病気」というタイトルで投稿したものを改題・修正しました。  照明が消えた暗い家に帰り、ただいま、と囁くように言いながら玄関のドアを閉めた。  足元の常夜灯を頼りに真っ暗なリビングに入り、見ることも探ることもなく、習慣となった動きで壁際のスイッチを押す。電球色の照明がリビングを日常に戻す。  あたため直した夕食を食べていたら、寝室の扉が開く音がした。  振り返ると、妻が眩しそうにして「おかえり」と言ってきた。 「ああ、ただいま。今日の茄子の揚げびたし、すごいね

        • キノコ

           朝、目覚めるとキノコが生えていた。  夢を見ているのかと思ったけど、どうやら現実らしい。  いつものようにトイレに行き、下着を下ろす。そこであらためて気づく。私の股間に、キノコが生えている。 「え、待って、待って。これどうやって用を足せばいいの」  三十歳にもなってトイレのやり方で戸惑うとは、夢にも思わなかった。  膀胱を軽くするついでに掃除も済ませると、昨日までは無かったそれを観察する余裕が出てきた。いや、むしろ余裕が無さ過ぎて、どこか他人事のように感じているの

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        プロフィール

          甘さの中に響く

           泣くように怒っている、いや、怒るように泣いているのか。彼女が私に訴える姿を自分でも驚くほど冷静に見ている。 (こういうとこなんだよな)  声に出さずに言葉にした感想は、口の中で何度も反響してから飲み込まれていった。  一週間ほど前に別れを切り出された彼女は、しばらく寝込んでいたらしい。そういえば、普段からメンタルが弱いというようなことを言っていた。さっきもこんなことを叫んでいた。 「そのつもりが無くても、私のよわよわメンタルだと、やっぱり傷付くことがある。それを知ってるはず

          甘さの中に響く

          読書感想文を書いてみた話

          友人の誘いに乗って、久しぶりに自分の読書感想文を書いてみた。 仕事として、毎年小学生の読書感想文を手伝うことはあるが、自分の読書感想文となると、いつぶりだろう。最後に書いたのは、中学生だったか高校生だったか。 今回、感想文の題材にしたのは、彩瀬まるさんの『森があふれる』。 普段書いているような小説は、いくらでも読まれて構わない。 けれど、自分の考えていることを書いたものが友人たちに読まれるとなると、つい“ええかっこしい”な文章になってしまう。 もちろん嘘の感想を書いたわけ

          読書感想文を書いてみた話

          すごい病気

           赤い光が窓から差し込む。  リビングに入ると照明は消えていて、消し忘れた暗室のセーフライトの赤い光が、観音開きの内窓の向こうからリビングにぼんやりと侵食してきている。  見ることも探ることもなく、習慣となった動きで壁際のスイッチを押すと、電球色のLEDがリビングを日常に戻した。  電子レンジで冷めた唐揚げをあたためながらSNSを眺めていたら、扉が開く音がした。  後ろを振り返ると、妻が眩しそうな表情で「おかえり」と言ってきた。「ああ、ただいま。今日の唐揚げ、すごいね」 「え

          すごい病気

          作家とヤモリ

           赤い光が窓から差し込む。  目が覚めた途端、汗が噴き出てくる。  西日が入る部屋が、夕陽で真っ赤に染め上げられている。  生ぬるい空気の動きを感じて横を向くと、扇風機が頼りなさそうに首を振っている。  私は首筋の汗を手で拭いながら、身体を起こした。時計の針は、二本とも6を少し過ぎたところで重なっている。  私は、パジャマ代わりに着ているバンプオブチキンのライブTシャツとジャージのハーフパンツを脱いで、鼻歌を口ずさみながら洗濯機に放り込んだ。  寝ている間に西日に焼かれてガサ

          作家とヤモリ

          白いキリンの彼

           赤い光が窓から差し込む。  しばらくして赤い光は緑、黄色と変わって、また赤になる。  ベッドに仰向けに寝ていると、クリスマスのイルミネーションのように、規則的に天井の色が変化する。  交差点の角に建つビルの三階に私の部屋はある。道路側の窓からは、ちょうど視線の少し下に信号機が見える。 「あぁ、カーテン閉め忘れてる」  テープを剝がすように、ゆっくりとベッドから体を起こす。体が重い。徐々に見えてくる自分の姿は、朝着たパンツスーツのままだ。ジャケットの袖についたしわにげんなりす

          白いキリンの彼

          咲がらを切る

           赤い光が窓から差し込む。  隣を走るトラックのテールランプが、私の乗ったタクシーを追い越していく。 「はぁ」  タクシーに乗ってから三度目のため息をつく。  これで良かったんだと、今日だけで二十回も言い聞かせている。 「お姉さん、えらい元気無さそうですね。大丈夫ですか」  ミラー越しに運転手のお兄さんが話しかけてきた。まあ、そりゃそうだよね。化粧っ気のない三十路女性が十分間で三回もため息をついていたら、引くか心配するか、だいたいどっちかだ。 「ええ、すみません。大丈夫です」

          咲がらを切る

          スプライト

           赤い光が窓から差し込む。  真っ赤な稲光が幾筋も空を走る。地球のように、雷雲はない。降雨もない。何もない空に突然赤い稲妻が走る。大気が薄く、酸素が豊富なこの星では、雲が形成されない。  そして、その豊富な酸素の影響で、地表のあらゆるものが酸化化合物になっている。要するに錆びている。部屋を赤く染める雷がなくても、窓からは赤茶けた景色しか見えない。 「赤い光は目に良いって聞いてたけど、まったく目が良くなった実感がないな。地球に帰ったら、あの部分は優良誤認だって担当に訴えてやる」

          スプライト

          渇き

           私は、このあと死ぬつもりでいた。  溜池山王駅で地下鉄を降りて、六本木通りを赤坂アークヒルズに向かって歩いているが、ちゃんと目的地を知っているわけではなかった。おそらく同じ目的地だろうという人にあたりをつけて、その後ろを歩いているだけだった。  前を歩く薄い紫色のワンピースを着た女性が、歩道から赤坂アークヒルズの方へ曲がっていく。そのままついていくと、エスカレーターで上階に行き、さらに少し歩くと巨人のバーベルが半分地面に埋まったようなオブジェが見えてきた。  その先に、唐突

          100字の物語

            ネットショップで商品を買った。 こうそく便で頼んだら、発送完了メールを受信直後に宅配ボックスに届けられた。 しまった。 間違えて「光速便」にしていた。 ふわトロが売りのプリンは、衝撃と熱で炙りプリンになった。 『54字の物語』という超短編シリーズがあります。 どちらかと言うと児童書寄りのこのシリーズですが、ちょっとその真似事をしようと思った次第です。 なんだか、大喜利みたいで慣れないと難しいですね。 ところで、お急ぎ便ってありますけど、本当に便利だなあと思います。

          100字の物語

          せかいでいちばんたのしいクジラ

          このうみには たくさんのいきものが くらしています ちいさな ちいさな プランクトンから おおきな おおきな クジラまで ひろい ひろい うみのなかでくらしています クジラのなかには にんげんたちから  「せかいでいちばん こどくなクジラ」とよばれているクジラがいました そのクジラは ひとりで  ふかいうみのなかを およいでいました ほかのクジラよりも ちょっとたかいこえの このクジラがやってきたのは むかし むかし おじいちゃんのそのまたおじいちゃんが まだ こどもだ

          せかいでいちばんたのしいクジラ

          あまやどり

           なあなあ、暇かい?どうせ暇だろ?どっかに行くこともせずに、こうやってワタシの話を聞いているんだから。  まあまあ、怒るなよ。え、お前がどっかに行けって?いや、そうは言ってもこの雨だぜ。雨が止むまでちょっと雨やどりさせてくれよ。何も取って食うつもりはないんだから。  にしても、久しぶりの本格的な雨だよな。ん?雨は嫌いか?そっちのあんたもか?ワタシは結構好きなんだよ、雨。  だって、雨が木々の葉っぱや地面に当たる音って独特だろ。それに、湿ってひんやりした空気が一面に広がっていて

          あまやどり

          なきイチゴ

          「お会計、543円になります」  財布から千円札を一枚取り出してトレイに置く。これで財布の中に紙のお金が無くなった。次のバイト代が入るのが、明後日。いや、しあさってだったかな。 「457円のお返しです」  受け取った小銭から二枚の一円玉をレジ横の募金箱に入れて、残りをジャラジャラと小銭入れに流し込む。今まで募金した金額で、お茶くらい買えるんじゃないか。  僕は少し横にズレて、値引きシールの付いていたかつ丼がレンジの中で温められるのを待った。  店員の女の子が、いかにも熱そうに

          なきイチゴ