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2020年5月の記事一覧

『身体の血全部抜きます』(短編小説)

『身体の血全部抜きます』(短編小説)

南極の氷の下から発見された(物体X)

(物体X)から現れた侵略的身体乗っ取り未確認寄生生物(生物Y)は南極基地隊員の1人に寄生し、次々に他の隊員達を襲いだした。

しかし人間と侵略的身体乗っ取り寄生生物(生物Y)との死闘の末に南極で侵略的身体乗っ取り寄生生物(生物Y)は殲滅出来たかに思われた。

無人になってしまった南極基地。

しかし侵略的身体乗っ取り寄生生物(生物Y)は南極大陸の基地にただ一

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眠れる森の美少女

その日王子は一人で森を散策していました。

急な雨が降り出し、雨宿り場所を探していると前方に洞窟があります。

王子は急いで洞窟に飛び込みました。

洞窟の中は意外に広く、人が暮らしている気配もあります。

『どなたか居ませんか?』

王子は洞窟の奥に向かい大声で呼びかけました。

•  •   •  •  • シーン•  •  •  •  •

何も返答は無く、王子は洞窟の奥に歩きだしました。

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ドクターマリオ母の心をありがとう(感動・短編小説)

ドクターマリオ母の心をありがとう(感動・短編小説)

『母さん 孫連れて来たよ。』

ベッドで眠る母はスースーと穏やかな寝息をたてて横になっている。

呼んでも動かしても反応しない母。

そんな母の手にゲーム機を持たせて動かすのが、僕なりの母のリハビリだった。

元気だった頃、やかんのお湯が沸くまで火の横でゲームをしながら番をしていた母。

その手にはゲームボーイ。

ドクターマリオが大好きで70歳から始めたゲーム遊び。

手作りのゲーム機入れポーチ

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午後3時の物語(童心・詩のようなもの)

午後3時の物語(童心・詩のようなもの)

初夏、照りつける太陽。

田んぼも水が温んで黒い小さなものが泳ぎ回る。

泥にくねくねと模様を描く三角を避けて、黒いものはくねくね泳ぐ。

バシャッ

《入ってない、、》

バシャッ

《入ってない、、》

僕達のチャレンジは挫けず続く。

バシャッ

《ん、?、、や、、》

黒い泥に蠢く姿。

《やった〜》

潰さず掴んで水で洗う。

『やった〜足付きの獲ったぞ〜』

バケツの中を覗きに来る頭、

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占い(キモイ・短編小説)

占い(キモイ・短編小説)

私の部屋はいつもジメジメしていて、カマドウマ、ザトウムシ、ヤスデ、シミ、色々な節足動物が姿を見せる。

その日もカサカサ カサカサッとモシャモシャした生き物が目の前を横切って行った。

ゲジゲジだ!

脱ぎ捨てて放ったらかしのTシャツに隠れたゲジゲジを手慣れた手つきで捕まえて、しっかりと本体をロックした。

『好き』

『嫌い』

黒い細い物体が言葉を発する度に、足元へヒラヒラと落ちていく。

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コンビニで保護した異形のもの(キモ可愛・短編小説)

コンビニで保護した異形のもの(キモ可愛・短編小説)

ある風の強い日にコンビニのソフトクリームの旗竿に(妖怪)一反木綿が引っかかっていた。

バタバタと風にたなびき、今にも破れそうだ。

生地も黄色く黄ばみ、ところどころ黒くカビまで生えている。

『あ〜ぁ〜可哀想に、、』

僕は旗竿にグルグル巻き付いてしまっている(妖怪)一反木綿を丁寧に解いて外してあげた。

もう何日もこの状態だったのか(妖怪)一反木綿は元気も無く、シワシワヘロヘロのボロ切れ状態だ

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ダイヤモンド爆誕(詩のようなもの)

ダイヤモンド爆誕(詩のようなもの)

ギュウギュウ詰めの暗い世界、、

ゆっくりゆっくり移動して、、

浮いたり潜ったり流れたり、、

硬い身体がギシギシ唸る。

『えっ?』

『動けるよ!!!』

『猛スピードで動けるよ!!!』

『超猛スピードで動けるよ!!!』

『おいらは70』『おいらは90』

『おいらはスピード100Km超え〜』

スピードを競う仲間たち。

『もっと早く!』『もっと早く!』

【遅いと黒くなっちゃうぞ!!

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少年達の秘密基地(童心・短編小説)

少年達の秘密基地(童心・短編小説)

『秘密基地に集合だ!』

学校帰り、校門でみんなに確認すると、僕は全速力で家まで走った。

ランドセルを勉強机に置くと踵をかえして基地に向かう。

僕達の秘密基地は学区西側の崖の中腹にあった。

セメントで覆われた崖の中腹には2mほどの平坦な部分があり、そこに拾ってきた丸太や竹、ボロ切れやビニール袋で基地建物が作られていた。

秘密メンバーは全部で5人。

僕達は崖下に着くと道路から柵を乗り越え、

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初夏の歓声(童心・短編小説)

『そっちは準備いいか〜』

『いいよ〜』

僕はタモの柄を逆さまにして、、

手に持つ側を側溝に突っ込んでガチャガチャと動かした。

一歩一歩、先にいる友達に向かって、、

ゆっくりゆっくり道路を歩く。

でもタモの柄を動かす手は高速に、、

水は濁り、かき回され、小さな嵐が発生する。

嵐から逃れようと何かがきっと逃げ回っているだろう、、

一歩 一歩 一歩 一歩

友達との距離が5m 3m 2

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未来社会の九十九神(未来・短編小説)

世界各国は国内内政や外交をAIに任せようと日々研究していた。

他国の利権を横取りし、領土を広げ、他国を辱める。

各国はそんな事をソフトに反映させようとして、AIソフトと対立していた。

《AIソフトは生意気だ、AIソフトは我が民族の為にならない、、》各国は賢くなるAIソフトに手こずっていた。

しかし、、一国だけAIソフトと共存する国が現れた。

《AIソフトさんが言うなら、、AIソフトさんに

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星に降る雪(詩的・短編小説)

星に降る雪(詩的・短編小説)

その星には水素の雪が降る。

空に見える赤い星から、、

真っ暗な宇宙の闇を乗り越えて、

星の表面には水素が積もる。

何年も 何十年も 何百年も 何千年も、

来る日も 来る日も 来る日も 来る日も、

1m 10m 100m 1000m 10000m〜

厚く 厚く 雪は積もる。

水素は水素に押し潰される。

ギュッと ギュッ〜と ギュッ〜〜と ギュッギュッギュッ〜と。

ある日潰れた水素

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虹色の宝物(童心・短編小説)

虹色の宝物(童心・短編小説)

太陽がサンサンと照りつける日陰のない道を、タモを持って僕らは歩く。

景色はユラユラと揺らめき、湿った髪の毛からは汗がタラリと流れ落ちる。

石段を登って神社の中を横切り、ブロックの塀に囲まれた目的の人家の横にたどり着いた。

神社から少し離れたその家は、大きな木が塀沿いに3本生えて緑のタワーを形作る。

側溝横の黒いアスファルトに緑の虫かごを置き、僕達は臨戦態勢に入った。

見上げるそのタワーに

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心躍らせる春の嵐(童心・短編小説)

心躍らせる春の嵐(童心・短編小説)

《ビュービュー、パチパチパチ》

春の嵐が家を揺する。

雨は窓ガラスを打ち、絶え間なく雨水は流れ落ちる。

窓の外を眺める僕は一人ワクワクと気持ちが高なってくる。

学校が休みの土曜日が待ち遠しい、、そして土曜日の天気は晴れでも雨でもどうでもよいのだ。

土曜日さえ来ればいいのだ。

やっと《土曜日》だ。

家族がまだ寝静まる時間に早起きして駅に向かう。

始発電車を待つ駅の、山に向かうホームに

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一人で野球をする子供(童心・短編小説)

一人で野球をする子供(童心・短編小説)

『ピッチャー第一球を投げた〜』

振りかぶった僕は全力で壁に向かい白いボールを投げる。

グローブを放り誕生日に買ってもらった木製のバットに握り直し、壁から戻ってくる白球を狙って力一杯振り回した。

《カ〜ン》

バットに弾かれた白球は45度の角度で壁に当たり、跳ね返ったボールは僕の後ろの壁にも当たってコロコロと転がった。

高架の線路に交差する道路は短いトンネルとなり、僕一人の野球場へと変貌する

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