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心躍らせる春の嵐(童心・短編小説)

《ビュービュー、パチパチパチ》

春の嵐が家を揺する。

雨は窓ガラスを打ち、絶え間なく雨水は流れ落ちる。

窓の外を眺める僕は一人ワクワクと気持ちが高なってくる。

学校が休みの土曜日が待ち遠しい、、そして土曜日の天気は晴れでも雨でもどうでもよいのだ。

土曜日さえ来ればいいのだ。

やっと《土曜日》だ。

家族がまだ寝静まる時間に早起きして駅に向かう。

始発電車を待つ駅の、山に向かうホームには僕だけが一人ポツンと立ちつくす。

ホームに入ってくる電車、、乗り込んでも僕一人だ。

目的の駅に着き、足早に目的地を目指す。

一歩また一歩、歩を進める度にどんどん早歩きになり、気持ちがドキドキしてくる。

目的地には一番乗りか、、心配する気持ちが一層歩くスピードを早くする。

遠くから目印の橋が見えだし、いつしか早歩きは駆け足へと変化していく。

目的地の河原は水溜りがあちこちに出来て、心配することも無くひっそりとしている。

河原に降りる階段を足早に降り、大きな重い荷物を足元に置いて河原の端へと急ぐ。

河原はネズミ色の砂岩が剥き出しとなり、白い貝殻が【昔は海だった】と思い出させてくれる。

春の嵐は石の表面を削り、余分な砂を洗い流す。

僕はしゃがみこみ、石の表面を丹念に眺める。

何もなければ中腰のまま一歩、また一歩と歩を進める。

ローラー作戦だ。

見落としが無い様に、二度見が無い様に、見た場所は足跡が目印だ。

灰色、白色、青ネズミ色、赤サビ色、黒色、茶色、色々な色が目に入るが、目的の色ではない。

僕が探す色は時には黒く、時には白く、ただ共通しているのはエナメルの光沢だった。

エナメルの光沢は1500万年が経っても艶々と輝き、僕の心に訴えてくる。

恥ずかしがり屋のエナメル質は石の中に全体を隠し、少しだけ表面に顔をのぞかす。

出たがりのエナメル質は白く風化して見つけてと全身を晒して主張している。

野球のキャッチャーみたいな姿勢で下を向きズルズル動く姿は異様だろう、、

そんなことは関係ない。

僕の心には人の目なんて意識は無い。

黙々と石の表面を眺めつくす。

《あった!サメの歯だ〜》

鋭く尖ったサメの歯は、それはそれはカッコ良く、好奇心と収集癖を満たしてくれる。

だから春の嵐は、春の大雨は僕の心をドキドキとさせるのだ。


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