初夏の歓声(童心・短編小説)

『そっちは準備いいか〜』

『いいよ〜』

僕はタモの柄を逆さまにして、、

手に持つ側を側溝に突っ込んでガチャガチャと動かした。

一歩一歩、先にいる友達に向かって、、

ゆっくりゆっくり道路を歩く。

でもタモの柄を動かす手は高速に、、

水は濁り、かき回され、小さな嵐が発生する。

嵐から逃れようと何かがきっと逃げ回っているだろう、、

一歩 一歩 一歩 一歩

友達との距離が5m 3m 2m 1m • • •

『今だ!』

僕のガチャガチャと友達のタモが水の中で落ち合い、同時にタモは水から田んぼの畔に引き上げられる。

網の中は泥と草とゴミが沢山入り、メタンの臭いが辺りに漂う。

一人が草を退け、泥を掻き分け、ゴミを網から放り出す。

覗き込む沢山の黒い頭たち。

『いた〜!』

『ドジョウだ〜!』

『やった〜』

泥の中から取り出された細長い黄色い魚は、やはり濁ったバケツの水に急いで入れられる。

『今度はこっちだ〜!』

先程から少し離れたその場所で、繰り返される小さな行為。

足に付いた泥は白く乾き、バケツの中は逃げ回る小さな影とゴミで賑やかだ。

小コイに小フナ、メダカにドジョウ、ヤゴにザリガニ、白いエビ。

歓声の数だけ獲物はいる。

20mおきのゴミと泥の小さな山は、太陽の光を浴びてキラキラ輝く。

飛びまわるトンボにも足元のカエルにも目をくれない。

今日の獲物は水の中の生き物だから、、、

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