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一人で野球をする子供(童心・短編小説)

『ピッチャー第一球を投げた〜』

振りかぶった僕は全力で壁に向かい白いボールを投げる。

グローブを放り誕生日に買ってもらった木製のバットに握り直し、壁から戻ってくる白球を狙って力一杯振り回した。

《カ〜ン》

バットに弾かれた白球は45度の角度で壁に当たり、跳ね返ったボールは僕の後ろの壁にも当たってコロコロと転がった。

高架の線路に交差する道路は短いトンネルとなり、僕一人の野球場へと変貌する。

鋭い当たりはヒット、45度の当たりはホームラン、天井に当たったりゴロの当たりはアウトと決めていた。

1回から9回まで、ドラゴンズ対ジャイアンツの試合は白熱して進行する。

まれに車が通行して試合は中断するが、今日も【予定通り】ドラゴンズが3点差をつけて勝利した。

テレビや学校の校庭で見る野球は沢山の人達が試合をしているが、僕の野球は一人で出来る。

僕はピッチャーになりバッターになり、三塁手になり選手交代を告げる監督になる。

150kmの豪速球を投げるピッチャーになり、クリーンナップを担うホームランバッターになる。

実際に試合をしたら僕はどれだけ出来るのだろう、、

たまにそんな事を考える時もある。

でも今日も学校から帰った僕は、バットとボールとグローブを抱えて一人【野球場】へと歩きだしていくのだった。



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