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写真とカメラを大仰に語る

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写真とカメラについて、思ったことを書き連ねたものです。小さなことを大袈裟に。読んでために…ならないコラム集です。
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#fujifilm_xseries

映画は1人で観に行く。写真は1人で撮りに行く。

映画は1人で観に行く。写真は1人で撮りに行く。

 渋谷は映画の街。僕にとってはそうだった。あとは音楽の街か。でも、いちばんは映画を観るために降りる駅だった。シネマライズ、ユーロスペース、イメージフォーラム。単館系の映画館は、僕に新しい世界を教えてくれた。
 中学生だったか、高校生か。当時夜ラジオをつけっぱなしで寝ていたのだけれど、週末の、でも学校に行かねばならない土曜の早朝、アジアの文化を教えてくれる番組から、イランの映画がとても素敵だ、という

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街中でスナップするなら、シルバーのカメラがいいのではないか。

街中でスナップするなら、シルバーのカメラがいいのではないか。

 ここ最近、とみにそう思うようになった。
 昔のライカがシルバーよりもブラックの方が値段が高かったのは、塗装という手間や原料が必要だったことに加え、ステルス性が高い、という特徴があったからだ。いわゆるプロ仕様というわけだ。
 ガラスに映りこむのも抑えられるし、なにより黒いボディのカッコよさといったら、ということもある。

 フジフィルムのカメラ、X100は、最初シルバーモデルしかなかった。あとで、

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趣味に救われてきたんだと思う(金銭面以外)。

趣味に救われてきたんだと思う(金銭面以外)。

 週に一度くらい、自分のしたいこともできなくなったら、その仕事はやめた方がいい。

 そんな言葉をどこかで見て、うん、なるほどな。そうだな、と思った。
 そんなに人と接することが得意でもなく、またそれを好むわけでもない自分の休日は、何事もなくて、写真を始める前は、部屋で漫画を読むのが好きな超絶インドアな日々だった。
 子どもの頃から、独りが好きな人間だったし、なんなら同世代がハマっていたもの……ミ

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桜の季節に思う写真旅

桜の季節に思う写真旅

 我が家のすぐ近くに桜の名所があるため、朝早く出て行き、撮影する。すると朝の6時前、ちょうど空が明るくなってきた頃にはもう自分と同じような人がいて、絶好のポイントをうまくゲットできないでいる。
 桜並木できれいなところが駐車場になっていて、車のない状態は朝くらいしかない。が、先に来られている方がこれまた絶妙な位置に駐車していたりしてアングルが限られてしまう。

 昨日休日出勤の代休で、さすがに平日

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都市の光を撮りたい

都市の光を撮りたい

 学生のころは練馬に住んでいて、そんなに派手に遊ぶほうでもなく、部活仲間と朝方まで飲むというのが関の山だったから、例えば新宿とか池袋とか、当然渋谷なんかで飲んだり踊ったりなんて(踊れないし)経験は皆無だ。
 いや、皆無ではないけれど、ごく稀のことだった。踊ってはいない。
 それに自分の住む駅にはそれなりに良いお店はあったし、リーズナブルだったから、生活も遊興もその駅界隈で済んだ。貧乏学生だったし、

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マニュアルフォーカスの官能

マニュアルフォーカスの官能

 ピッとやってパッと撮る。
 半押し、親指フォーカス、なんとも便利な機能だな、と思う。正確さはともあれ、一眼レフのあのオート性能は、決定的瞬間という意味を、違えてしまった、そのくらいの機能だと僕は思う。

 僕の初めてカメラはα7000 ミノルタのオートフォーカスカメラだから、マニュアルでフォーカスを合わせないといけないということを知らないままできた。

 のちに手に入れたフィルム一眼レフのOM1

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子どもの写真をプリントしての所感

子どもの写真をプリントしての所感

 ここ1年間ばかり、これまで撮りっぱなしにしていた子どもたちの写真をどうするか悩んでいた。5年分である。いくつかプリントはしたことはあるものの、その絶対数は少ない。

 保育園の年度末には、毎回素敵な(そしてこれを先生方はいつ作ってくれているのだろうかと恐縮するほどに立派な)アルバムを作ってくださる。
 それに比して息子たちの父は、撮ったらそのままで、時として写真をジジババにメールしたりするくらい

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あなたの標準レンズは何ミリ?

あなたの標準レンズは何ミリ?

 毎回どこかで見かけるこのテーマだが、カタログで見れば50mmか、その辺りのことを指しているにも関わらず、いや、35mmが自分にとっての標準だ、とか、いやー40mmこそしっくりくるよ、とか、鳥を撮るなら200が標準ですよ、という人もあって、標準という言葉がなんとなくブレている感も否めない。

 ただ、そう言う意味合いでの標準であれば、どれが標準でも構わない。先にタイトルの回答をするのであれば、50

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焦点距離と視野角。虹をみつけて。

焦点距離と視野角。虹をみつけて。

 朝の散歩も平日は暗いうちしかできなくなってきて、写真を撮りながらというのが厳しくなってきた。何より寒いし、休日のように防寒対策しっかりして出かける時間もないしで、サボり気味である。
 そんなわけで先の土曜のお休みの日に、久しぶりの朝の散歩となった。平日より1時間ほどゆっくりと家を出れば朝日とタイミングが合う。天気は晴れるとはなっていたが、東の空は確かに日が昇ってきたけれど、西の空からはちょっと重

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ナゾのカメラバッグ

ナゾのカメラバッグ

 夜な夜なフリマサイトを見ていたら、おや、これはアレの色違いかな?と思うものが出てきた。
 アレというのはコレ。

アルチザン&アーティストのacam1000だ。
これのベージュ色が出品されているな、と思ったのだ。
acam1000は、ライカ用にサイズなど計算された鞄で、ライカくらいの大きさならカメラ二台とレンズ5本が入る、スナップに適した、(が、あまりに重くなって逆に辛くなってしまったりもする)

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レンズ3本。

レンズ3本。

 旅行でのレンズの組み合わせで最適なのはどんなだ?などと仕事の合間に妄想したりする。
 すると、それなら28-50-90かな、と思ったりする。近い焦点距離の方が使いやすいかも、という投稿を先日したばかりなのに。(あれはあくまで日々のスナップにいいんではないか、という発想でして)

 それは、たとえばカメラ二台運用する時も28と50とか、50と90とか、程よく焦点距離が離れているし、28と90という

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桜はなぜ美しいのか。

桜はなぜ美しいのか。

 桜の花を見る。
 特にソメイヨシノはその花自体そんなにきれいだとは思わない。
 ソメイヨシノの薄い色は、春の青空によく映えるが、花そのものを見るとなんとボンヤリした花びらなのだろうと思ってしまう。

 たとえば色鮮やかなチューリップとかコスモスなどの方が、見ていてきれいだと思うし、桜同様日本の代表的な花である菊にしても、こちらの方が見応えがあると思う。ただ、それは花そのものの話であって、桜は花そ

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焦点距離はなぜキリが良くないのか。

焦点距離はなぜキリが良くないのか。

 21 24 28 35 50 75 90 135…

 写真を始めた頃には疑問にも思うことがなかったが、あるときふとなぜなんだろうと思うようになった。
 この、焦点距離の数字の中途半端さ。
 ライカのレンズにある焦点距離をあげただけでも、きっちりとした数字のものは50mm 90mmくらいしかない。5という数もまあキリがいいとしたとしても35mm 75mm。なんだこの5mmは、となってしまう。

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写真が眼差すもの。

写真が眼差すもの。

 月を見て、小さな子どもが言った。
 ほら、お月さまが笑ってるね。

 男がため息混じりに呟く。
 今日の月は泣いてんなあ。

 和歌の世界や詩の世界で行われる擬人法によって、泣いたり笑ったりする、それら人ではないものの感情は、その実、その言葉を口にした者の感情に他ならない。自身の気持ちを、自分ではない何かに託すのである。

 写真は、撮る対象がなければ成立しない表現だから、自身の外へ目を向ける必

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