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都市の光を撮りたい

 学生のころは練馬に住んでいて、そんなに派手に遊ぶほうでもなく、部活仲間と朝方まで飲むというのが関の山だったから、例えば新宿とか池袋とか、当然渋谷なんかで飲んだり踊ったりなんて(踊れないし)経験は皆無だ。
 いや、皆無ではないけれど、ごく稀のことだった。踊ってはいない。
 それに自分の住む駅にはそれなりに良いお店はあったし、リーズナブルだったから、生活も遊興もその駅界隈で済んだ。貧乏学生だったし、いい店はあったとはいえ、大勢で行くとなれば庄屋とかまあ、チェーン店ばかり。(にしても、あの店はあんな大騒ぎするバカな我々を出禁にしないでいたよなあ、とつくづく思う。)2次会となれば、その駅を歩けば誰もが立ち止まって中を気にしてしまう、そして中ももちろんディープなバー?に行っていたけれど、そこもOBがストックしてくれているボトルを開けるのでそんなに高くつく、と言うわけでもなかった。

2017 銀座
2017 銀座

 アルバイトは銀座だった。東京在住の方なら知っているだろう、某ビアホールで働かせていただいていた。なんだかんだもあったが、基本皆いい人で、年数を重ねていくうちに任せてくれる仕事も増えて、やりがいもあった。今、食事をとりあえず作れてしまえるのは、ここのおかげだし、何よりね、時々いただけるビールの美味さ。アレはやっぱりビアホールの美味さだよね。

谷中あたり 2012

 さて、今日書きたいのは、そんなふうに東京に住んでいながら、あまり出歩かなかったことを後悔している、ということだ。

 TwitterやInstagramでときどき流れてくる都市部の夜の写真を観ていると、あのころに写真を趣味にしておけばな、と思う。何もすることのない夜に新宿とか出かけて気ままにスナップする。何もすることがないという日があまりなかったのもあるけれど、バイト帰りの銀座とか、終電ギリギリまで遊べたんじゃないかと思う。
 写真はいい。それを言い訳にしてあちこち出かけたくなる。自分が唯一学生の頃に「撮影」に行ったのは浅草の三社祭くらいか。親父から無断拝借していたα7000で撮った。
 今の自分のようにカメラが趣味であったならOMとかマニュアルのカメラに単焦点を二つなんとか用意して撮影しに行っただろう。以前、それは、田舎に戻ってきてからの話だが、中古で見つけたOM1は、手のひらにしっかり包まれるほどの小ささで、実に良かったのを覚えている。それから同じくペンF Vもよく使った。フィルムが倍になったようなものだから、とにかく現像に出すのが遅くなった。まるでタイムマシンのような感覚になった。そう言うことを考えると、学生時代にカメラを手にするならオリンパスのカメラだったろうと思う。

 
 それで足繁く都市部に行き、スナップを撮る。夜景や繁華街のひといきれを撮る。そんなのも良い。

2018 銀座
2018 有楽町

 さて、社会人となって、時々出張で東京に行くことがあるけれど、ここ数年はそれもなく、都市を撮るということができないでいる。東京に行くときはだいたい池袋を拠点にして、仕事の合間に撮影するのだけど、考えてみると都市部の細々としたシーンは撮るものの、これぞ東京だ、というようなダイナミックな風景をあまり撮ったことがない。歩道橋から片側何車線もある道を長時間露光で、とか、副都心を広角で、とかスカイツリーを入れた写真とか、そう言うものにあまり興味を持たないでいた。
 それこそ仕事で近くに来たついでに、と言う程度だ。

2017 銀座


2016 原宿、たぶん
2016 新宿

 実はこの文章はかなり前にこの時点まで書いてそのまま下書き保存していたものだ。
 近く東京に行くことになりそうだ。夜景を撮る自信はないが街中のスナップ、細々とした都市の隙間をまた撮ることになりそう。やることはこの田舎町でやることとさほど変わらないだろう。でも、あのごちゃごちゃとした規則性の中をうろうろするその楽しさは、やはり大きな街だからこそ、というのはあると思う。宮崎だとどうしても小さい繁華街しかないからね。

 さて、何を機材として持って行くか、目下の悩みだ。そしてそれは誰かに相談するようなことでもなし、仕事の行き帰りにぼんやりと考えるのがちょっとした幸福だったりする。
 今年も展示会にお呼ばれしたから、そのための写真を集めるのもいいかもしれない。いいのが撮れるかな。撮りたいな。


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