焦点距離と視野角。虹をみつけて。
朝の散歩も平日は暗いうちしかできなくなってきて、写真を撮りながらというのが厳しくなってきた。何より寒いし、休日のように防寒対策しっかりして出かける時間もないしで、サボり気味である。
そんなわけで先の土曜のお休みの日に、久しぶりの朝の散歩となった。平日より1時間ほどゆっくりと家を出れば朝日とタイミングが合う。天気は晴れるとはなっていたが、東の空は確かに日が昇ってきたけれど、西の空からはちょっと重たい雲が出ている。
これはあまり遠出もできんな、と、散歩というよりは近くの公園に行って、コーヒー飲みながら、野鳥でも撮影するかな、と、X-T5にタムロンの18-300をつけて外に出た。うん、微妙に雨粒を感じる。
すぐ近くにある大きな池は、公園に隣接し、遠くに山を眺めることができて、かねてよりここの景観は観光とまではいかなくても、公園にでもしたらよいのにな、と考える場所だった。そう、以前は池の堤防を利用した道路で、池を挟んだ窪地は住宅がぽつんぽつんとあるような場所だった。それを最近になって公園にしたところで、その手前にある神社から歩道を経て、この公園につき、さらに池沿いに整備された遊歩道を通ると市内の史跡のある高台に着くという、なかなかよい場所である。その遊歩道の実質的なスタート地点がこの公園で、冬は多くの渡り鳥も見られるし、夏は睡蓮、それから古代蓮、秋には遊歩道を行くとアサギマダラが飛ぶ。ゆえにカメラマンなんかもそこそこ遠くからやってきたりするのを見かける。秋のお祭りでは、神社から松明行列が歩く場所にもなっていて、幻想的な光景をみせてくれる。
さて、本題からずれてしまった。
池には多くの鳥たちがいた。
X-T5のフォーカス性能を試すために、カメラを振り回すが、動きの速い鳥にはファインダーにその姿を収めるのだけでも苦労する。そうしているうちに、微妙な雨の感触が、確かにそれとわかる強さになってくる。しかしまだ大丈夫。雲はまだ遠いし、何よりこのカメラとレンズは防塵防滴だ。
と、山の向こうに一筋の光を認める。
あ、虹か。
カメラを山の方に向けて撮る。これまで虹が出ていたのをカメラで撮ったことは数度あるが、換算で望遠450mmで捉えたことはない。なんならクロップもできるので換算900mmがここで生きてくる。これはなかなかラッキーだ。
やがて虹はくっきりとその姿を見せてくれた。きれいな半円を描いた。当たり前の話だけれど、僕はその虹の真ん中に立つかたちになる。あまりに近いので、28ミリ相当の画角では全て入りきれない。こんな時超広角があればなあ、大迫力なんだがな、と考えていた時に、ふと思った。
上の写真が換算48mmの切り取り、下が27mm相当の切り取りだ。
これを撮って、今度は自分の目で虹を見てみた。はあ、なるほど。確かに言われてみればそうかな、と。
50mmは人の視野角に近いとされているが、直接虹を見てみると、意識をせずに対象を見た時に、50mmくらいがきちんとその光景を認識できるな、と思ったのだ。
それから28mmは、少し視野を広く見ようと心がけなければ意識下に持っていけない。でもこのあたりが意識したら、その対象が何かというのが見えてくる、その限界のような気がした。
人の視野角は何となく180度(以上)はあると言われたことがある。武道を習っていた頃、相手を見つめながらも、周囲を見渡す意識を持て、と(無茶だが、確かに両手を広げると真横の手のひらが微かに動くのを感じられる)。だが、まあ、ちゃんと見るなら28mmくらいなんだな、と、今回何となく納得してしまった。
しかし、歳を取ると見える範囲も狭まってくると言われる。人によって、やっぱり見え方は違ってくるのではないか。そう言うことは一応あるとしておいても、50mmが人の視野角に近いという言葉を、初めて実感した朝であった。
ズームをほとんど使わなくなっていたけれど、小さなカメラバッグに収められる望遠レンズとしたらかなり有用だな、と思った朝でした。