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2024年2月の記事一覧
ハードボイルド書店員日記【175】
出勤の日に寒気が戻る
「いらっしゃいませ」
「ちょっと面倒なこと訊いていいかしら?」
「どうぞ」
「太宰治を大好きな女の子に小説以外でオススメの本、何かある?」
「ございます」
「え、本当に? 小説じゃないのよ。漫画とかも駄目よ」
「とか」がどこまで含むのか気になる
「こちらなどいかがでしょうか」
「『まさかジープで来るとは』って何? エッセイ?」
「せきしろさんと又吉直樹さんによる自由律俳
ハードボイルド書店員日記【174】
「これはおかしいでしょ」
4月並みに気温が上がった休日。昔の職場へ足を運ぶ。某スーパーマーケットの2F。児童書コーナーの脇から入った。
「こどものとも」などの福音館書店の月刊誌が面陳されている。本来は定期購読のみで返品できない商品だ。版元の了承を得たのだろう。現物が1冊も店にないものをいきなり年間予約というのは敷居が高い。
黒いスニーカーの先端が、日本史及び世界史のエリアへ向く。己が担当し、
ハードボイルド書店員日記【173】
書店の1日は荷開けから始まる。
雑誌と新刊、そして補充分。雑誌は付録を付けて棚に出す(コロコロコミックやゼクシィみたいに大量に入るものは、積める分だけ開ける。残りは仕入れ室にストック)。書籍は新刊と補充分を分け、ジャンルごとに長机の上へ置く。置けなくなったら各担当が使うブックトラックへ移す。
すべての書店が同じ方式で動いているわけではない。都内の大型店だと雑誌と新刊は前日の午後に入る(雑誌とム
ハードボイルド書店員日記【172】
「ない? ああそう」
閑散期の平日。しかし荷物は多い。先月ひとり辞めたから尚更そう感じる。混み具合に留意しつつレジを抜け、品出しを急ぐ。昼休憩を半分削るという切り札が脳裏を掠めた。だがよくよく考えたらそんなカードは配られていない。あったとしても私には見えない。少なくとも最低賃金でサービス早出を繰り返す非正規書店員の手元には。
「取り寄せもできないの?」「すんません」「そこは『申し訳ございません