凡筆堂

昭和中盤生まれの男です。グラフィックデザインとコピーライティングを生業としてきましたが、現役をほぼ引退。今後は明るい調子のコラムやエッセイをはじめ、軽い読み物などを発表して行きます。雑文をひとつ。「ナメクジに塩をかけると死んでしまう。やっぱり塩分の摂りすぎはよくないんだな」。

凡筆堂

昭和中盤生まれの男です。グラフィックデザインとコピーライティングを生業としてきましたが、現役をほぼ引退。今後は明るい調子のコラムやエッセイをはじめ、軽い読み物などを発表して行きます。雑文をひとつ。「ナメクジに塩をかけると死んでしまう。やっぱり塩分の摂りすぎはよくないんだな」。

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〔ナンセンス劇場〕陥落してやる

●某月某日  映画を観た帰り、一人の男とすれ違った。あたしもその男も、お互いを一瞥しただけで通りすぎたけど、すれ違いざま、あたしはわずかに心地よいめまいを覚えた。男からわずかに漂い出ていたフェロモンに、女の本能が反応したのだ。  こんなことは初めてだ。いままでの三十年間、男を刺激することはあっても、男に刺激されることなど一度もなかった。  あの男はたしかにいい男だった。日本人ばなれした彫りの深いマスクといい、深く澄んだ目といい、あるのは好感だけで、いやらしさなどは全然なかっ

    • モミジの紅葉とちょっとたわむる

       今回は写真中心でさらりと行きます。  晩秋のある日、天気が良くて時間がとれて、時期も良くて気分も乗ったので、紅葉を見に近郊へ足を伸ばした。  紅葉見物といってもおまじない程度で、ほんのわずかだ。ある宿泊施設の近くにある一画で、クルマが十数台停められる程度のスペースしかない。そこにモミジが植えられている。数えてはみなかったが、せいぜい十数本といったところだろう。  その狭小な場所だけで写真を撮って紅葉とたわむれた。だから、山一面の紅葉だとか錦繍だとかというスケールではない

      • 細胞が生まれ変わって全身が新しくなる?

         知人のNさんは「人間の細胞は日々生まれ変わっているから、○○日で全身が新しくなる」という意味のことをしばしば言っていた。その〝○○日〟が何日だったか覚えていないが、私はそれを聞くたびに絶対あり得ないと思っていた。  ちなみに、Nさんは決してばかではない。それどころか、人並みよりやや上と思えるアタマを持っている。  私は小学校低学年のとき、自転車の無謀運転でケガをし、眉間のやや左寄りの所を数針縫ったことがある。そこは明らかな傷痕になり、成人してからもしばらくの間残っていたが

        • カメムシの悪臭を嗅いだことがありますか

           某食品メーカーの製品の袋の中にカメムシが混入していたという報道があった。私が目にしたのは11月8日付けの複数の新聞だった。  開封したときにカメムシがどんな状態だったかまでは説明がなかったが、カメムシが飛び出してきたとか強烈な臭いが漂い出たとかしたのだろうか。密閉された袋の中で生きていたとは考えにくいが、状況がどうであれ、買った人は驚いたことだろう。  その事件とは関係ないが、今年はカメムシが大量発生したという報道が以前からあった。  カメムシは「不快害虫」と「農業害虫」

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        〔ナンセンス劇場〕陥落してやる

          〔ナンセンス劇場〕凡才バカ凡、サンマを買いに行く

          「やあ、銀さんおはよう」 「おや、凡ちゃん、おはよう」 「こんなとこで何してるんだい」 「こんなとこって、ここはおれの店じゃねえか」 「ふふ、言ってみただけだよ」 「朝っぱらからおとなをからかっちゃいけねえや。今日は日曜で学校が休みなんだな」 「日ごろの行ないがいいからね」 「そういうひょうきんなとこは親父によく似てるな」 「銀さんの親父にかい」 「おれの親父に似てるわけねえじゃねえか」 「還暦にもなって真に受けたのかい。案外うぶだね」 「相変わらず口が

          〔ナンセンス劇場〕凡才バカ凡、サンマを買いに行く

          世界自然遺産「知床五湖」の「一湖」へ

           北海道ツアーの3日目に知床半島へまわり、知床八景の一つである「知床五湖」を訪ねた。まだ紅葉には早かったが、秋の気配は十分に感じることができた。  まずはとりあえず写真を一枚紹介、ということで「一湖」の一部。  「知床五湖」は知床国立公園内にあり、澄んだ水を満々と湛える。知床半島全体が2005年にユネスコの世界自然遺産に登録されたことから、知床五湖もそのまま世界自然遺産の身の上となった。  知床国立公園は高山植物などを含む自然が豊かで、ヒグマはもちろん、エゾシカやエゾリスな

          世界自然遺産「知床五湖」の「一湖」へ

          北海道「小樽運河」に心たゆたう

           先週から今週にかけ、某旅行代理店のツアーを利用して北海道を旅してきた。4日間で北海道をめぐるという欲張りな駆け足ツアーであり、何か所もゆっくり観て歩くという旅とは趣が異なった。  そんなわけで、noteでたっぷり紹介しようというムシのいい野心をいだいていた私の思惑は外れた。  それでもせめて2本や3本は記事にしようと画策していたのだが、ふり返ってみたらそれすら危うくなった。  そんななかで、これは記事としてなんとか耐えられるのではないかと思ったのが「小樽運河」だ。ほかの場

          北海道「小樽運河」に心たゆたう

          意表を突かれる

          〔解説〕  相手が自分に対して思いもよらないことを言ったりやったりすることを、相手の側から見て「意表を突く」という。古くからよく使われている。  いまさら説明するまでもないが、「あの選手はいつも意表を突く作戦で勝つ」というぐあいに使う。一方の負けた側は「あの作戦に意表を突かれた」などと言うが、これはことわざではない。  同様の意味をもつものに、中国の古典『南史』(なんし)由来の「意表に出る」がある。「あのやろう、意表に出やがった」などと使う。 (ここまではパロディーではな

          意表を突かれる

          クマムシと泥棒と無駄な能力

           天下の大泥棒といわれた石川五右衛門は「浜の真砂は尽きるとも世に泥棒の種は尽きまじ」という辞世の句を残したとされている。しかし、史実上の裏付けは乏しく、実際には後世に創作されたものと考えられているようだ。  なぜそんなことになったかというと、石川五右衛門に関する史料が少ないうえ、この言葉が悪事を働く者の性質をよく表していて、物語にする場合には魅力的な表現だからだ。これには、後に五右衛門が義賊とされ、歌舞伎や人形浄瑠璃で題材にされたことが関係している。  それはさておき、五右

          クマムシと泥棒と無駄な能力

          急がば近道

          〔解説〕  元のことわざはよく知られた「急がば回れ」だ。何かするとき、安易なやり方をすると失敗したりすることがある。たとえ時間や手間がかかっても、安全で着実な方法を選ぶほうが結局は確実ということを言った教訓だ。  直接の意味は、「急ぐとき、不案内な近道を行くと危険なこともある。だから、遠回りになろうとも安全な道を行くほうが結果的に早く着く」というものだ。  謂われには諸説あるが、一般的には室町時代の連歌師である宗長の歌が出所とされている。  その歌とは「もののふの矢橋の船

          急がば近道

          ある三つの励ましの言葉

           今回は「もうおまえの記事など金輪際読まない」などと言われるかもしれないと思いつつ書きました。内容は励ましや慰めの言葉についてで、長い間書くことをためらっていたものです。  三つの言葉を取りあげ、私が常々思っていることを述べますが、いまふうに言う「個人の感想です」とあらかじめつけ加えておきます。  拙作『成るようにしか成らない』で、「努力は必ず報われる」や「実らない努力はない」という言葉について、私はそんなことはないと反論した。  世間には、実らない努力が山ほどある。死ぬほ

          ある三つの励ましの言葉

          可もあり不可もあり

          〔解説〕  「可もなく不可もなし」という言葉がある。「良いところもないが悪いところもなく、平凡である」という意味だ。たとえば「今年の新入社員はみな平凡で、可もなく不可もなしと言ったところだな」などと遣われる。  もとは孔子が自分の処世の態度について言ったもので、前述の解釈とは意味が若干異なる。  孔子は「世には清い世捨て人もいるが、自分は彼らとは違って可もなく不可もなしであり、ごく普通の道を行く者なのだ」と言った。  このことから「(略)言行に過不足はなく、中道を行くこと

          可もあり不可もあり

          それ、気の遣い方が違うでしょ

           梅雨が明けて暑さが本格化しはじめたころ、地元の夏祭りが行なわれた。私は氏子総代の一人なので式典の運営に携わっていた。  主な神事がすんだ後、四人の氏子総代が手分けして、出席者に酒器を配ったり神酒を注いだりしてまわった。  この儀式は、小さな酒器に注がれた一杯の神酒を飲むだけのことなのだが、飲むという表現が大げさに感じられるほどのわずかな量だ。  その神酒を飲んだあと、私の隣に座っていた人が「私、一滴も注いでもらえなかったんですけど、酒が足りなかったんですかね」と私にささ

          それ、気の遣い方が違うでしょ

          ヘビがまっすぐだったら横に倒れるか

           ずっと前から解けない疑問がいくつもある。  別に珍しい疑問ではないのだが、アシナガバチはなぜあんな見事な六角形が集合した巣を作れるのだろうか。六角形は四角形より角がふたつ増えるだけだが、構造的にはかなり複雑になる。  しかも、たくさんのハチによる協同作業だ。話し合いなどできないし設計図もない。それなのに、まるで打ち合わせでもしたかのように、見事に作りあげる。ハチの種類によって異なるが、巣は独自の形をもっていて、どれもきちんとできている。  クモの巣は、ハチと異なって単独で

          ヘビがまっすぐだったら横に倒れるか

          隣がなんだ

          〔解説〕  人は他人のことが何かと気になるものだ。そして、皮肉なことに他人のほうが良く見えてしまう。  それを言ったことわざが「隣の芝生は青く見える」「隣の花は赤い」「他人の飯は白い」などだ。これらはいずれも羨望や嫉妬などがねじ曲がって生じたさまざまな欲の姿とも言える。  自分以外のもの、特に身近な他人の持ち物や状況を、自分のものよりも良く見がちである、という人間の心理を表している。  対語に「隣の白飯より内の粟(あわ)飯」「よその米の飯より内の粥(かゆ)」などがある。

          隣がなんだ

          よく眠れていますか

           今朝の新聞で、今日9月3日が「睡眠の日」だということを知った。これまでも新聞は読んでいたが初めて目にした(と思う)。いままで新聞が取りあげていなかったのか、単に私が見過ごしていただけなのか。  睡眠の日について調べてみたら、睡眠健康推進機構が日本睡眠学会の協力を得て、睡眠や健康への意識を高めることを目的に制定したということがわかった。  3月18日を「春の睡眠の日」、9月3日を「秋の睡眠の日」と定め、それぞれの日を挟んで1週間を「睡眠健康週間」としていろいろな啓発活動を行

          よく眠れていますか