急がば近道
〔解説〕
元のことわざはよく知られた「急がば回れ」だ。何かするとき、安易なやり方をすると失敗したりすることがある。たとえ時間や手間がかかっても、安全で着実な方法を選ぶほうが結局は確実ということを言った教訓だ。
直接の意味は、「急ぐとき、不案内な近道を行くと危険なこともある。だから、遠回りになろうとも安全な道を行くほうが結果的に早く着く」というものだ。
謂われには諸説あるが、一般的には室町時代の連歌師である宗長の歌が出所とされている。
その歌とは「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」というもの。琵琶湖を横断する船は速い航路だが、これは危険だから、遠回りになろうとも安全な陸路を選ぶべきだということを詠んだものだ。
「急げば回る」「急ぐ道は回れ」ともいう。似たような意味のものに「急いては事を仕損じる」がある。
(ここまではパロディーではなく事実)
〔さらに解説〕
現代社会は何から何まで室町時代などとは大違いであり、さまざまな分野で高速化している。限られた時間のなかでの処理が求められることが多く、旅などでも高速道路や飛行機が利用されることが多くなっている。
平成時代のなかごろには「全国近道利用推進協議会」(早井近道会長)が発足し、省エネや時間の効率化の観点から、毎年秋に「急がば回るな運動」を展開。「急がば回れ」などは時代遅れだから、時代に即したものに変えるべきだという声をあげていた。
賛同者リストには「日本遅刻撲滅連合」や「あなたの近くの寄り道協会」などが名を連ねる。ちなみに、日本格言制定委員会の尾琴場委員長は「あなたの近くの寄り道協会」の特別会員に登録されている。
<街頭インタビュー>
女性には男性が、男性には女性がインタビューしている。
18歳(女)家電量販店
「へえ、いいじゃん。やっぱ時代の流れに乗らないとね。ねえ、『急がばショートカット』なんてどう? あ、やっぱりだめ?」
51歳(男)証券
「ああ、近道のことわざね。私、自宅と駅の間に近道があるんだけど、その近道、通りの両側が飲み屋ばっかなんですよ。だから後ろ髪引かれる思いで回り道しなけりゃならないってわけ。いいんだ、どうせおれの人生なんて回り道なんだ。こんちくしょう」
27歳(女)アパレル
「なんでもそうだけど、ダイレクトに迫るのがいちばんよ。まわりくどいこと言ってちゃだめ。ねえ、あなた奥さんいるの? あら独身! イケメンだから既婚かと思ったわ。じゃ、彼女は?」
20歳(男)自動車販売
「早く到達すればいいってもんじゃないですよね。おれ、いつも彼女に『早すぎる』とか『早射ち』なんて言われるんですよ。どうこらえても1分が限界。あ、質問に関係ないですよね、すいません。だけど、せっかくなんで訊いていいですか。ちなみに、おねえさんはどのくらいの時間がいいですか。え、7、8分っ!? うっわ~、めっちゃハードル高いわ~」