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記事一覧

【詩】 ディストピア

【詩】 ディストピア

いったい どうなってしまうんだ
この世界は

鈍重な緞帳

放縦な訪問

笑い椅子の公開処刑

閉ざされつつある居住空間

はやく逃げださなきゃ

はやく行動を起こさないと

もうとっくに手遅れだよ

だれひとりとして篩にかけられず

散り散りになる 蜘蛛の子たち

ただ対岸に 目を据えて

来るべき日に 震えている

【詩】 炎

【詩】 炎

さあ ダンスを見せてくれ

よくないものを燃やしながら

自在に踊る炎

何も残らないほど 擦りつけ合った

日常を残して ここに来た

日頃は禁止されてる火遊びを

思う存分 するために

頬を炙るぬくもりは きっといま

世界中でいちばん身近く 親密だ

これまでの出来事や 歩んできた道のりを

いっそ こんな風に燃やしてしまえたら

どんなに楽になれるだろうか

燃えろ燃えろ もっと見せてお

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【詩】 大人たち

【詩】 大人たち

「大人」と呼ばれる存在を

まだずっと遠い 空の上のもののように

思っていたとき

それは全てにおいての見本であり

規範であり 確固とした基盤だった

いつかその「大人」というものになれば

抱えている問題のほとんどは解決すると

何があってもびくともしない 怖いもの無しになれると

漠然と信じていた

けれどいま その「大人」と呼ばれる存在になってみて

決してそうではないことに気づいた

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【詩】 断捨離

【詩】 断捨離

古い思い出を引っ掻き回して

歩んできた道程の上の

ひとつひとつの標に触れた

かつて達成したと喜んでいた
それらの低い山々は

見るも無残な姿になり果てていた

ボロボロに欠けてしまって 
何だったのか判別も出来ないもの

風化してしまって 土台しか残らないもの

見るたびに 脳の中が蒼ざめた

けれど 古い思い出は 

少しずつ 話しかけてもきた

気に入らないものは 捨ててもいいよ

そし

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【詩】 Don't disturb

【詩】 Don't disturb

夕べさんざん叩いたドアは 
結局開かずに終った

ひらひらと 風に吹かれて 枯れ葉が落ちる

誰も逆らえない 自然の摂理だ

落ちた枯れ葉はもう枝には戻れない

長い冬を越えて 春を待ち

再び生まれ変わるまで

だからもう そっとしておいて

乾いた瞳で 貴女は言う

Don't disturb 煩わされたくないのよ

そんな気持ち

誰にも言えない 誰もわからない

【詩】 孤独な馬場

【詩】 孤独な馬場

霧のなかをひとり

前も見えずに疾走する

そのなよやかな身体をたくましき獣にあずけ

どこへ辿り着くのかもわからぬまま

ただ ただ 前へ

顔を打つミスト 匂い立つ風

獣との絆を

全部力にして

前も見えぬ 霧のなかを

全力で走り抜ける

【詩】 夏の終わり

【詩】 夏の終わり

どこかに行ってよと 
あんなに願ったはずなのに 
いなくなってしまったら
とたんに寂しくなった

わかってたはずなのに
止められなかった

素直じゃない
わたしの目には

まぶしすぎたの 
あなたのきらめき 

【詩】 ねこ

【詩】 ねこ

何を発しているの

きみの周りは柔らかい気でいっぱい

まるっきり 小春日和の縁側だ

天国のようなお腹は柔らかい毛でいっぱい

そこは〝蚤の高天ヶ原〟

もちろんきみのお腹に蚤なんていないけど

蚤たちはきっと 死んだらそんなところに

行きたいんだよ 極楽浄土だ

そう言って笑う僕らを横目で見ながら

きみはいつもの通り 

クールにキメているんだ

笑わないのに ものも言わないのに

何を発

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【詩】 書くということ

【詩】 書くということ

書くということ

それはすなわち すべて バランスだ

そのときの きみのこころの ありようを

如実に表している

書くということ

文字は こころに正直

曲がったり 震えたり

使う道具によって きみの字も変わる

それだから

書くということは

きみにとって とても大事だ

【詩】 好きなもの

【詩】 好きなもの

浮かび上がって来たんだね

アイデアと共に 役に立ちたいと思って

どうしてなのか説明できないけれど、

何の理由もなく好きなものがある

本と文房具
それと香り

大好きな 赤

【詩】 原爆記念日

【詩】 原爆記念日

今年もあの日が廻ってきた

日本じゅうが手を合わせる

かなしみと 怒りの浄化を祈る日が

ああ どうか

一瞬の閃光に 何もかも持っていかれてしまった 

激しさと 悲惨さと 痛みと

汚辱や 辛酸や 無念や 呆然や

すべてを籠めた

長い時間の 忍耐も

少しでも やわらかくとけて

光にとけてゆきますように

年に2回 わたしたちは

手を合わせて 祈る

【詩】 嗜好

【詩】 嗜好

時折、
こういった何の脈絡も統一性も無い
モノや考えに

取り囲まれて生きているのが

自分なのではないかなあ、

と思うことがある

もう少し、言葉、思考、そして筆記具を

丁寧に、大切に

こんな風に、書くことと読むことだけに

1日を費やせる暮らしを手に入れたい

【詩】 夏を味わって

【詩】 夏を味わって

窓を開けて 扇風機つけて

夏の午後を味わう

酷暑の海を渡ってきた やわらかく たわむ風 
姿の見えぬ 蝉たちの伴奏

今 この季節の 最大演出

横になって 目を閉じる

裸足の足を投げ出せば 
するり撫でられる 解放感

何のために生まれてきたの

この辛さがあるゆえの 快楽よ

それを味わうために 生まれてきたのよ

ちいさな声が 聞こえてくる

夏の午後を 味わうことは

生きてることを

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【詩】 道具

【詩】 道具

完璧に 封印されているもの

決して美しいとは限らない

使い古された時代ものであるかもしれない

リフィルは無い 役目が済めば それで終わり

けれどそれは 私の手になじみ

触れている時も しまい込んでいる間も

常に変わらず そばにある

だから大切に少しずつ使って

できるだけ長く ともに過ごせるようにする

理由なんてない ただそれは

私の中に

完璧に 封印されているものだから