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ストーリィドロップス

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不定期マガジン「ストーリィドロップス」 ちょっと何か読みたい時に、小粒な短編小説集。
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記事一覧

【短編小説】終点、サザンクロスにて。

【短編小説】終点、サザンクロスにて。

 その電車は銀河を走っていた。具体的には地球から、終点である南十字座まで。

 通常の電車は観光地や市役所等、意味のある場所に駅を設けるものであるが、何せ宇宙はとても広く「意味」のある場所などそうそうないので、天のレールは地球から南十字座までほぼまっすぐに引かれていた。
 天の川の星々をバラストに、彗星の冷ややかな尾をレールにしている以外、何の変哲もないその電車は、客を遠い別世界へと連れていくこと

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【小説】配管ノ森

【小説】配管ノ森

前書き 今回の小説は藻洲転石(@moss_ymmt413)さんのこちら、『思念構造体・彼我境界(Thinking Structure: the Border within)』という作品、
 及び同氏の「小説の表紙とかに使って頂けたら」という一言に触発され、生まれてきた小説になります。

 転石さん本人にも小説を読んで頂き、画像加工の許可を得た上で、ヘッダー及び表紙画像として使用させて頂いております

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【小説】贖罪と強欲の歌

【小説】贖罪と強欲の歌

 僕はどれだけ好きな人から逃げてきたのだろう。どれだけの時間をふいにして、どれだけの気持ちをうずめてきたのだろう。

 心が痛い。心が痛い。

 自分に会わせる顔がない、他人に会わせる顔がない。
 大好きだったことに面倒だと目を背け、ある事ある事に適当な理由付けて、

 夢を見ることを諦め 夢を叶えることを忘れ、
私を消して欲しいを幾度となく繰り返しても、まだ剥がれない逃げ足が、私の嫌悪感を逆撫で

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【8/16 日記】 観葉植物の隣人

【8/16 日記】 観葉植物の隣人

 私は自室に観葉植物を飼っている。名前はソテツ。ちなみに種類は『サンセベリア キリンドリカ』であり、裸子植物のソテツとは何の関係もない。
 名前の由来は「何となく強そうだから。」そんなぶっきらぼうな、と思うかもしれないが、人間だってそんなもんではないか。とか思ったりする。親がどんな人間になって欲しいか願いを込めて、その子に名前を付けるが、その通りに育つことは滅多にない。だったら別に名前の字面に拘る

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わーるずえんど。

わーるずえんど。

 星のアクセントが散らばる夜空の下、白い砂浜で、僕達は二人で話をした。

「百合子のこと、どうなった?」
「やっぱり、捨てる事にした。」
「そっか。」

 そこに居るはずのもう一人が居なかった。僕たちは3人家族じゃなかったっけか。

 心のずっと下の方から、重油の匂いがした。ずっと蓋をしてきた重油の匂い。今となってはどうでも良いはずの、腹の底に溜まるような匂い。

 「せかいのおわりだね。」

 

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蜘蛛と琥珀

蜘蛛と琥珀

 蜘蛛は琥珀を恐れていた。何故ならかつて、その夕焼け色の牢獄に、自分と同じ姿の蜘蛛が閉じ込められているのを見た事があるからだ。

 彼は食う者であったが、食われる者であった試しはなく、また捕われたことも無かった為、それがとても恐ろしかったのだ。

 蜘蛛は琥珀色の夕焼けを恐れた。どうして陽が琥珀色になるかをその蜘蛛は知らなかったが、兎も角、朝と夜の境目のほんの短い時間だけ世界が琥珀色になる事を知っ

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造花の花園

造花の花園

 いつか夢で見た造花の花園が、私の記憶にあまりにも美しく痣を残したので、記憶に彫り込まれた痣をそのまま現実にする事にした。タトゥーを入れるのと同じ理屈だ。アレは言葉や景色の痣を体に刻み込むということ。それと同じ事を私は自宅の庭で行う事にした。

 色とりどりの薔薇の造花、レンガと白い柵を大量に買った。仕事をしながらだったので、花壇が完成するまでに数年も掛かってしまった。
 花園、と呼ぶにはあまりに

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渇いた小海老

渇いた小海老

 小さな海老を飼った。いつの間にか死んでいた。
 飼った瞬間は海老の事を好きだと言っていたのに、彼らはいつの間にか死んでいた。

 小さな小瓶には海老と一緒にマリモも生きていた。そしていつの間にか死んでいた。好きという感情も一緒に枯れ果てていた。

 またか、と私は目の前に小瓶を持ち上げた。

 好きって何だろうって死骸に問いかけた。
 長続きしなきゃいけないのかなって死骸に問いかけた。
 貴方が

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きれいなこどくに しんでいく

きれいなこどくに しんでいく

 今日隕石が降ってくるそうだ。それも結構大きめの奴。息も絶え絶えのニュースキャスターを尻目に、自分は立ち食いチェーン店の天そばをかっ喰らっていた。
 
 そりゃまぁ、急だなぁ、とは思ったよ。朝に突然「お母さん!今日遠足があるんだ!」って告げてくる小学生くらい急だな、とか思った。そんな急に準備出来ないわ‼︎ってね。

 でも、まぁ、私は…まぁ、うん。『そうだよね』って思った。
 煮え切らないかもだけ

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ミミズクさんの聞き上手

ミミズクさんの聞き上手

 ミミズクさんは聞き上手です。
 彼は今日も、人の曇りに耳を澄まします。

「ミミズクさん、何処からきたの?」
 彼は首をこてん、と傾げます。
「ミミズクさん、どうして夜は暗いんですか?」
 彼は首をこてん、と傾げます。
「ミミズクさん、私の明日の予定は?」
 彼は首をこてん、と傾げます。

「ミミズクさん、今日の大学の講義の内容が分からないよ。」
 彼は首をこてん、と傾げます。
「ミミズクさん、

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海月記

海月記

 私の友達の悠樹は、頭が良かったのです。
 彼は全てを単調に感じていました。
 彼は多くの事をシンプルに説明する事に長けており、また彼は多くを知っていました。私も彼に多くの事を教わったものです。
 他方、悠樹は無限を求めていました。魔法という言葉をしきりに口にし、「無限の魔法の正体を突き詰める為に学んでいるのだ」と言っていました。

 私にはその言葉の本意は分かりませんでしたが、彼が何かを強く求め

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たいむとらべる

たいむとらべる

 とある目的を果たす為に左回りの時計が必要だったのだが、それは世界各地からごっそりと売り切れてしまっていたので、僕は仕方なく代わりのタイムマシンを作る事にした。

 豆腐の角を少しくり抜いて、タンザナイトの粉末を振りかける。牛の革でそれらを擦り合わせて、その革とiPhone■■の中の基盤を適当なコードで繋ぐ。これを2セット用意する。

 最後に蛍光灯の両端に1セットずつ、牛の革を押し付けると蛍光灯

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びぃ玉のりゅう星

びぃ玉のりゅう星

 ガラス玉とかびぃ玉ってさ、子供の頃の自分にとってはそれ以上無い宝物だったのよね。

 子供の頃は気まぐれなタイミングでびぃ玉が欲しくなって、それで「びぃ玉ほしー」ってお母さんに頼むと、夜には持ってきてくれるんだけど、ソレ、毎回綺麗にラッピングされてるの。

 私が「そのびぃ玉どうしたの?」って聞くと、「近所の河原から取ってきたのよ」なんてお母さんが返すから、高校生になるまで「びぃ玉」って何か分か

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