渇いた小海老
小さな海老を飼った。いつの間にか死んでいた。
飼った瞬間は海老の事を好きだと言っていたのに、彼らはいつの間にか死んでいた。
小さな小瓶には海老と一緒にマリモも生きていた。そしていつの間にか死んでいた。好きという感情も一緒に枯れ果てていた。
またか、と私は目の前に小瓶を持ち上げた。
好きって何だろうって死骸に問いかけた。
長続きしなきゃいけないのかなって死骸に問いかけた。
貴方が死んだのは私のせいなのかなって死骸に問いかけた。
まぁ、そうなんだろうな。って改めて落胆した。
こうやって私は彼氏を捨てるんだろうなって思ってた。
こうやって私は子供も殺すんだろうなって思ってた。
渇いた愛。どうでもいい愛。すぐに飽きる愛。それだけが私の胸中に当然の如く居座っている。
だから、愛があっても付き合わない。結婚しないし子供も作らない。そう決めていた。
「ペットだって粗雑に扱って良い訳じゃないだろう」
うん。それは自分でも分かってた。その筈なのに、何で海老なんて飼っちゃったんだろうな。どうせすぐに殺すのに。
小瓶の水面に浮かぶ小さい四匹の海老を掬い上げて、小さく切ったキッチンペーパーの上に置いた。
せめて素揚げにして食べてあげようと思ったから。彼らが食べられるのかどうかはどうでも良かった。ただ命を無駄にしたくなかった。
サラダ油、何処だっけ。そうやって探すだけの時間が作業のように過ぎていく。
やっぱり、それは渇いた時間だった。