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珠玉集

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心の琴線が震えた記事
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2024年10月の記事一覧

LL(ロングロング)長屋の日常、人が『生きる』を考える河畔

LL長屋はループ線上を24時間止まることなく走り続ける回るアパートである。 LL長屋には多くの人が住み、さまざまな生活が営まれている。 人は長く生きていると老化する。そして時々認知症というものを発症する。それがイフにはよく理解できていなかった。人間の身体の仕組みとしてそういう状態に変化していく場合があるとAIのプログラムに書きこまれてはいたものの、しっくりした理解はできていなかった。 イフはアンドロイドである。高齢者の介護を目的に創り出され、このLL長屋を担当する介護担当

「突如現るNewロマン。追いますか?追いませんか?」…獅子座

やあ獅子座のみなさん、お任せしました。   ついに獅子座にふさわしい時代が、やってこようとしています。 旅の準備は…よろしいか?   そう。ここから先…2025年以降の獅子座はおそらくかなり遠い場所まで旅に出ることになるでしょう。 どのくらい遠いかといいますと、 その行先はアンドロメダ星雲くらい…。 そうあなたが乗車するのは「銀河鉄道999」だ!というくらいです。 ※若い世代のために解説:「銀河鉄道999」とは?  :松本零士作の名作SF漫画&アニメ。壮大な物語ですが、基本

¥250

掌篇小説『紙のドレスを着た女』

 ホテルへ向かう。 「部屋の鍵を開け放して待っている」  と云う、男のところへ。「○○ボーリング場のすぐ南だから」  公衆電話からの回線によるか当人の資質か、くぐもって如何にも後ろ暗げな声による道案内はそれだけで、スパイでもあるまい、只のどこにでもころがる既婚者だろうに追われるように切れた。  私は《昔アイドルみたいなプロボウラーがいたんだっけ?》とぼんやり思うぐらいでボーリングなんて男みたいに球を片手で持てないし遊ばないから『○○ボーリング場』も知らないし、外は地球がイ

ひと色カフェ 無事開催!(11/30追記)

11/30(土)朝、追記しています ひと色カフェ、無事開催されました。 お越しいただいたみなさま 本当にありがとうございました。 ずっとピアノを弾いていました。 この上なく幸せな時間でした。 でも、よく考えたら ピアノの方を向いているので カフェの様子が見られない。 カフェの様子が気になったのは カフェが終わった後でした。 15時過ぎからライブ配信をして 現地の音を伝えてみました。 リアルタイムでライブを 聴きに来てくれたみなさま ありがとうございます! セ

河合隼雄さん

私に得意科目があったとしたら きっとたぶん 得意科目は 「悩むこと」 だったと思います 本当には今起こっていない事を心配して 縦にしたり横にしたりあれこれ 終わった事をあれこれ パンみたいにこねちゃって 先の事を考え 心配しすぎて 困っている 困っている自分に困っている 悩む事にずいぶん熱心だったから 今年 note をはじめてから色んな事を思い出します 好だった音楽、好きだった小説、好きだった絵の事、好きだった洋服の事 ともかく「好きな事」

10月31日に捨てていく思考

イヤホンがない。多分、ダイニングテーブルの上にある。積み上げられた本の下敷きになっているだろう。歩いている時は、大抵イヤホンをつけているから、なんだか寂しい。それに耳が余計に音を拾う。目も見るもの見るものを拾ってくる。頭の中は、余計なことばかりを考える。それが面倒だから、イヤホンをつけているのに。今日は、イヤホンがない。 寄り道した商業ビルで、本のイベントが行われていた。素敵な本がたくさんあった。気になった表紙の本を手に取り、ぺらっとめくる。一行目を読む。あ、と息が止まる。

わたしにはできない

そういうことがある。 空を飛べないとか、走っている新幹線を素手で止められないとか、超人的な行動ができないということではなく、通常の人間ならできることがわたしにはできないのである。できないことがいくつもある。 衣服の整理・管理ができない。これはもう、絶望的にできない。呆れるほどできない。できないのである。どこかから着たことのない服が発掘される。靴下は何足あったのかわからない。そして「いつも同じものばかり着ていて、それはどうにかならないのか」とありがたいご指摘を受ける。 衣

267.女衒と貧困

先日、友人が宮尾登美子の『序の舞』がおもしろかったと言っていたので、私のような日本画入門者には大家の話が参考になるとも思えないものの、それでもなんらかのご利益を願って近所の図書館へ行ったところ、『序の舞』は持ち運びに不便そうな単行本しかなかったので、たまたま目についた同じ作家の文庫本を借りてみました。タイトルは『生きてゆく力』というものでした。 帰宅して何気なく本を開いた途端に、私は一気に引き込まれました。 との書き出しで、本書は「赤貧の裏長屋」という一章から始まります。

「なんのはなしですか」に於けるミッション、ビジョン、バリュー(価値観)について

  「なんのはなしですか」というnote発祥の新しい創作ジャンルについて、ミッション、ビジョン、バリュー(価値観)を示したいと思います。尚、本記事は「なんのはなしですか」を知らない方へ向けて発信しています。 はじめに 「なんのはなしですか」とは、#なんのはなしですか を付けた作品全てが該当します。現在、450人以上が参加するnoteの中の一つの創作ジャンルになります。一日平均40本ほど記事が投稿され、現在6000本近い作品があります。それを一つにまとめて紹介する形で広がり

作家デビューに年齢は関係あるのか?

だいたい週一くらいで更新していこうと思っているこの「あたふた日記」ですが、ちょっと気になることを耳にしたので、急遽記事を書いています。 それは、小説家としてデビューするのに年齢は関係あるのか、ということです。 「自分が中年になってきて、小説家デビューを目指しているのにまだ叶っていない……どうしよう、時間がない」 そう仰るご意見を聞きました。正確な前後の文脈がわからないので、もしかしたらこういう意味じゃなかったのかもしれません。本当に物理的に時間がないのでしたら私の話はまった

小説を書いたり読んだりする人が答える20の質問

以前、テンプレートをお借りしてこのような記事を書きました。 こういう質問を自分でも考えてみたくて、20問だけ作ってみました。 誰かに答えてもらうつもりで作って、結果、自分で答えています。 #孤人企画 Q1、あなたは、目的なく大きな書店へ立ち寄った時、まずはどのコーナーへ行きますか? 小説の新刊平積みコーナーへ行きます。その後、文庫棚をひたすら歩き回ります。 Q2、好きな本の装丁を見せてください。もしくはその本のタイトルを教えてください。 Q3、内容を知らない小説(

おまえはもうわかっていると思っていたがな。

夫の話をします。 夫がおじさん野球をしています。 50歳の夫が新人です。 先日、センターを守っていて、フライをスライディングキャッチしたら、ベンチが大盛り上がり。 いやー、おまえ、めっちゃかっこいかったよ! なんだよ、あんなことできんのかよ、やるなあ。 おまえ、大谷翔平みたいじゃんか! という賛辞の数々。ちなみに、翔平はセンターを守ってはいませんが、気持ちの問題ですね。 褒められる50歳の男性。 褒めちぎる、それ以上の男性達。 私は涙が出るほどに感動と愉快

ひと色のことばの連弾

夜明けは一瞬しか見えない クリームソーダのはじける泡のように 夢とともに消えてしまう 星が天馬の駆ける別の空に 翔んでゆくのを 薄く空いたカーテンから眺めた 子うさぎのちいさな耳に生えた ひかりが少しずつ溶けて やがて朝ははっきりとした朝になる ポケットいっぱいのキャラメルを 今日はいったい誰にあげようかと思う ためらいも恥じらいも捨てて お砂糖の甘い匂いにほころぶみたいに ただ好きだと言えたらいいのに ただ思っていると言えたらいいのに ことばにできないことをそのま

誰かと、出会うということ。

点と点はいつか線になるっていう言葉は馴染みすぎたぐらいのきらいがあるけれど。 時折、点は点にすぎないのだけど。線につながることもあって。 そう感じたくなる経験も数年に何度かは訪れてくれることがある。 一度出会って今は出会わなくなってしまった人は時々記憶の中の登場人物となって、お茶碗を洗っている水に触れている時やシャンプーしている時など、不意に現れては消えてゆく。 消えてゆくのだけど。 またいつか泡のように記憶が再生する。 10月のはじまり。  不甲斐ない想いをしていた時