吉穂みらい
心の琴線が震えた記事
紹介していただいたり、紹介したりした記事を残しておくために。
日常の隙間に入り込む、切なくも儚い存在
言葉をめぐるコラムやエッセイです
2024年の創作大賞で読んだ作品の感想
「詩と暮らす」という雑誌を定期購読している。季刊誌だ。 詩が巻頭を飾り、美しい絵画やイラスト、写真などと共にプロからアマチュアまでの詩が数多く掲載される。一般からリクエストを募った詩がランキングされたり、エピソードとともに推薦された詩も載る。いっぽうで、断捨離やDIY、料理のコツやランチの情報、ワードローブ指南やミニマリストのコラムまで、暮らしのあれこれも網羅している雑誌だ。 詩は特別なことではありません、と編集長は編集後記に必ずしたためる。 生まれてから死ぬまで、私
会いましょう、と言っても本日は、入荷のご案内です。 先日お知らせした、こちらの記事の2冊が、吉穂堂に入荷いたしました。 再びになりますが、書影はこちら。 最近「導入部を試し読み」というのを青音色の活動で覚えたので(笑)、やってみることにします。 『非時香果(トキジクノカクノコノミ)』 シリーズのなかでは、ちょっとハードボイルドな(ハーフボイルドくらいかな?)展開の物語です。じつは最初のタイトルは『EverGreen(エバーグリーン)』でした。が、最近の葬祭場っ
働いていない年月のほうが、長くなってきた。 10月、お世話になっている保険屋さんから連絡があった。 11月は保険の月だし、自分の保険も更新の時期だ。保険も常に変化しているから見直しもしなくちゃいけないな、と思っていたら、実はそろそろ定年が近づいている、という。引継ぎの人を連れて行くつもりだとのことだった。ああそういえば、そういうお年頃だった、と、我が身と彼女の年齢を振り返った。 私は結構ガチな生命保険に入っている。 結婚前の或る時期、生保で働いたことがあるからだ
気になっていたのだけれど、参加して良いものかどうかと思いあぐねていた企画、メディアパルさんの募集企画。 2、3年前からメディアパルさんの企画にはずっと助けられている。 毎回、書きたくなる魅力にあふれた「お題」がそこにある。 今回、なぜ書きあぐねていたか、というと。 本屋さんが夢や想像や妄想ではなくなってしまったからだ。 現実になってしまった。 私は今、仮にもかつて夢見た「本屋さん」をやっているのである。 共同書店の棚主になった。 仮にも、とつけたのは
朝 あなたが この世界から いなくなってしまっていた ことを知った 今年いちばんに 冷えた朝 ついにこの日が 来てしまった ペペペペランに乗って 行ってしまった あのおはなしが あのことばが わたしの 原点 あなたのことばに わたしたちは育まれた これから わたしたちは あなたのいない世界を生きる あなたから渡された ことばの バトンをつないで もう いなかった 数日も 前に そのことを知ったのは ある 寒い
新しい本ができました。 20冊目と21冊目の文庫本。 今回は、ついにロマンサーを経由せずに、Wordから直接、PDF化したものを入稿原稿にしました。 これまでどうしてWordから直接PDF化しなかったかは、以前、どこかで書いたことがあったような気がしますが、もう一度まとめておこうと思います。 そもそも、どうしてロマンサーを使っていたかと言うと、「電子書籍化に必須のEPUB原稿を作る&限定公開原稿をネットでシェアする」という目的があったからでした。 本格的に
霧の朝駆けは馬も嫌がる。 夜半に冷え込んだ街道は朝方には濃霧に包まれていた。視界を遮り立ちこめる、本来、天にあるはずの雲を縫って馬で進む。 整備された道はすぐに荒れた道になり、昨夜の氷雨でぬかるんだ泥土に馬の足を取られつつゆくしかなかった。 西へ向かっていた。 五感と薄っすらと見える道標を頼りに、切通しにさしかかった。雑木林に潜む盗賊もこれほど見通しが悪ければいきなり襲いかかることもないだろう。 若い武士は林を抜け、坂を登る。慎重に馬の手綱を捌いた。 盗賊も遠慮
今年の4月に、講談社現代新書60周年キャンペーン「わたしの現代新書」というものがあって、面白そうだったので参加してみました。 こちらは、AI編集者が惹句を考えてくれて、実際の現代新書と同じ装丁で、ネット上に自分の現代新書の書影を作ることができるサービスです。 最初にXに流れてきた時、投稿したかたの書影があまりにもそれっぽいので、もしや○○さん、本当に現代新書を出版されたのか?と思ったくらいでしたが、良く見ると自分でも作れるというので、思わず小躍りしました。 その
紅葉唐門からひとりの僧がかすかに香を漂わせながら衣擦れの音だけをさせて出て行った、きびきびと。唐門の左右にある紅葉が紅く、朱く、ささと風に揺れていた。 正子さん、お待たせしましたと、現れた老女が微笑む。ああ幸子さん、いいえ待ってはいないのよ、今きたばかりと、こちらも微笑む。双子のように帽子をかぶり、双子のようにほんの少し背を丸め。年経た女たちは紅葉唐門という愛称のついた唐破風の門をくぐる。それぞれ左右の端のほうを選び、低い平均台を乗り越えるように、そろそろと足を運んで着地
十月最後の日曜日だった。 ずっと行きたかった場所に向かっていた。 さちとピースさんと出会ったのは、サバランさん同好会。 大倉山のカフェ『喫茶ぽるく』にあるババを紹介してくださったのがきっかけ。十六夜さんを通じて、さちとピースさんを知り、そしてそれをきっかけに「ひと色展」と「ひと色カフェ」を知った。 私が「ひと色展」を知った時点では、実はもう、すっかり何もかも遅かった。 イシノアサミさんの絵に物語をつける企画も、その展示をしていたひと色展も、ひと色カフェも、す
振り返りの記事は、出すつもりがなかった。 終わったことは終わったことだし、次に進むだけだ。 メンタル回復期*から、それを信条のようにしてきたのだが、ここ最近、それを覆すような出来事が次々と身の回りに起き、その「信条」が崩れそうになるほどの気持ちの乱高下を味わっている。 いや、——いた。 でも、この記事を読んだとき、私の心はまさに「救われた」のだった――。 結婚式のスピーチなどでは、よく、「人生は山あり谷あり」「まさかという坂がある」「病めるときも健やかなるとき
「秋」と「本日は晴天なり」、どちらを選びますかと男は言った。 その男に会ったのは去年の暮で、暖冬と言われる割には肌寒く、暗く底冷えのする日だった。この男の陰鬱な顔をもう一年も見ているのだと、不思議な気持ちになる。なぜ自分がこの男と一緒にいるのか皆目思い出せないが、この男と自分は何か特別親しい間柄だったらしい。らしい、というのはさっきも言ったように男との関係を何も思い出せない為で、それも道理、自分は私、なのかも僕、なのかも、何も覚えていないからだ。 記憶喪失なのですよとそ
夢の中で。 必死に目をあけようとしていた。 夢の中で目を開けるということは難しいことなのだと知った。やってみるまで知らなかった。これまでやってみたことが無かっただろうか、と自問してみるが、無かったような気がする。忘れているだけかもしれない。 夢の中で。 周囲の状況は見えているのに、自分が寝ていることを知っている。だから必死に「今ここで起きなければならない」と思っているのだが、どうしても目を開けられない。 指で瞼をこじ開けるが、何も見えない。 本体の自分が寝てい
青豆さんの「孤人企画」に参加します。 Q1、あなたは、目的なく大きな書店へ立ち寄った時、まずはどのコーナーへ行きますか? コミックコーナーか新刊コーナー Q2、好きな本の装丁を見せてください。もしくはその本のタイトルを教えてください。 吉本ばななさんの『白河夜船』 ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』 ふと、思いつきました Q3、内容を知らない小説(文庫本)を手に取ったら、まずどこをチェックしますか。 装丁が直感的に気に入った本が当たり、ということ
ある日、豆島さんからDMが来た。 「吉穂さん、メール見てますよね?」 なにかわくわくした感じのDMだった。 「え?メールって何?」 すっとぼけた返事をした私。創作大賞の受賞者が発表になったので、受賞者には事前にお知らせがあった、と言う話だった。 メールを見て初めて、ヱリさんが朝日新聞出版社賞を受賞したということを知った。それから、ベストレビュアー賞のメンバーの名前を知った。 知り合いがいっぱいいた。笑 最初は「もしかしたら中間選考の残念賞みたいな感じもあるのか
dekoさんとお会いしました! 京都でもお会いしましたが、吉穂堂に来てくださったのは、ほぼ1年ぶり。 今回の最大の目的はこれ。 落語が好きだけれど観に行ったことのなかった「エセ落語好き」の私。その思いのたけはこちらにも。 こちらの記事で公言していた通り、ついに「ナアジマさんのお身内の落語を聴きに行く機会」が訪れた、というわけです。 dekoさんが公演に行くとお聞きし、ぜひご一緒に、ということで、だいぶ前からチケットを取って楽しみにしていました。 当日、