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#一歩踏みだした先に

オーケストラ

オーケストラ

つめたく すんだうみのなかで
ぼくは しきをしていた
みずにていこうして
おぼれるように うでをふる

おんがくが かいていになりひびく
ゆうれいたちのオーケストラがなりひびく

すいめんにうかぶ ちいさなあわ
あめのおとは びんのそこまではとどかない
しずかなかんきゃくは まっている
しんくうぱっくしたせんりつを

ぼくたちは けんめいにがっきをかなでる
いきをあわす ぴたっととめる
びりびりと

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えぶりで

えぶりで

さんで、まんで、ちうずで、うえんずで、さあすで、ふらいで、さたで、

えぶりで、えぶりでいずまんで、
のっとほりで、
さむたいむずふらいで、
ふらふらふらーふつかよいさたで、
さたでいずもすとふぁすとで、
しょーとで、わーすふるで、
ばりゅあぶるで、えくせれんとで、
でもはんぶんはこうかいで、
さんではあいにくのくらうでぃで、
もうつぎのひがこわくて、
ぐるぐるえんかつにまわっていかなくて、
よう

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あした、つよくなる

あした、つよくなる

あした、つよくなる、そう言ってるだけの人生だった、わたしはだれともわかりあえないし、よくかんがえたらわかってあげる気もなかったんだって、すとん、と腑に落ちた。よくある問い、だれかのためにがんばる人と自分のためにがんばる人、わたしは両方だめで、コーヒーに入れたミルクのようにぐるぐると、今と過去と未来の境界線をあいまいにして、いつまでも漂っていたい。つよくなりたい、何度も星に願ってみたのだけれど、効果

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予感

予感

なにかがはじまる
予感を
もうずっと
待っているんだ
すくいあげた 砂つぶは
金色にひかる
参道にならぶ
キンモクセイ
まぶしさは いいなあ
ひなた道
めがあかなくても
そこにある
あたたかくて
なんだか笑ってしまうな
ねむくなってしまうな
いまのじかんを
たいせつにしようって
ねじこんだ一万円札のように
ふいに思わされてしまうな
予感はオレンジ色
とくにいみはない
それがいちばん似合う
待つじか

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図書館へ

図書館へ

あなたのレンズで 
せかいをみたら
ぼくとは逆で
まぶしいせかいだ
じてんしゃの
かごのなかで
ラミネートされた本の
ページがそよぐ
いなほがかぜにゆれ
ゆるやかにかたむいた
いなほは
呼吸する
ねこのせなかのようだ
帰り道
行きよりも増えた荷物
ぼくだけに聞こえる
特別なしるし
あなたが生涯をかけて
考え抜いた痕跡を
生きた証を
百年後にぼくは読んで
勇気をもらっている
あした
うつくしいものを

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星は鳴かない

星は鳴かない

なにか言いたいことが あったはずだ
ふゆの夜空 星々がせり出して
ひとつひとつの星のひかりが交差して
いまにも熟れた果実のように
落っこちてきそうだ
ぼくは言いたいことも忘れてしまった
自転車が土手の斜面に並べて置かれ
草を撫でる風が
さわさわ さわさわ ゆれて
羽虫が草のすきまから
羽を擦り 音を鳴らした
星は鳴かない ぼくたちも黙っている
でも 通じ合っている
柔らかなひかりの中に
親密な視線

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負けて降る雨

負けて降る雨

誰かのせいにしたかったけれど、まぎれもなくわたしはわたしの決断の連続でここに立っていると気づいた、夏の終わり。ベランダで育てた球根の足の細さよ、頼りなさよ、ぐらぐらと、わたしの今が揺れている、目の前の景色が霞んでいる。苦しいときは、苦しい歌を歌おう。それがいちばん人間らしいから。現状を軽々と越えていく自分は素敵だけど、いつも格好よくはいられないや、負けを認めたら、少し楽になった。草原に大の字になっ

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 おどろく

おどろく

おどろく という感情が
きみのいのちの みなもとだ
おどろきをなくしたとき
きみのせかいが しずかにとじる

なぜのまえに ただ、ある
ある とは どういうことなんだろうか

めのまえにいるということか
手ざわりがあるということか
あいするということか
いきているということか
ぜんぶすこしずつ ちがうきがする

はりつめる
緊張が ぱん、とはじける
おどろきが よろこびに 転化する

矛盾をかか

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こぼれる

こぼれる

ことばが こぼれる
ことばが にじむ

こぼれた ことばのしみが ひろがって
じわじわと その領域を 延ばしていく

ことばは 立ちあがる
ことばは 転倒する

倒れたことばは せかいをひき延ばす
疎外された自己から
わたしのからだから しみだす

やがてそのしみは
都市になり 国家になり
大陸になり せかいとなり
やがて わたしにもどってくる

わたしのからだは せかいの心棒だ
わたしの心房が 

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影絵

影絵

言われてもいないことばに怯えていた
それは影絵だ
だれと戦っていたのか 
思い出せない戦争だ

もう会えない人たちの夢に怯えていた
それは幽霊だ
どんな顔だったか
思い出せないわけはない

日が落ちた
どろんと濃い闇が月を覆う
やっと僕の時間だ

影から 逃げて 逃げて
とうとう僕は 影になった
輪郭も溶けた

それでもまだ
僕のからだの一部が発光していた
僕は蛍のように
青白くひかり 放電した

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空気が走る

空気が走る

ぼくが書く詩が
新しいものでなければ
それは一体何だというのだろう

風が吹いて 服がたなびく
剥き出しの岩に 空気が走る
視えなくても 伝導する
ぼくの詩で 海がヨレる
ふっ、と 世界が傾斜する

山から降りた寒気が霜を降ろし
街全体を冷やす
悲しいできごとを 希釈する雨
地表を濡らし 体温を下げる

ぼくの詩が 
あなたのこころを凍らせるものでなければ
それは一体何だというのだろう

時計台が

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