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ICEが固まる?ドイツ鉄道の壁
ドイツ鉄道の遅延:「時間厳守」の国で…
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1. 遅れる鉄道
ドイツは「精密機械と時間厳守の国」
「勤勉と格調高い芸術」が売りの
お堅い国で起きているのは…。
近年のドイツ鉄道は永久凍土が溶けてぬかるみにはまったように「遅延が常態化」している。
『Die Verspätungen der Deutschen Bahn sind wie ein Frosch, der im Schlamm steckt.』
「ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)の遅延はぬかるみにはまったカエルのようだ。」と口さがないドイツ人鉄オタは揶揄する。
実態はそれほど深刻だ。
ドイツは褐炭の露天掘りが可能であり
「低コストでエネルギー源が得られる」電気が安い国であった。
しかし「環境重視の政策」を採用する政党が政権を担う。
2019年度には約19%が褐炭による発電であるが
「褐炭は二酸化炭素(CO2)を他の化石燃料よりも多く発生させる
【クリマ・キラー(気候を殺す物)】だ!」
と呼ばれその比率を毎年低下させている。
原子力発電の次の標的は石炭火力発電だとドイツではささやかれる。
ドイツは「発電は各家庭ごとに行う」時代を迎えるのだろうか?
自然エネルギーが発電の主力となれば
「電力は供給と価格の二重の安定性を失う」
その問題がドイツではすでに発生している。
北風と太陽は・・・
ドイツ人のコートを効率よく脱がすことに失敗した。これは皮肉ではない。
ロシアから安価で供給されていた天然ガスと安価な電力の両方を失って・・・
コートを重ね着して寒さをしのぐことになると誰が予想したろう。
暖房の熱源だけでなく電力の高騰と不安定化は鉄道にも多大な影響を与える。
ドイツ鉄道でストライキが発生する原因のひとつは
賃金や労働条件をめぐる交渉の行き詰まりが原因だ。
物価が高騰しているヨーロッパで ドイツが物価抑制に失敗した最大の原因は
「エネルギー価格の高騰」である。
物流を含め社会全般に与えたコスト高の影響は 自然エネルギへの転換を積極的に進めた政策の失敗が遠因であろう。
「電化比率が50%を超えるドイツ鉄道」にとっては電力費の負担が急増し・・・賃金の支出を増やす余地がなくなった。
北風と太陽の政策が・・・
鉄道の足元を襲うとは誰も予想できない事態だ。
かつてベルリンの壁を壊したドイツ人は
今「エネルギーの壁」に阻まれている。
ICEなど高速・遠距離鉄道の遅延原因が地球温暖化対策とは皮肉だ!
地球を冷やそうとした・・・
その政策が「氷」の壁のように行くてを阻む 寒さと壁で身動きが取れなくなっている。
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2. 遅延を見越した新しい時間感覚
昔のドイツ人は「遅延は許されない」という厳格な時間意識を持っていたようだ。
しかし昨今は
「どうせ時間通りにはやってこない列車をあくせくして待つより・・・」
駅のカフェでのんびり過ごすほうがましだと開き直っている。
予定時刻に間に合わなくても
「電車のせいで遅れました!仕方ないです。」
と弁解すれば受け入れる風潮が広まりつつあるのだ。
ベルリン中央駅のカフェに
「【遅延前提コーヒーおかわりセット】が登場した。」というジョークが平気でつぶやかれる事態だ。
鉄道の遅延情報を確認しながら
乗客が時間をつぶせるセットメニューは
ユーモラスな商売かもしれない。
それが冗談でなくなっているなら・・・
ドイツ人の気質は【あきらめ】へ転換している。
「禅」の悟りを好むドイツ人は多いが
「禅寺が林立するドイツの光景」は滑稽だが異様だ。
ドイツ人は「ICEほどの最先端輸送機関が遅れるのが今のドイツ社会だから 普通の人間がレストランの予約時間に間に合わなくても仕方がない」と開きなおる。
レストランの店主が「どうして今日はこんなに店がにぎわっているのか?」
と店員に尋ねると
店員は「ICEもたまに定刻で到着するので・・・お客さんも予約の時間を守ったからでは・・・(笑)」
「遅延する前提で考える」という発想の転換は
ドイツ人の適応力の高さなのか?それとも悟りの境地だろうか。
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3. 過度な環境保護と電力価格の高騰
ドイツの鉄道遅延が環境政策の結果だと日本では報道されない。
鉄道は環境に優しい交通手段として位置づけられる。
ドイツ政府は補助金を投入して都市部で自動車から鉄道へのモーダルシフトを促進してきた。
しかし鉄道インフラの整備が追いつかず
老朽化した線路や車両の維持管理も遅延の要因となる。
日本でも「若者のクルマ離れ」が加速している。
ドイツの都市部でも「高くて不便な電気自動車」
を買わない若者層が増加している。
日本と並んで「自動車など輸送機器産業」
へ依存度が高いドイツで
「主力製品電気自動車の販売不振」が
VWなどのメーカーへ与える影響は絶大だ。
電力価格の高騰の影響で鉄道会社の運営コストは増加し
賃金を適正化できずにストが頻発する。
「自動車を欲しくない若年層」は
「遅れる鉄道に我慢してでも依存する」
この状況で悟りを開けないと・・・
待っているのは?
ドイツ国民のもう一つの気質・・・優しさを発揮しやすい状況だ。
結果「環境に優しいはずの鉄道」は不便になり
遅延を許容できない乗客は
「代替手段として自動車を選ぶ?」
「環境に配慮したモーダルシフトの逆現象は・・・CO2排出量を増やす!」
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4. これからのドイツ鉄道と時間意識
ドイツも日本と同様にスマホ社会だ。
ドイツ鉄道は遅延情報や予約・決済などをリアルタイムで提供するアプリを積極的に活用している。
しかしそのアプリが進化の途上であり
「ドイツ国民が求める勤勉実直」のレベルに到達していなかったら?
たまにおきるクラッシュや表示間違いが
「遅延情報を知るためのアプリが遅延しているぞ!」と
SNSで皮肉な拡散を生む・・・
もはやブラックジョークだ。
ドイツはかつての「時間厳守の国」から
「時間に寛容な国」へと変わりつつある。
それを負の面だけでとらえるべきか?
寛容な社会がひろくいきわたるために必要なコストととらえ
「堅い国」のイメージを払拭できた良い変化なのか?
社会の成熟は停滞と紙一重だ・・・。
口さがないドイツ人は
「ドイツ鉄道は『時刻表は目安です』時間通りに動くこともあります」にすれば良いと冗談を言う。
「時間通りに来て驚いたら24時間遅れだった!」
とはジョークの域を超えている。
「ドイツ鉄道の遅延」は文化として定着しつつあるのかもしれない。
そしてドイツは
遅延する鉄道
過度な環境保護
電力価格の高騰
ドイツの人々は新しいライフスタイルを受け入れるしかないのだろう。
日本人が「時間厳守の魔法」から覚めないことを
ひとりの鉄道ファンとして願わずにはいられない。
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