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本棚の奥の「シリウス文書」① 創作小説全6話
息子
達夫は週に2回の登校日を済ませ、帰宅すると早速メタバースの中に入った。ある時彼は秘密の場所の鍵を拾ってしまったのだ。鍵には十桁の数字が記されていた。昔はキーボードがあればそれを打ち込まなければならないようなスタイルだったのだろうけどメタバース内では扉に差し込むだけだ。
街を行き交う車、自転車に乗って風を切る人、買い物袋を持って歩いてる婦人。外の世界と何一つ変わらなかった。
空き地に忽然と
本棚の奥の「シリウス文書」② 創作小説全6話
ファミリー
達夫はメタバースからリアル空間に戻り夕飯を取っていた。普段は母、美和子と二人で食べる夕飯だったが、帰りの遅い父、裕和と3人で一緒になるのは久しぶりだった。なんとなく母が嬉しそうな雰囲気を出していたのが達夫は嬉しかった。そして食卓に並んだ料理にがっついていた。
「来週末に大事な仕事がある。それを終えたら3人で寿司でも食べに行かないか。」
「あら、いいわね、外の外食なんていつ以来かしら」
本棚の奥の「シリウス文書」③ 創作小説全6話
ママ
美和子は本棚を掃除していた。裕和の書斎だ。埃を被った本の中にきれいな本が数冊並んでいた。「ここだけ綺麗だわ」本を取り出してみる。物理や微分積分の難しそうな本だった。空いたスペースを雑巾で拭くと本棚の奥に違和感を感じた。
「隠し棚・・・!」
引き戸を開けてみる。本が数冊出てくる。その中の一冊が一際目を引く。
「シリウス文書2013」全田挟宣著
美和子はページをめくりだした。
《オッコト・・・
本棚の奥の「シリウス文書」④ 創作小説全6話
第一話はこちらから
息子
高校の授業の殆どはメタバースの中で行われる。達夫はメタバース内に長く居ることが好きではなく授業をサボりがちだったがシリウス文書を見つけてからは入り浸るようになった。さらに授業をサボることが多くなった。
19901003
キョウセン「ピラミッドを作ったのは誰なのですか。」
オッコト「変換人です。」
キョウセン「目的は何なのですか?」
オッコト「真実の意識の中心を作るため
本棚の奥の「シリウス文書」⑤ 創作小説全6話
第一話はこちらから
パパとヨギー
グルテンフリーカフェBUddaでの会話は続く。
「見て感じている空間と言語と自我の作る空間、2つの世界を人間は持っている。感じる空間があった上でそこから言語が世界を作っていくのが本来の在り方だが、今の人間ははじめから最後まで言語と自我の世界しかないと思ってる。自分が生まれる前からも死んだあともな。」裕和は続ける。
「つまりTERUTERU、お前は言語の世界で生
本棚の奥の「シリウス文書」⑥創作小説最終話
第一話はこちらから
ファミリーとヨギー
美和子と達夫は大阪城の近くまで来ていた。何か胸騒ぎがしたのだ。
達夫がカフェからでて来る父親の姿を見つける。裕和の後から坊主頭の同い年くらいの男が出てきて今どき大変珍しい葉たばこを店外で吸っていた。
信号が青に変わり裕和は煙草を嗜む坊主頭を残し地下鉄の駅を目指して横断歩道を渡る。
そこへものすごいスピードで車が向こうから走ってくる。
「止まらない!」