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空想お散歩紀行 物語の道

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空想の世界の日常を自由に描いています。
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2022年9月の記事一覧

空想お散歩紀行 切り取られた世界の味

空想お散歩紀行 切り取られた世界の味

沈んでいく太陽。オレンジ色の塊が空と海の二つを同じ色に染め上げる。
「綺麗ね」
心地よい潮風が髪と戯れながら吹き抜けていく。
その女が手に持っているのはカメラだった。
黒く大き目のボディは今どきのコンパクトなカメラとは真逆で、どことなく威厳のようなものさえ感じさせた。
ファインダーを覗き、もう一枚夕日に向かってシャッターを切る。すると、
「悪くはねえんだけどよ・・・」
どこからともなく声が聞こえて

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空想お散歩紀行 サスティナブル・マジック

空想お散歩紀行 サスティナブル・マジック

栄枯盛衰、生者必滅。どんな人も、国も、時代も、永遠に栄え続けるなんてありえない。
力が衰え、そして滅ぶ時は必ずくる。それは、どんなものも逃れることはできない。
「よし、じゃあ今日も開店」
看板を表に出す。今はもう珍しくなった商店街の一角。そこにある一軒の店。
見た目はなんてことはないファンシーショップ。小中学生の女子が主な顧客層の店だ。おまじないや占いが好きな年ごろの子や、そういうのが好きな大人も

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空想お散歩紀行 長い長い旅の果てに

空想お散歩紀行 長い長い旅の果てに

ついに一つの歴史の謎が解明された。
草木が生い茂る一つの無人島。その中に遺跡が発見されてから100年の月日が流れていた。
島全体に広がるその遺跡は、周囲の自然から計測するにこの遺跡は今から数千年以上前にはここにあったことが推測される。
だが、この遺跡は世界中のどの歴史とも符号するところがなく、しかも遺跡内部に使われている技術は過去のものとは思えないほど高度なもので、現代の技術でも解析が困難だった。

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空想お散歩紀行 自分の代役

空想お散歩紀行 自分の代役

人々の間に何かが広まる、それには前段階がある。
インターネットが広まる前は、それは軍事技術だったし、ファッションが広まる前は、一人の芸能人が身につけていただけだったりする。
同じように、元々は一部の人間だけが使っていたものが、最近は一般人の間にも広がりを見せていた。
それは、自分の代替である。
かつて、俳優や声優が何かしらの理由で降板した際には、その役者と似たような人物を2代目、3代目として採用し

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空想お散歩紀行 推しは光の先に

空想お散歩紀行 推しは光の先に

俺は今、推している娘がいる。
ネットアイドルの『綺羅星スピカ』ちゃんだ。極上の美少女というわけではないが、むしろその、もしかしたら同じクラスにいたかもしれないくらいの可愛さがかえって親しみを持つことができる。
歌やダンスといった王道のアイドル活動をすることもあれば、ゲーム実況や自分の好きなマンガを熱く語る、手作り料理を生配信するなど、ネットの中で幅広くいろいろなことに挑戦していた。
俺たちファンは

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空想お散歩紀行 人類総眼鏡

空想お散歩紀行 人類総眼鏡

街を歩けば、皆同じような顔に見えてしまう。しかしほんの2、3年程前まではこうではなかった。
その理由は顔に付いているある物である。
顔の真ん前に付いている二つのレンズ。眼鏡である。
今や全ての人が等しく眼鏡を掛けている。
ただし、人々の視力が悪くなったからとか、流行で掛けているわけではない。
きっかけは謎のウイルスの流行である。
最初は突然、行動がおかしくなる人が現れ出した。まるで映画の中のゾンビ

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空想お散歩紀行 避難指示

空想お散歩紀行 避難指示

スマホのけたたましい音が、耳に突入してくる。
それは危険を伝えるアラーム。人を驚かせ、注意を向けさせるのが仕事。
『危険レベル4。避難指示が発令されました』
スマホの画面は黒い背景と白い文字のシンプルな構成で、シンプルに状況を伝えてくる。
「やっぱり、避難したほうがいいか・・・」
スマホの持ち主はめんどくさそうに頭を掻いた。
3日程前の予報から、今晩あたりが一番危険だと分かってはいたが、避難するほ

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空想お散歩紀行 ロボ婚

空想お散歩紀行 ロボ婚

これは必然の流れだったのかもしれない。
科学技術は常に前へとその歩みを進め、決して後に戻ることは無い。
より効率的に、より使いやすく、より安価に、人々の求めに応じて技術は進化していった。
その中の一つ、ロボットも例外ではない。
最初は四角い金属のパーツが合わさった形だったそれは、次第に丸みを帯び、より人間に近づいていった。
より洗練され、より美しく、それは人体の理想形を目指して改良が加えられ、そし

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空想お散歩紀行 銀幕の中は別世界

空想お散歩紀行 銀幕の中は別世界

今、映画界はかつての栄光を取り戻そうとしていた。
いつでもどこでも、サブスクで映画が好き放題見ることができる時代が到来し、わざわざ映画館まで足を運ぼうという人は年々少なくなるばかりだった。
だが今、映画館の大スクリーンで観ることが再びブームとなり、休日ともなると映画館に行列ができることも決して珍しくなくなった。
しかし、全てが良いことなどこの世に一つとしてない。今回の映画ブームの再到来にも影は存在

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空想お散歩紀行 ヒーロー2.0

空想お散歩紀行 ヒーロー2.0

かつては人の手で行われていたことを道具が肩代わりして、さらに機械が自動でそれを行うようになって数百年。その流れは未だに衰えることはない。
むしろ流れは加速して、今まで人の手が介在していた機械の操作も、AIが代わりにやってくれる。
人々はより便利な未来を期待と、自分たちの仕事が無くなる恐怖を同時に味わっていた。
そしてここにも、その後者の思いに浸されている者たちがいた。
『本部へ連絡。75番通りでひ

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空想お散歩紀行 大晴れ警報

空想お散歩紀行 大晴れ警報

チャンネルを変える。何回もリモコンのボタンを押す。この時間はどの局もニュース番組だ。喋っているキャスター、スタジオのセット、違いは様々あれど、扱っているニュースの内容はどれも同じだった。
「週末が危なそうだなあ」
学校に行く前の少年は、誰に言うでもなく独り言を呟いていた。
テレビ画面には国内の地図が映し出されていた。長い棒を持った男性が、それで地図を指しながら分かりやすく説明をしている。
話してい

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空想お散歩紀行 どこの世界でもよくある話

空想お散歩紀行 どこの世界でもよくある話

平日の昼下がり。空高く上がっている太陽は夏よりもその力を弱め、木陰に入れば風の涼しさの方が肌に感じる季節。
そんな空気の中、一軒のオープンカフェのテラス席では3人の老人がお茶を飲んでいた。
しかし、その表情はどこか険しく、周りの穏やかな風景とは相容れない何かを醸し出していた。
「まったく、最近の若い連中ときたら・・・」
話の内容はいかにも分かりやすい若者への不満だった。いつの時代も決して変わること

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空想お散歩紀行 困ってしまったあの日が再び

空想お散歩紀行 困ってしまったあの日が再び

ただ小雨が降る音だけが世界を包む、そんな静かな夜に似つかわしくない音が部屋の中に響く。
一回の破裂音の後に、重量を持った物が床に落ちる音が続いた。
床に落ちたそれは、周りに赤い液体をまき散らし、自身もその中に沈んでいる。そして二度と動くことは無かった。
電気も付いていない部屋の中には、外のビルのネオンの光が差し込み、床の赤色に反射している。
その様子を眉一つ動かすことなく見下ろしている一人の男がい

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空想お散歩紀行 異世界観光大使

空想お散歩紀行 異世界観光大使

さてどうしよう。私は正直今、人生で一番悩んでいる。
私の家は先祖代々魔術師の家系だ。だがそのことを今まで親友にさえ話したことは無い。
魔術の力は秘匿が原則。世の中に無用な混乱をなるべく起こさないためである。
それと、高校生にもなって『私魔術師なんだー』等と言ったら、立派な中二病もいいところじゃないか。だから私は自分の力を隠し続けてきた。
魔術師と言っても、基本魔術を除けば、家系ごとに扱える力はそれ

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