空想お散歩紀行 避難指示
スマホのけたたましい音が、耳に突入してくる。
それは危険を伝えるアラーム。人を驚かせ、注意を向けさせるのが仕事。
『危険レベル4。避難指示が発令されました』
スマホの画面は黒い背景と白い文字のシンプルな構成で、シンプルに状況を伝えてくる。
「やっぱり、避難したほうがいいか・・・」
スマホの持ち主はめんどくさそうに頭を掻いた。
3日程前の予報から、今晩あたりが一番危険だと分かってはいたが、避難するほどではないと高をくくっていた。
だが、ちょうど1時間ほど前から事態は急変し、画面の向こうの事だと思っていた危機を思考回路が現実のものとして捉え始めていた。
スマホを持ったまま、家のベランダに出る。
外は既に日が落ちており、真っ暗だ。風が少しだけ吹いている実に過ごしやすい空気だった。
空を見上げる。そこには雲一つない。
代わりにあるのは、キラキラと点滅する光の大群だった。
それは星だった。だが、いつもそこにある星ではなかった。
「あ~、こりゃちょっとヤバいかも」
流星群雨。毎年この時期になると、宇宙から星が落ちてくることがよく発生する。
当然、この惑星の住人達はそれに対応できるように建造物などを造っている。
だがそれでも、自然の力が人間の知恵を上回ることなど特段珍しいことではない。
「支度するか。携帯と、財布と免許と、あと何持ってけばいいんだ?」
部屋に戻ると着替えて、貴重品をまとめて避難の準備を開始する。
15分後、リュックを背に自家用宇宙船に乗って、隣の惑星の避難所に向けて出発した。
結果として、流星群雨はそれほど大したことはなく、避難するほどではなかった。
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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5
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