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空想お散歩紀行 自分の代役

人々の間に何かが広まる、それには前段階がある。
インターネットが広まる前は、それは軍事技術だったし、ファッションが広まる前は、一人の芸能人が身につけていただけだったりする。
同じように、元々は一部の人間だけが使っていたものが、最近は一般人の間にも広がりを見せていた。
それは、自分の代替である。
かつて、俳優や声優が何かしらの理由で降板した際には、その役者と似たような人物を2代目、3代目として採用してきた。
しかし、あらゆる情報がデジタル化される今の世界において、それはもはや非効率なやり方となっている。
今は、自分自身のデータを明け渡すことで、後はAIや映像技術がその人物と全く同じ動き、同じ声を出すデジタルヒューマンを映像の中に再現できる。
もはや代役などと言うものは過去の言葉になっていた。
そして、この一部の人間にしか活用されないと思われていた技術は一般社会へと広がりを見せる。
自分自身のデータを全て使って、もう一人の自分を作り上げていく。
その自分と同じ代替が、病気になった時や気分が落ちている時などに代わりに仕事をしていくようになった。
今の世界の仕事のほとんどは人間が直接体を使わなくてもいいような仕事ばかりだからだろう。
バスや電車などの公共の乗り物も全て自動運転が当たり前だが、その自動運転をしているAIには実はそれぞれ違う人間が入っていることはもはや珍しくない。
かつては直接仕事場へ足を運んでいた人間が、自宅にいながらリモートで仕事ができるようになり、ついにはリモートすらしなくてもいいようになった。
今や社会は、自分と同じ代役が回していると言っても過言ではない。
その世界はまた新たな道へと進んで行くのか、今はまだ誰にも分からない。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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