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空想お散歩紀行 推しは光の先に

俺は今、推している娘がいる。
ネットアイドルの『綺羅星スピカ』ちゃんだ。極上の美少女というわけではないが、むしろその、もしかしたら同じクラスにいたかもしれないくらいの可愛さがかえって親しみを持つことができる。
歌やダンスといった王道のアイドル活動をすることもあれば、ゲーム実況や自分の好きなマンガを熱く語る、手作り料理を生配信するなど、ネットの中で幅広くいろいろなことに挑戦していた。
俺たちファンは、それらの企画をいっしょになって成功を喜んだり、失敗を悔しがったりして、とにかく彼女を応援していた。
毎日の仕事でつらいことがあっても、彼女の配信を見ることで明日への元気をもらうことができた。間違いなく俺の生活に欠かせない存在だ。
端末の画面の向こうから元気に笑いかけてくれる俺の推し。
だけど、俺はちゃんと実態も知っている。
それは俺と彼女の距離。
彼女が配信をしている星から俺のいる星まで、光速宇宙ネットを使っても50年の時間が掛かる。
今日の最新の配信。いつもと同じ元気な彼女の姿がそこにある。
だけど実際の彼女は今、自分の星でお婆さんになっているはずだ。
でもそんなことは大したことではない。大切なのは、今日も明日も彼女を推せることだ。
どれだけ距離が離れ、時間に差があったとしても俺の推しは今日も可愛い。

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