空想お散歩紀行 異世界観光大使
さてどうしよう。私は正直今、人生で一番悩んでいる。
私の家は先祖代々魔術師の家系だ。だがそのことを今まで親友にさえ話したことは無い。
魔術の力は秘匿が原則。世の中に無用な混乱をなるべく起こさないためである。
それと、高校生にもなって『私魔術師なんだー』等と言ったら、立派な中二病もいいところじゃないか。だから私は自分の力を隠し続けてきた。
魔術師と言っても、基本魔術を除けば、家系ごとに扱える力はそれぞれ違う。
私の持っている力は異世界を渡ることができるというものだ。
こことは違う世界を行き来できる。そこは世界の成り立ちから、歴史、文化、自然法則に至るまで様々なことが違う。
魔術が普通に存在する世界もある。そこでは私も気兼ねすることなく魔術を使うことができるため、ちょくちょく遊びに行っていた。
だからか、今回の事案が発生した。
その世界では魔術が普通に存在するが、それくらいしか特徴がない。
そこで目を付けられたのが、私の異世界渡りの力だ。
もっと別の世界の人たちを呼び寄せたい。そして自分たちの世界をさらに発展させていきたい。
その熱い想いと、私が今思うと実に巧みに持ち上げられたことにより、この世界の『観光大使』に任命されてしまったのだ。
引き受けてしまった手前、もはや後には引けず、今こうして悩んでいるわけだ。
確かに、魔術が普通に存在するこの世界を私はすごく気に入っている。
だが、そのことを普段暮らしている所でどうやってアピールすればいいのか。
異世界の魅力プレゼンなんてやってみろ。完全におかしいやつと思われるだけじゃないか。
とりあえず、身近な友達に少しずつ話していくしかないか。
私の魔術師カミングアウトもそう遠くないかもしれない。
その時のことを思うと、今は不安しかなかった。
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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5
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