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空想お散歩紀行 人類総眼鏡

街を歩けば、皆同じような顔に見えてしまう。しかしほんの2、3年程前まではこうではなかった。
その理由は顔に付いているある物である。
顔の真ん前に付いている二つのレンズ。眼鏡である。
今や全ての人が等しく眼鏡を掛けている。
ただし、人々の視力が悪くなったからとか、流行で掛けているわけではない。
きっかけは謎のウイルスの流行である。
最初は突然、行動がおかしくなる人が現れ出した。まるで映画の中のゾンビの如く、自分の意志を無くしてしまったかのような人々が続出したのだ。
攻撃的になる人もいれば、生きる屍のように大人しくなってしまった人もいる。
しかしそれらの人々の体をいくら調査しても、体内から原因となり得るような、細菌やウイルスは見つからなかった。
人々を変異させるその悪魔の正体は意外な所にあった。
電子の世界である。
それは、0と1の体を持ち、電気の中を進み、世界中の至る所に一瞬にして現れる。
コンピュータを感染させるウイルスではなく、コンピュータを介して人間に感染する電子ウイルスが人々に蔓延していたのだ。
誰か悪意のある人間が作ったプログラムなのか、それともどこかのAIが何らかの判断で作り出したものなのか、未だその大元は解明されていない。
だが、原因が分かったとしても抜本的な解決策はなかった。
今や、家庭から職場までPCがあるのは当たり前だし、一人一台の携帯端末持っているのも当たり前。街中にある看板や電光掲示板を含め、あらゆる物はネットに繋がっている。
つまり、誰もがどこでもこの電子ウイルスに感染する恐れがあるのだ。
しかし、それでもウイルスにやられっぱなしというわけでもない。
そのウイルスはネットを介し、動画、ゲーム、テキスト等々、あらゆる画面から人々の目に入ることで感染する。
その際は、サブリミナル映像のように人間にははっきりと意識できないレベルの映像が一瞬展開される。意識できないとは言え、目はその映像をとらえている。その映像に含まれる特殊な光が目から脳に伝わり、感染し、人間の行動に影響を与えると考えられた。
そこで作られたのが、その特殊な光を遮断する眼鏡だ。実際これにより感染者の数は大幅に減った。
だが、これは単なる序章が終わったに過ぎなかった。
実際のウイルスは環境に合わせ変異し、生き残りを図る。
同じように、この電子ウイルスも日々アップデートが行われている。
それが人の手によるものなのか何なのか、手がかりすら掴めていない。
かつて、世界中で病気を引き起こすウイルスが流行った時、人々はマスクをして日々を過ごした。
だが、そんな人々も自宅の中でまではマスクをしていなかっただろう。
だが、この電子ウイルスに関しては、時間場所問わず眼鏡が外せなくなってしまった。
今も進化を続けるウイルスに、ただ人々は怯えながら暮らしていた。
眼鏡を外す日は果たして訪れるのだろうか。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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