空想お散歩紀行 長い長い旅の果てに
ついに一つの歴史の謎が解明された。
草木が生い茂る一つの無人島。その中に遺跡が発見されてから100年の月日が流れていた。
島全体に広がるその遺跡は、周囲の自然から計測するにこの遺跡は今から数千年以上前にはここにあったことが推測される。
だが、この遺跡は世界中のどの歴史とも符号するところがなく、しかも遺跡内部に使われている技術は過去のものとは思えないほど高度なもので、現代の技術でも解析が困難だった。
そして、調査の結果驚くべきことが判明する。
この遺跡は島に存在していたのではない。
この島そのものが遺跡だった。
正確には、海の上に見えている島は遺跡のほんの一部で、この遺跡は巨大な船だったのだ。
遺跡内に残されていた情報を調べたところ、この船は遥か彼方の宇宙の果てからこの星にやってきた宇宙船だった。
この船の乗組員たちが住んでいた星は、何らかの理由で人が住めない環境となり、新天地を求めて宇宙へと飛び出したらしい。
その道のりは遠く、目的地、つまりこの星に到着するのには1000年ほどの歳月が掛かると計算されていた。
そして、ついにこの船はこうして目的地に到達できたのだが、到着後に乗組員たちがどうなったのかの情報は一つも確認されていない。
まだ発見されていないだけなのか、調査によるとこの船には数百万の人間が乗っていたはずなのだ。
彼らが母星を出発して500年。この船の中だけで、一つの歴史が作られる時間だ。
様々な憶測が飛び交った。この長い年月の間で宇宙船の中で争いが起こり、戦争状態になったとか。疫病が蔓延したとか。未知のエイリアン的存在に襲われたとか。少なくともこの星に到着する頃には、ほとんど人は残っていなかったという考えが通説だ。
だがどれも確たる証拠はなかった。そんな時、一つの資料が発見された。
それは出発からおよそ300年。ここに到着する700年ほど前のこと。
船内の人口が長い年月の間に減少しているという報告書。そこには原因は少子化と書かれていた。
もしかしたら、異星人たちがこの星の地に足を付けられなかったのは、派手な理由ではなく、日常に潜むものだったのかもしれない。
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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5
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