空想お散歩紀行 大晴れ警報
チャンネルを変える。何回もリモコンのボタンを押す。この時間はどの局もニュース番組だ。喋っているキャスター、スタジオのセット、違いは様々あれど、扱っているニュースの内容はどれも同じだった。
「週末が危なそうだなあ」
学校に行く前の少年は、誰に言うでもなく独り言を呟いていた。
テレビ画面には国内の地図が映し出されていた。長い棒を持った男性が、それで地図を指しながら分かりやすく説明をしている。
話しているのは天気予報だった。
「―――よって、金曜日の夜から日曜日に掛けて広い範囲で、大晴れとなる模様です」
少年は窓の外を見る。
分厚いガラスの向こうでは、激しい雨と風が吹き荒れている。庭の木はその中で情熱的な踊りを踊っているようだ。
いつもの風景。当たり前の光景。
この国では嵐が日常の天気だ。
それは何百年も前から続いている。だからここに住んでいる人々はそれを前提として自分たちの暮らしを築いてきた。
建築、交通、産業、その他あらゆることが豪雨と暴風を利用して成り立っている。
だから、それらが止んでしまう晴れという天気は彼らにとってなるべく避けたいものだった。
しかし、今の季節は大型の晴れが国内を襲うことが多い。今年も例年通りに雨と風を止めようとする足音がはっきりと聞こえてきた。
「週末遊びに行こうと思ってたのに、電車止まっちゃったら行けないじゃん」
せっかくの3連休だというのに、見事に潰されそうになっていることに対し少年は、晴れの象徴である太陽を恨んだ。
「眩しくて暑いだけのやつなのに邪魔すんなっての」
自然に文句を言っても仕方ないことは分かっているのだが言わずにはいられなかった。
ニュースは変わらず今後の天気予測について話していたが、少年は学校に行く身支度のために洗面所へと向かう。
外ではいつも通りの雨と風の音が唸っており、これが止むなど微塵も思わせない勢いを誇示していた。
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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5
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