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短歌・詩・俳句

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短歌・詩・猫を中心とした川柳などを掲載しています。
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記事一覧

お弁当と鬱の歌

お弁当と鬱の歌

先週の金曜日のことでありました。

家に帰って弁当箱をカミさんに手渡そうとしてバックから出したとき、その重さに「オレは今日、昼飯を食べなかったんだ」と気づいたのであります。

教員にとって昼休みはあってなきようなものであって、以前にもそんなことはあったのですが、その日は別に何も忙しいこともなく、ただただ昼飯を食べなかったことに夜になって気づいたのでありました。

「お弁当を食べなかったみたい。ごめ

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第290話:今日を終わらせる

第290話:今日を終わらせる


PREMIUM MALT'Sを買って帰る日は なんにもしない  グーダラしたい

これは戯れ歌に過ぎないが、一日の終わりに何か自分へのご褒美があるのは大事なことだと思う。「ああ、今日はもういい。終わりだ」って酔っ払って寝てしまうのは快感である。

僕らは直線的な時間を生きていると言われる。
今日は明日につながり、明日を追いかけ、明日に追われる。1ヶ月後にはあれがあり、来年はこれがある。

高校生

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第293話:🟢秋とカミさんの誕生日:短歌

第293話:🟢秋とカミさんの誕生日:短歌

いい季節になりました。
秋を擬人化した歌と秋の風景を集めてみました。

秋はいつか僕の隣に腰をかけ白く光を揺らしていたり

秋が奏でるヴィオラの音の寂しさに木々の葉は揺れるしかない

これは八木重吉の詩ですが、平明な言葉、繊細でつぶやくように慎み深く、でも秋の清明な空気や美しさを見事に表現しています。
いい詩だなあと思い、趣向を真似て歌を作ってみました。

もう一首。

柿ひとつゆわんと熟るる青空

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第141話:人が山に登る理由

第141話:人が山に登る理由

僕がまだ学生の時、友人と飲んだくれて終電もなくなり、近くの後輩の下宿に転がり込もうとした夜のことだった。

近くといっても歩いて1時間以上もあったのだが、酔っ払っているから距離は気にならない。深夜、いい気持ちで歩いていると道端に大売り出しの大きな赤いノボリバタが立てかけてあった。見渡すが、近くに商店もない。
「こいつはいい」と僕はその赤いハタを担ぎながら、時々は振り回したりなどして気分良く歩いてい

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第141話:人が山に登る理由

第141話:人が山に登る理由

僕がまだ学生の時、友人と飲んだくれて終電もなくなり、近くの後輩の下宿に転がり込もうとした夜のことだった。

近くといっても歩いて1時間以上もあったのだが、酔っ払っているから距離は気にならない。深夜、いい気持ちで歩いていると道端に大売り出しの大きな赤いノボリバタが立てかけてあった。見渡すが、近くに商店もない。
「こいつはいい」と僕はその赤いハタを担ぎながら、時々は振り回したりなどして気分良く歩いてい

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第286話:エアコン

第286話:エアコン

この夏は酷暑だった。

僕が御殿場に越してきたのは26歳の時。もうかれこれ35年以上ここに住んでいることになる。
ここに越してきた頃は、御殿場は湿気が強く、梅雨の時期はよく霧が出て水の中にいるようだった。何でもカビてしまうような湿気と暑さに悩まされたが、それを過ぎると、日差しはそれなりに熱いが、空気は冷たく澄んで高原にいるような爽快さがあった。部活でテニスコートにいると鳥肌が立つことさえあった。

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🟢自己紹介:短歌

🟢自己紹介:短歌

週末に試合を控え、残暑厳しく授業もお互いに意欲に欠け、noteも申し訳ありませんが再掲の自己紹介でお願いします。

拙者こと、いびつななりのやせっぽの胡瓜の恋のごとく不器用

無器用に生きてきたな
と思い、
でも、たぶん、
これからもずっと無器用にしか生きられないのだろうな
と思っています。

第284話:「バカ」と言う人

第284話:「バカ」と言う人

世の中のことに概して関心が薄いのに、何かに引かれるとそれにのめり込んで我を忘れてしまうのは、なかなかに厄介な気質と言うべきかもしれない。

何年か前のこと、そんな調子でネットの対戦将棋にはまったことがある。
適度に遊べばいいのに、勝てば嬉しく、負ければ悔しくてもう一戦交えたくなるといった風で、時には深夜3時4時まで、時には朦朧としてふらつくまでやってしまう。

設定時間が1分という壮絶な将棋もあれ

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第168話:捨てられないもの

第168話:捨てられないもの

定時制に勤めていた時、生徒と話すのは新鮮だった。
僕の常識にはない新鮮な感覚を彼らが持っていたからである。荒くれから引きこもりまで彼らの生き方は千差万別、多種多様、波乱万丈に満ちていて、思わず「そんな生き方もあるのか」と思わされたことも少なくない。

例えばほんの一例、小さなことなのであるが、ある生徒がこんなことを言ったことがあった。彼は朝の5時から午後の4時まで、毎日コンビニのバイトをし、夕方か

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第279話:濡れ落ち葉

第279話:濡れ落ち葉

2024.4月です。63歳です。
60歳で定年退職して、再任用のフルで3年働きましたが、この3年間は精神的にも体力的にもとても厳しく、今年度から同じ再任用でも時短勤務に切り替えました。

「フル」に対する「ハーフ」なので、当たり前ですが「半分」です。ざっくり38時間の勤務が19時間になったわけです。
4月に新しい学校に赴任してみると、授業の持ち時間は週に10時間ということで、1年生と2年生の週5時

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台風10号

台風10号

猫は時期によって居場所を変えますが、我が家の猫はこの夏の後半は、午前中、僕の机のすぐ横でソファーに転がって惰眠を貪り、

午後は、車の屋根で惰眠を貪り、

夕方、日が傾くと「にゃーお」と呼びにきて僕を散歩に連れ出し、
(最近、なぜかこのスフィンクス座りが多くなりました)

夕食時には席について「私のごはん」を要求し、

ご飯が済むと、また、今度は車のボンネット?で惰眠を貪り、

夜中はどこにいるの

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▲親友の死に→29話

▲親友の死に→29話

克彦が死んだ日
僕は妻と芝居を見に出掛けた

訃報を受け取った時泣きじゃくっていた妻は
芝居に行く道の車の中では
明るく 
芝居の粗筋など僕に聞かせたりした

妻が僕の気持ちをどう考えているのか
僕にはよく解らなかったが
話題に克彦をのせない妻にすべてをまかせたまま
芝居を観てそれなりに笑い
それなりに拍手などして
帰る車の中でも
流行の歌など聞きながら
お互い
克彦のことには
一言も触れずにしま

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第194話:湯たんぽと猫

第194話:湯たんぽと猫

ここ数年、寄る年波に、夜はカミさんが湯たんぽを入れてくれるようになり、それに頼って寝ている。若い頃はどんなに冷たい布団に入ってもすぐに体温で温まったのに、いつしか靴下を履いて寝なければ寝られないようになり、もはや今は、湯たんぽがなければ眠れない状態にある。

湯たんぽは温かくていい。
が、酒を飲んで正体なく眠る僕は、湯たんぽにずっと足を置いていてもその熱さに体が反応せず、低温火傷になって病院通いを

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第29話:親友の死

第29話:親友の死

克彦が死んだ日
僕は妻と芝居を見に出掛けた
訃報を受け取った時泣きじゃくっていた妻は
芝居に行く道の車の中では
明るく 芝居の粗筋など僕に聞かせたりした
妻が僕の気持ちをどう考えているのか
僕にはよく解らなかったが
話題に克彦をのせない妻に全てをまかせたまま
芝居を観てそれなりに笑い
それなりに拍手などして
帰る車の中でも 流行の歌など聞きながら
お互い 克彦のことには
一言も触れずにしまった

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