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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2022年12月の記事一覧

真のICT教育は「アプリ依存」をいかに脱するかの工夫に他ならない

真のICT教育は「アプリ依存」をいかに脱するかの工夫に他ならない

GIGAスクール先行導入から3年目、日本中の学校でICT端末やシステムの導入が進んでいると思います。

特に小中学校での導入事例発表を見ると、その進歩は目覚ましいようです。

初年度の端末配布世代が、次年度は高校生になることもあり高校での利用もさらに進んでいくでしょう。

一方で、ICTを全く使えていない現場や教員も一部には存在するようです。

その原因が、それぞれの教員の新しいことに挑戦するマン

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精神疾患を抱える教員が過去最多に増加するのは必然

精神疾患を抱える教員が過去最多に増加するのは必然

令和3年度に精神疾患で休職した公立学校の教員が5897人と過去最多を記録したというニュースが上がっていました。

これは公立教員全体の0.64%、精神疾患による1カ月以上の病休取得者を合わせると1.19%にも上るようです。

これは民間の割合と比べて2倍以上となります。

もちろん、公立教員は正規採用となった場合、精神疾患による休職となっても免職となることはないため、民間企業と比較して休職しやすい

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在職中に「大学院進学」をできる環境と制度の充実は、学位取得者を増やすには不可欠

在職中に「大学院進学」をできる環境と制度の充実は、学位取得者を増やすには不可欠

産経新聞のオンラインに以下のようなコラムが載っていました。

政策決定に関わる官僚やエリート層に博士号の取得者が少ないという問題は以前から問題となっていましたが、現時点では解決していません。

産経のコラムでは給与面などの「待遇改善」をインセンティブとして取得者の採用を増やすべきだとしています。

新卒一括採用の弊害そもそもこうした問題の多くには「新卒一括採用」という悪しき慣行があります。

もち

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「教員採用早期化」は文科省の「獲らぬ」どころか「見ぬ聞かぬ」狸の皮算用

「教員採用早期化」は文科省の「獲らぬ」どころか「見ぬ聞かぬ」狸の皮算用

秋口から話題になっていた教員採用試験の早期化が実現しそうな情勢です。

この件に関しては一度記事を書いています。

さて、あれから教員を目指す人が増えるような勤務環境の改善に関わる改革案の策定は見られたのでしょうか。

部活動の地域移行⇒先延ばし来年度から中学校の部活動は地域のスポーツクラブや団体にその運営を移行する予定で話が進んでいました。

しかし、案の定ではありますが受け入れ先が見つからない

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「防衛費」と「教育・子育て支援」の議論を混同する人たちの非論理性

「防衛費」と「教育・子育て支援」の議論を混同する人たちの非論理性

先日、岸田首相は1兆円規模の防衛費の増額に伴う増税の方針を打ち出しました。

私自身、この方針には賛成なのですが、いかんせん財源確保のために増税、しかも法人税をその8割に充てることについては疑問に感じています。

景気が冷え込む中、賃金増への圧力をかけるべき政府が企業収益を悪化させる政策を行っては意味がないからです。

ただ、今回はそうした財源議論ではなく、防衛費の増額そのものに焦点を当てたいと思

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「知識の詰め込み」だけでは意味はないが、「詰め込んだ知識を使えない」のは本人の責任

「知識の詰め込み」だけでは意味はないが、「詰め込んだ知識を使えない」のは本人の責任

「主体的・対話的で深い学び」が新指導要領の目標とされ、詰め込み教育への批判と反省があらゆる場所でなされています。

詰め込み教育の功罪かつての詰め込み教育に関しては肯定的な意見もありますし、批判的な意見も目立ちます。

私個人の考えとしては、かつての時代背景においては決して間違いではなかった、という評価をしています。

右肩上がりの経済、人口が増加し内需も増え続け、護送船団方式や終身雇用、年功序列

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「教員をけがをさせた疑いの中2男子生徒を逮捕」という当たり前が報道される社会

「教員をけがをさせた疑いの中2男子生徒を逮捕」という当たり前が報道される社会

先日、教員を蹴るなどしてけがをさせた疑いで中学生が逮捕された事件が報道されていました。

男子生徒はタブレットで頭を叩いたことは認めていますが、蹴ったことなどは認めていないようですので、今後の捜査によって明らかになるのでしょう。(タブレット頭を叩くだけでもかなり悪質だとは思いますが)

警察の介入を拒絶してきた教育現場これまで、学校は警察の介入を拒絶してきました。

これには複数の理由が考えられま

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神戸市小中学校のクラス担任複数交代制は働き方改革の決め手と成り得るか。

神戸市小中学校のクラス担任複数交代制は働き方改革の決め手と成り得るか。

先日、神戸市教育委員会が小中学校のクラス担任を複数で交代する制度を導入すると発表しました。

記事にもあるように、複数の教員が定期的に交代しながら、順番に担任となって指導し、クラスを運営するという仕組みのようです。

こうした改革はもともとは働き方改革の一環から生まれたものでしょう。ところが、その副次的な効果として、生徒側にメリットも多いように感じます。

教員側のメリット・デメリット教員側のメリ

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「大学生の生活保護認めない」厚労省の前時代的認識

「大学生の生活保護認めない」厚労省の前時代的認識

先日、厚労省が生活保護を受けながら大学に進学することができないという方針を継続するという報道がありました。

これは60年前から続く規定であり、今回もそれを踏襲したということです。

60年前の大学進学率1960年代の大学(短大含む)進学率は25%を切っており、国民の4人のうち3人は大学に進学していません。

この数値が示すように、60年前には高等教育を受けることは明らかに「贅沢」といっても良い状

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大学に進学していない人ほど「大学進学にはお金が掛かる」と思い込みがち

大学に進学していない人ほど「大学進学にはお金が掛かる」と思い込みがち

保護者との面談の中でよく出るのが「私立大学には行かせられない」という言葉です。

俳優の高知東生さんは上のようなTweetをしています。

大学進学率の低い地方都市では、こうした認識の人が結構な数存在します。

では本当に「大学に行きたければ行かれる制度」は現在の日本においては存在しないのでしょうか。

大学に行くことへのハードル大学に行くことへのハードルに関しては2種類が存在します。

それは経

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「ドギー・ハウザー」に見る「飛び級」はギフテッド教育の決め手にはなり得ない

「ドギー・ハウザー」に見る「飛び級」はギフテッド教育の決め手にはなり得ない

IQ141の小学生のニュースがYahooに上がっていました。

現在小学2年生のこの少年はIQ141であり、中学生レベルの知識や計算能力を持っているとのことです。

自称高IQのヤフコメ民の解決策=「飛び級」案の定ではありますが、コメント欄には自称高IQの人たちのマウント合戦が始まっていました。

曰く、「自分は賢すぎて周りに馴染めなかった」と。

また、そのことに対し多くの方が「飛び級」を導入す

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「全国学力テストの過去問対策」調査に見る、教員向けアンケートの無意味さ

「全国学力テストの過去問対策」調査に見る、教員向けアンケートの無意味さ

以前、全国学力テストに関して、学校が事前にテスト対策を行っていることが問題になっている件について触れました。

テストの目的が不明確が故に現場の混乱を招くこのテストが何を目的にしているのがよくわかりません。

ただ、現在の実施方法の場合は事前対策を推奨しているように現場の教員側からは感じ取れるでしょう。

学校や県ごとの平均点を発表し評価をする以上はそうした圧力が発生するのは必然です。

そのため

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