
精神疾患を抱える教員が過去最多に増加するのは必然
令和3年度に精神疾患で休職した公立学校の教員が5897人と過去最多を記録したというニュースが上がっていました。
これは公立教員全体の0.64%、精神疾患による1カ月以上の病休取得者を合わせると1.19%にも上るようです。
これは民間の割合と比べて2倍以上となります。
もちろん、公立教員は正規採用となった場合、精神疾患による休職となっても免職となることはないため、民間企業と比較して休職しやすいということもあるでしょう。
とはいえ、2倍以上というのは尋常な数値ではないはずです。
1年目の新入社員に4月当初から担当を全振りするブラック企業=学校
公立学校の教員、特に小中学校においては、新卒で採用されたとして4月から担任のクラスを任されるケースがほとんどです。
一番上の日経の記事にも以下のようにあります。
文科省調査では、若手ほど精神疾患による休職の割合が高い傾向が出ている。さらに、どの年代でも赴任から2年未満での休職が目立ち、学校に慣れるまでに経験豊富な同僚が支える体制が必須となっている。
富山県の公立小のベテラン教員によると、2022年春に配属された新人2人のクラスが、児童の私語などでいずれも授業が成立しなくなった。学校は、児童を巡るトラブルの情報共有を徹底する対策を取り、学級運営について教員の話し合いを重ねて新人を孤立させないように腐心した。
教員の休職、「精神疾患で」最多の5897人 21年度調査
「学級運営について教員の話し合いを重ねて新人を孤立させないように腐心した。」と、あたかも組織的にサポートをしたように書いてあります。
もしかすると、公立学校の当たり前に慣れ切った人は疑問に感じないかもしれませんが、新人の教員を教室の中に放り込んでいるというのは極めて異常な状態です。
通常、新卒などの未経験者をいきなり顧客の担当として全振りする企業はほとんどありません。
もちろん、存在しないわけではないでしょうが、総じて「ブラック」と呼ばれる企業がほとんどです。
(私の勤務校のベ〇ッセの担当者は新卒で前任者からの引継無しだったこともありますが、これは異常なことでしょう)
一般的には、先輩や上司からゆるやかに担当が移るなどがほとんどです。
初任者研修でさらに追い詰める鬼畜っぷり
公立教員の場合、さらに「初任者研修」という制度で1年目の採用者に対して研修を行います。
詳しく書かれたnoteの記事がありました。
個人的には、教員として研修を受けること自体に意味がないとは決して思いません。
むしろ、座学による学びを重視することも教員という職業においては重要ではないかと考えます。
しかし、それを授業が詰まっていたり、学級担任を付けた状態の人間に、しかも外部の研修所で行うというのは正気の沙汰ではありません。
出張のために研修の日のために授業を入れ替えを行い、代理の担任にお願いとその準備や連絡事項をまとめる、戻ってきたら不在時の残務を処理する、考えるだけでもその予定のために無駄な業務がさらに増えることが容易にわかります。
これでは、新人をつぶすために行っているとしか思えません。
(学校を離れ、外部の研修所であるために息抜きになるという猛者もいるようですが)
こうした異常性に関しては私もnoteに記事としてまとめました。
全ての原因は人的リソースの不足
こうした問題の原因は、仕事量の多さとそれと比較した人的リソースの不足が全てです。
文科省は新人を支える中堅教員が不足している、という分析を出していますが、それは表面的なものでしかありません。
そもそも教員の権威が低下し、保護者からクレームや要望を受け入れる必要の出てきた学校という場所は依然と比較して格段に業務量が増加しました。
そのため、新卒者であっても現場に放り込んで業務を無理やり回すという手法が定着しました。
ところが、何のノウハウもない新卒者が業務を上手くこなせる可能性は低く、そのサポートをする人員もいない、というのが現状です。
さらに言えば、そうした現状が可視化されたため、志望倍率が極端に低下したという悪循環が発生しているのです。
現状を解決する手段は一つで、新卒者を現場に放り込んでサポートすることではなく、新卒者を現場に放り込まずにまずはサポート役に専従させる、ということです。
そしてそれを可能とする体制を構築するために業務量をいかに削減するか、ということが課題になるべきなのではないでしょうか。
メンタルを病むのは必然
こうして考えれば、メンタルを病んで休職する人が増加、しかも20、30代に多いというのむ必然でしょう。
こうした労働者の視点から見ても、日本の初等、中等教育は明らかに制度疲労を迎えており、その機能は正常とは言い難い状況です。
一刻も早く、抜本的な学制改革を行う必要があると感じるのは私だけでしょうか。