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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2022年4月の記事一覧

「自由な時間」と「学校の責任」

「自由な時間」と「学校の責任」

先日のクローズアップ現代で話題になっている内容に関して考えていきます。

以下のツイートでも話題のようです。

放課後は学校の管理する時間かそもそも放課後は学校が管理する時間なのでしょうか。

教員の職務に関して調べると

学校内における諸活動を担当するのが教員の職務であり、それらは正規の勤務時間を適正に割り振り、時間外勤務を行わない、と明示しています。

つまり、学校から帰った生徒に関して、通常

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「好きなことで生きていける若者を育てる」より「それを邪魔しない大人を育てる」

「好きなことで生きていける若者を育てる」より「それを邪魔しない大人を育てる」

学習指導要領の改訂施行がこの春から高校でも始まりました。

この改定の目的は「生きる力」と題された目標が掲げられています。

「生きる力」とは主体的に自ら学び、社会の変化を捉えて柔軟に判断、行動できる力、とも読み替えられます。

自分の興味を最大限に引き出し、それを原動力にして「好きなことで生きていける」人材の育成が目標にある、と私は読み取っています。

日本や国内企業の影響力が低下する中で、世界

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新卒が授業する異常性

新卒が授業する異常性

学校現場では当たり前の光景ですが、大学を卒業したばかりの新卒の社会人が授業を行います。

教壇の上に一人で1時間の授業をこなします。

しかも週当たり20時間程度の授業を持つのは普通のようです。

研修期間が存在しない公立学校の場合、採用試験を受かった初任者は初任者研修に参加することになります。

最初の1年間は仮採用として勤務し、その後本採用となるようです。

文科省によると校内研修が週10時間

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授業の「ライブ感」こそ

授業の「ライブ感」こそ

私は授業で使用する課題のプリントなどは毎時間作成しています。

前年度と同じコースやクラス、カリキュラムであっても絶対に使いまわすことはありません。

業務効率から考えれば、データベース化して毎年使うというのが一番楽なのでしょう。

しかし、それをしたくない理由があります。

「ライブ感」を感じる授業対面授業がオンラインの授業やオンデマンドの授業と比較して最も優れている点は「ライブ感」です。

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「ゆっくり丁寧」な授業は逆効果

「ゆっくり丁寧」な授業は逆効果

学校の授業や業務におけるプレゼンテーション、講演会など、多数の人々に何かを訴えかけたり、説明するという機会はオンラインのやり取りが進み、増加傾向にあるのではないでしょうか。

こういった機会が全くない人もそう多くないでしょう。

「ゆっくり丁寧」に話しなさい、というアドバイスそうした機会において、『「ゆっくり丁寧」に話した方が良いよ』というアドバイスをもらった人は少なくないのではないはずです。

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いかに「手を抜いて」授業をするか

いかに「手を抜いて」授業をするか

学校教員の世界において、授業の準備にいかに力を入れるかは常に話のタネになります。

授業の質を確保するために際限なく準備をするべき、休日に教材研究を行うのが教員の務めだ、という話を教員界隈ではよく耳にします。

一方で勤務時間外でないとできない授業準備はそもそもが業務量がオーバーフロー状態であり、勤務時間内に終わらせるべきだ、という意見もあります。

勤務時間内に予習や教材研究をする時間は少ない教

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教育実習生の心を折るブラック労働

教育実習生の心を折るブラック労働

教育実習生を受け入れることに関して、学校現場はなぜか上から目線で実習生に接しています。

「採用試験を受けない実習生は受け入れない」

「忙しい先生方が無償で指導しているのだから、平身低頭で望みなさい」

「就活などもってのほか、他の予定はすべて断りなさい」

自分たちがボランティアで受け入れていると言わんばかりの態度や対応であるケースが多いようです。

今回はこのことについて考察していきます。

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高校における政治教育と教員の政治的中立性

高校における政治教育と教員の政治的中立性

この4月から、多くの高校3年生は誕生日と同時に成人になります。

しかし、遡ること6年、2016年から選挙権が18歳から認められるようになり、高校生が投票する制度はスタートしています。

その間、様々な政治への参加を促す教育を成されてきたようですが、依然として若者の投票率は低い状態が維持され続けています。

この問題に関して、高等学校における政治教育の観点から私見を述べたいと思います。

10代の

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『教「師」』から『教「員」』へ

『教「師」』から『教「員」』へ

かつての学校の先生昭和の時代と現代における、学校の先生の社会的ステータスは大きく変化しました。

これには様々な社会的背景がありますが、その一つは大学進学率の向上です。

学校の先生になるためには、基本的に大学を卒業する必要があります。

しかし、日本の大学進学率が戦前戦後も低い時代が続き、昭和の末期においても大学進学率は18歳人口の3割強ほどでした。

それ以前の世代が現役であった当時の社会状況

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板書コピペノートを高評価する謎文化

板書コピペノートを高評価する謎文化

授業中の板書を写したノート提出を生徒に課している教科や授業が存在します。

私にはその行為に意味があるかどうか…疑問です。

少なくとも、数学科の教員としては数学の授業において、板書ノートを提出させることには学習効果が得られることはほとんど無い、と言って差し支えないと思います。

何のためにノートを取るのか学習者は何のためにノートを取るのでしょうか。

私はノートの役目を授業中の記憶の補助や頭の整

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授業中に水を飲むことを「許可」するか

授業中に水を飲むことを「許可」するか

たびたび教員界隈で問題になる話題なのですが、授業中の水分補給に関して私見を述べたいと思います。

むしろ、授業中に水を飲むべき科学的、医学的観点から水を飲む行為は推奨されています。

厚生省のHPにも記載があるように、室内でのテレワークなどでも水分補給が重要で、のどの渇きを感じる前に水分を摂ることが推奨されています。

また、マスク生活においては呼吸数や体感温度が上昇し体に負担がかかるため、なおさ

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「塾に通うべきか」という質問

「塾に通うべきか」という質問

生徒や保護者との面談の中で必ずと言っていいほど聞かれるのがこの質問です。

私は基本的に

「塾に通わないよりも、通ったほうが学力が上がる可能性は上がります。しかし、その可能性の上がり幅は生徒本人次第です。」

という回答をしています。

塾に通えば成績は上がるか「あの生徒は塾に通い始めてから成績が下がった。」

という反応を示す学校教員は少なくありません。

しかし、そもそも学校の定期試験の成績

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「巧遅は拙速に如かず」の加速化

「巧遅は拙速に如かず」の加速化

学校教育では「丁寧」や「時間を掛ける」ことが非常に好意的に捉える事が多いと思います。

逆に「雑」や「手抜き」は悪評価となり、早く終わることにインセンティブを与えないというのは当然とされています。

「巧遅は拙速に如かず」の出典この言葉の意味と出典を調べると

とあります。出典は『文章軌範』という科挙の参考書のようなものからのようです。

孫氏からの引用という話もありますが、若干内容がずれているの

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