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いかに「手を抜いて」授業をするか
学校教員の世界において、授業の準備にいかに力を入れるかは常に話のタネになります。
授業の質を確保するために際限なく準備をするべき、休日に教材研究を行うのが教員の務めだ、という話を教員界隈ではよく耳にします。
一方で勤務時間外でないとできない授業準備はそもそもが業務量がオーバーフロー状態であり、勤務時間内に終わらせるべきだ、という意見もあります。
勤務時間内に予習や教材研究をする時間は少ない
教員の仕事は授業が本務であり、教員免許は教科の免許として発行されます。
しかし、実際には事務作業や部活動、生徒指導など教科教育の専門家の本務ではないものが学校業務の多くを占めています。
残念ながら、教員の労働時間の中で教材研究に費やす時間は優先順位が低いというのが現実なのです。
公立の小学校の授業準備は5分が勤務時間内の適正な配分で、それ以上は自発的な取り組みという司法の判断もあるようですし。
これがナンセンスなのは自明ですが、授業の準備が勤務時間内に終わらない現実は依然としてそこに横たわったままなのです。
勤務時間外の負担を減らす
個人的には、時間外に仕事をすることには断固反対の立場です。
しかし、教員という職業の性質上、どうしてもそうした時間が必要ということも理解はしています。
だからこそ、その負担をいかに減らすかは働き方改革の視点からも、業務の継続性を考える上で避けて通れない課題だと思います。
短時間で、かつ最小限の準備で負担を減らすことが求められます。
私の取り組み
私は高等学校に所属しており、担当教科は数学です。
そこでは以下の工夫で時間内になるべく終わるように、時間外の場合は可能な限り短時間で終えるようにしています。
学校の設備前提
Google Classroomを生徒全員にアカウントを配布済
授業用の端末は個人 or 学校の貸出のものが一人一台完備
教員用のPCが一人一台支給
電子黒板が各教室一台配備
この辺りはGIGAスクール構想が進んだので、比較的一般的な環境でしょう。
私自身の環境
自宅にPCとプリント作成環境が整備
iPadとMac、Windows PCを3台持ち
プリント作成ソフトをインストール済
ここは趣味の範囲ですが、Windows PCは必須でしょう。それ以外は大した環境は必要ありません。作成ソフトをインストールするのに場合によっては初期費用がかかるかもしれませんが。
実際の授業準備
授業用のデジタル教科書を授業前日に読む
教科書内容のプリントをデータベースソフトで作成する
学校で、終わらない場合は自宅で、一コマ辺り15分を目安に作成
プリントをPDFにして、生徒のGoogle Classroomに送信
ここまでを前日に済ませます。授業で扱う内容とプリントは当然対応した内容にして、授業で話すことをプリントを作成しながら授業を組み立てて、必要な場合はメモを取っておきます。メモもiPadなどでPDFにしておきます。
プリントの内容は解けるようになってほしい問題を並べて作成し、それが解けるように逆算して授業を組み立てます。
授業時間の流れ
デジタル教科書を電子黒板に投影し説明(20分強)
説明後、生徒はプリントPDFを端末で見て各自演習
ノートや紙に解き、それをカメラで撮ってアップロード提出
タブレットとペンで書き込み送信も可
あらかじめ印刷してくる生徒も(提出はアップロードで)
解答解説は最初からプリントに添付済み
観察と机間指導でフォロー、場合によっては全体へ声掛け
授業終了後、振り返りのフォームを入力、プリント提出で課題完了
演習中は隣近所に聞いて解いても可
授業自体の教員側の話す時間を減らし、電子黒板とデジタル教科書でスムーズな説明を行います。これにより、予習時間も短縮できます。
また、生徒は授業時間中に演習が可能です。プリントの残りは家での課題となりますが、クラスの真ん中の生徒が授業20分+家庭30分で必ず解け終えるように設定します。
提出状況の管理
基本的に提出をしたかどうか
出したら1点
中身は精査しない
提出しなくとも深追いしない
定着状況は小テストで確認
以上により、授業の準備、提出確認など無駄な準備を可能な限り削減しています。
プリント作成は授業進度に応じて都度作成になりますが、なるべくソフトからそのまま使うようにして負担を減らします。
印刷の手間が無いため、これも負担減につながっています。
想定される質問・批判
Q1.単元を通じた授業の組み立てが出来ていないのでは?
A1.慣れたら見通しはつく、初任者は次年度改善目標
Q2.授業中に演習を入れるのは授業をしていないのでは?
A2.できるようになるのが授業の目的、教員が話をすることは目的ではない
想定しているのはこれぐらいでしょうか。思いつかないので、何かあればコメントに書いていただくと参考になります。
手を抜いていいのか
授業の目的は生徒が教科内容を理解し、学習に取り組めるようになることだと私は考えています。
どれほどしっかり考えて授業をしても、生徒が手を動かさない授業は意味がありません。
また、教員が自分の時間を必要以上に使って準備をすることも費用対効果の観点から望ましくないでしょう。
教材研究には限りがない分、効果が十分に期待でき、なおかつ授業者の負担にならないラインを見つける必要があります。
私にとってはこのあたりが「手を抜く」ラインになるようです。
全力で毎日の授業に取り組むことは美談のようですが現実的ではありません。
負担にならないように、自分のスタイルの中で学習効果を維持しつつ「手を抜く」ことが大事なのではないでしょうか。
学校の教員をする人の多くは真面目で熱心な人が多いようです。それは良さでもありますが、自分を追い込みやすい欠点でもあります。
過去にも書いたことですが「あえて手を抜く場所をつくる」、これを上手くやっていくことが長く無理せずに続けるコツなのかなと…