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seiji_arita
2025年2月15日 17:22
「青い森」僕と君はふたりきりで限定された場所に居るといっても僕等は全くのふたりきりでは無いふたりの間には もうひとつの別の世界の存在がありそれは暗闇の中にじっと身を屈め潜んでいるその場所では ゆっくりと美しさが損なわれていくそんな世界である事を僕等は知っていた人混みの中で ふたりは名前すら持たない唯一 限定された場所でしか僕と君は細やかな解放感
2025年2月14日 14:39
「国境の街」国境の街 関税の煩雑 密輸業者の黒い噂と政治工作それは通り過ぎていく雲 一片の薄暗闇病気と言う名のカテゴライズ率直さの奔流 ただの演技さそう退屈さの片鱗を漂わせながら奴は言った信念の欠如と月並みな警告この街は何も嘘をついているつもりはないただ気が付かないうちに嘘を繰り返しているだけなのさマリファナを出してきてジョイントを作る仕草誰もが
2025年2月12日 12:56
「二月の残酷な月」僕等にはロマンスへの回帰が必要とされている二月の残酷な月 愚行の後悔を映し出し人の心を腐敗させてゆくそれはいつ果てるとも知れない無力さとして夜空を覆い尽くしていたその場しのぎの礼儀が愛想笑いをして通り過ぎてゆく独善的で幸運に恵まれた女性ロマンスや想い出をもたらしてくれるかもしれない危険珈琲に砂糖を入れないなんてアナーキストだわそ
2025年2月10日 14:43
「破砕物」紙にペンを走らせ自分の名を冠にするに足る創作をなそうとする者よ言葉の実験を繰り返し型破りなストーリーを語る高度にドラマチックな散文が降り注ぐ言葉の構築物はストーブの上で溶けていく氷の様に跡形もなく消えていく寄り道を拒絶する詩の定義第一原稿が書き上がった時夜を嘲笑う様に稲妻が光る常識に始まり常識に終わる物語ほど味気ないものはない雑誌に掲載
2025年2月6日 21:21
「草の葉」僕の手に思考の電撃が走るそれは恋の始まりの様なものだった君は途方に暮れ 向かうべき道を示す常夜灯を探し彷徨っていた それは想像もつかない程の暴力を秘めた夜に似ている巨大にして偉大な静けさをもたらす夜に人々は優しい夢を見るというのに僕は路上で風に吹かれ散っていくラブレターを追いかけている彼女の意識の中にあるうちなる両手が僕を包み込んで離
2025年2月4日 23:08
「火遊び心中」僕の口からいちいち そんな事を言わせないでくれそれこそ表から裏まで 承知していたはずだ君が欲しがるものを誰もが迅速に届けてくれる訳じゃない誰も君にかしずいてはくれないって事さだいたい君が生きよが死のうが そんな事を皆んなが気にするとでも思ってるのかい君はいつか 違う奴と違う詩を歌う事になるだろう白昼の光の中に 夜の闇の静けさの中に
2025年2月3日 12:28
「愛の外郭」波の砕ける音がする あれは海なのか正義の道を踏み外さない様に 真っ直ぐと防波堤は伸びている僕は随分と長い間 彼女の事を描写していたそう 描写と言う言葉が一番的確な表現だ彼女の横顔 仕草 指先の動きまでも克明に彼女の微笑みは僕個人に向けられたものではないその事はわかっていたが僕は彼女の微笑みに合わせる様に微笑んだ世界を終末に導く悪しき事
2025年1月30日 16:30
「愛しき街の愛しき人よ」恋人はやって来て貴女を彼方へと連れて行くそれでも私は何も知らないふりをする貴女は彼の為に詩を唄い私は貴女の為に詩を唄う私的な思考を涵養する為にだけ時を費やし磨き抜かれた個人主義は私自身の世界の歌であり何十万と言う言葉でそれを綴り続ける前衛的ではあるが決して自己本位ではない風が街に吹き付ける表面的な見た目とは裏腹に攻撃的でか
2025年1月29日 14:35
「ドストエフスキーを読みながら」貴方が居なければ 僕の人生と作品はもっと薄っぺらいものになっていただろうその部屋には陽光がたっぷりと差し込み風に揺られる樹々の影がちらついていた馴れ親しんで来た十字架の横に深層意識への入り口を並べる死と同じくらい逆行不可能な幾つかの悲しみについて 僕は考えている意図的に排除されたひとつの事実を貴方と囁き合う神のこだま
2025年1月26日 17:00
「蝶とリヴォルヴァー」一途に恋焦がれた理想郷互いの瞳の瞬きと甘美なせせらぎ三十八口径のリヴォルヴァー弾丸を弾倉から抜き出すまだ終わりを迎える訳にはいかない彼女の暗い涙のあとが残る頬に口づけをした日僕等は未知数をXと置き 其れを解き明かす為の何らかの公式を探していたそう 素敵な公式を何ひとつとして傷つけられず損なわれる事もなく辛い思いも残らない卑怯だ
2025年1月24日 23:54
「午前3時」熱き感情が暗流となり渦を巻く細やかな霧の様な情念が美しきベールとなり夜を優しく包み込む目に見える楽天性と対極する自己破壊への欲望僕の本能的弱さが優しき霧を熱望し此処に生み出す夢と幻滅の間にある 巨大な空白を埋める文章をロマンチシズムの最後の残滓を探し求めている僕は金色の絵の具で黄金の月を描いたそれもいつかは消えて行くだろう現実との
2025年1月19日 03:45
「風の森と彼方に浮かぶ半月夜」孤独 或いは無口な漆黒を切り裂く半月夜月が遠く彼方に浮かぶ時君は個性と方向性を具えた存在感のある文脈を独り立ち上げて行く僕等は自分自身を守る事に精一杯だったね先ず周りの人達の顔色を伺ってからじゃないと何も出来ない周りを見て 場の空気を読んで無難な事を発言するお前 失礼な奴だ 何様だと思ってるのか とかそんな風に言われたり
2025年1月14日 14:32
「SO WHAT」そろそろ本当の話をしようか…君はそう切り出したいつだってそうだよねだって君は何も知らない 本当の事なんて何ひとつとしてわかってないペラペラの薄っぺらい言葉の羅列の中には何もない強いて言うなら自己顕示欲可哀想だね 格好悪いよ皆んな気付いるって言うのに其れを知らないのは君だけさ小説を書いていたんだプア ボーイがリッチ ガールを殺す物語 君はそんな
2025年1月10日 19:58
「イングリッシュ ローズ ガーデン」長く続いた雨も止んだフロントガラスの枠から雨漏りをしていたバンデンプラス プリンセスコーキング剤で漏れ箇所を塞いだ小さな白い薔薇が 何かを思い出す様に咲いている厚い雲間から太陽の光が溢れる ほんの一瞬の事だわからないものは永遠にわからないまま時は流れいつしか其の事自体も薄れ記憶から消え去って行く簡単に読み飛ばせる文章