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散文詩

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彼女はレゲエしか聴かない 《詩》

彼女はレゲエしか聴かない 《詩》

「彼女はレゲエしか聴かない」

一晩中降り続いた雨が

何も無かった様に止んだ朝

近づいて行く様で遠ざかる夢

色褪せた目の前の景色でさえ

愛して行くと誓うから 

僕は声に出してそう言った

誰に わからない 

遠い記憶の中の
自分に言ったのかもしれない

何処からか聴いた事のある

レゲエミュージックが聴こえて来た

グラマラスな彼女は

「秘密の花園」と言う詩を書いて
僕に朗読してくれ

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モンブラン 《詩》

モンブラン 《詩》

「モンブラン」

ひとつの生き方を提示する様に

月の周りに虹の様な輪が見えた

何年も前からの
夏の幻影を見ている様だった

無価値で道徳心の欠片も無い

侮蔑された夜に月暈とは…

今夜は幸運が降り注いで来る予感がした

僕等は車のトランクに
バールとハンマーを入れて

目的の場所に向かっている

ヒールのかかとが取れかかっていた

新しいヒールが

欲しいと言っていた彼女は 

靴屋に行って

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STAY GOLD 《詩》

STAY GOLD 《詩》

「STAY GOLD」

僕等は夢の中で生きている

いつも どんな時でも一緒だった

本当に不器用だよな お前は 
わかってるよ

機械的に暗記された即効性と

功利性志向に塗り固められた壁が
押し寄せて来る

其処には数値化された結果重視の
硬直性が澱み無く立ち塞がる

熟成した社会における例外は

致命的な悲劇であるかの様に評価され

其の人間固有の抱える
構造的な欠陥であり

社会構造内に

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スリム•シェイディ 《詩》

スリム•シェイディ 《詩》

「スリム•シェイディ」

本物のスリム•シェイディは
立ち上がってくれよな

ごく普通の俺なんて

誰も見たくないだろう

だから俺は奴を創り出したんだ 

偽物なんかじゃ無いぜ

本物のスリム•シェイディさ
模倣するのはやめてくれ

赤い口紅が唇からはみ出してる 

其処のお前

お前が最初にフェラした男の
名前を教えろよ

サイコパスとかジャンキーだとか

窓の無い部屋だとか

毎日 薬の数だ

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魔法使いと詐欺師 《詩》

魔法使いと詐欺師 《詩》

「魔法使いと詐欺師」

幻滅 其処には何か間違ったもの
正しく無いものが含まれている

健全な想像力が失われて僕等の

心には後味の悪い失望感だけが残り

かつて掲げられた正しき

スローガンや美しいメッセージすら

今は その正しさや美しさを支える

だけの魂の力が欠落している

全ては空虚な言葉の羅列に過ぎない

僕の表現する事柄や発する言葉が

おそらく同じ様な種類の人々に
受け入れられて

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トルストイと犬 《詩》

トルストイと犬 《詩》

「トルストイと犬」

戦争と平和とか
アンナ•カレーニナとか

随分前に読んだ気がする 

どんな内容だったのかは
もう 覚えてないけど 

歳下の女の子 

18歳くらいの少女が
トルストイを連れて来た

流れ進むのは我々であって
時では無い

ねぇ 声が聴こえるでしょう

合唱隊がふたりに祝福を与える様に
歌声を響かせている

ねぇ 聴こえるでしょう

本当の物語は此処にあるの

私の部屋のリ

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黄泉国 《詩》

黄泉国 《詩》

「黄泉国」

また夢を見た辛い夢を 

其れが少女からの最後の
メッセージだった

ただ意識を集中する 

イメージが自律的に動き始める

妄想的な暴力性が
暴走を始め混沌の中に深く沈み込む

身体と意識が壁を抜けて行く

既存のメディア認識により成立した世界で

即席的なロマンチック•ラブが
大量生産されている

インスタントな愛の営みと欲求と快楽

本質的なロマンチシズムに

性的関係はあって

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自己治療 《詩》

自己治療 《詩》

「自己治療」

全ての事柄は一般的な
興味に合わせて形成されている

其処には本質的な答えなど無い

青春とか純愛とか正義だとか

其れとは全く異なる趣旨を持つ

自己治療に似た行為が僕に
言葉を綴らせる

僕の前を車が通り過ぎる

君の住む街のナンバーだった

なんだか其れだけで少し嬉しくなった

その景色の背後にある
内面的なイメージが

僕に幸せなストーリーを語りかける

課題も無く物語は景

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箱庭 《詩》

箱庭 《詩》

「箱庭」

自然に流れる思考水路 

幾つかの可能性を示唆し僕自身を導く

焦点をひとつに定め
鋭く意識を其処に集中させる

だからと言って簡潔に

要を得ている物語が降りて来る訳では無い

色々な外部的価値には
たいした意味は無く

想いの全てを言語化する必要も無い

僕は意識と現実の中間にある

箱庭に居る

かつては其処にあった体制に向かい

反体制の旗を掲げる事が出来たが

辿り着いた場所

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選ばれし者の試練 《詩》

選ばれし者の試練 《詩》

「選ばれし者の試練」

好むと好まざるとにかかわらず

何事にも支払うべき代償は付き纏う

いずれにせよ 

負けた人間は多くを語らない

何を言っても泣き事とか
言い訳にしか聞こえない

其の勝負の鉄則を守り僕等は皆 

黙り込む

此の場所は流刑囚により開拓された街だ

凶悪な暴行犯や殺人犯 

何度も犯行を積み重ねた札付きだ

囚人の多くは刑期を終える事無く
此の場所に骨を埋めた

僕等は此

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虚飾に満ちた街の空白 《詩》

虚飾に満ちた街の空白 《詩》

「虚飾に満ちた街の空白」

不調和な思想の中で僕はぼんやりとした
不明確な空白を抱えていた

そしてまた彼女も別の空白の中に居る

薄っぺらな虚飾に満ちた街の中

何処にも居場所を
見つけられないでいる君を見た

なんとなく僕には其れがわかった

僕等は二十一世紀的では無い
まわりくどい会話を交わした

僕等の抱えた空白を静かに

重ね合わせる事が出来たなら

少なくとも僕は其れを望んでいた

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第三世界の七面鳥 《詩》

第三世界の七面鳥 《詩》

「第三世界の七面鳥」

太陽が奇妙な世紀末的な紫煙に
包まれている

第三世界の始まりと 紫炎の暴動

僕は貝殻に耳を寄せ

波の音を聴きながら眠る

朝が来たら出かけなくちゃいけない

七面鳥の五つ目の顔は
インテリジェントな眼鏡をかけていて

綺麗に髭を剃り整髪している

ダークな色合いのスーツに
真っ白な襟をしたシャツを着ていた

六つ目の顔はトレーニングウェアを着て

朝の太陽の下でジョギ

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ZOO 《詩》

ZOO 《詩》

「ZOO」

まだ眠たげな瞳の新しい太陽だけが
空にある 雲ひとつない

作り損ないの風景に剥き出しに

なった自我を意識の中に見た

深い孤立のうちに時が過ぎた
特殊な大陸の様だ

世界で一番古い魔法を使う毒蛇と

進化の過程で太陽の炎に焼かれて
孤絶した人々の影が揺れていた

中華街にあるレストランでは

趣味に合わない服を着せられて

無理に引っ張り出された様な
不機嫌なウェイトレスを

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無色の遺書 《詩》

無色の遺書 《詩》

「無色の遺書」

僕等の街には
太陽の光が惜しげも無く降り注ぎ

緑の丘の斜面には朝霧がたなびく

透けて見える様な薄い雲が

空には幾つか浮かんでいた

人生の指導者と呼ばれる人が

よくとおる声でしっかりとした
語尾で何かを話している

僕はぼんやりと芝生に降る

紫外線の筋を見ていた

人々は自分をすり減らす術を集団で

探求し指導者の言葉に相槌を打つ

彼等は皆 無口だった 

きっと自分

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