見出し画像

二月の残酷な月 《詩》

「二月の残酷な月」

僕等にはロマンスへの回帰が
必要とされている

二月の残酷な月 

愚行の後悔を映し出し
人の心を腐敗させてゆく

それはいつ果てるとも知れない
無力さとして

夜空を覆い尽くしていた


その場しのぎの礼儀が
愛想笑いをして通り過ぎてゆく

独善的で幸運に恵まれた女性

ロマンスや想い出を
もたらしてくれるかもしれない危険

珈琲に砂糖を入れないなんて
アナーキストだわ

そう言って砂糖壺を引き寄せた
彼女の指先には指輪が光っていた

お金と服とセックス それだけ

哀しい女でしょう

彼女は僕の目を見てそう言った

僕は短く微笑んだ

彼女はひやりとした鼻を
僕の首筋に押し付け

暗闇の中で熱い吐息を奏でる

ロマンス 僕は心の中で小さく囁く


明日の夜も会えるかい 
そう訊いた僕に

彼女は 貴方には会えないわ
静かに答えた

貴方には… 僕の頭の中で 
その言葉が繰り返す


そして彼女はドアを閉めた

そのドアは閉めると自動的に
ロックされる

機械的な金属音が響く音を聴いた

タキシード色の夜に
ぼんやりと浮かぶ二月の月は 
やたらと冷たく輝いている

そして音も無く溶け落ちる

いいなと思ったら応援しよう!