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自選集:詩

35
密室で延焼する憎悪と、古戦場に揺れる花と。
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短歌10首 女言う「気持ちは一つ」拍手沸く 「余分」は埋めた 死体のように

短歌10首 女言う「気持ちは一つ」拍手沸く 「余分」は埋めた 死体のように

『学級会』

 

女言う。「気持ちは一つ!」拍手沸く。「余分」は埋めた。死体のように。

「皆仲良し!」 えっ?ショータイム? その話 美談は談合 鳴り出すtango

「助けたい!」作り笑いで支援して支配したいね「下」の人をね

大変ね不安の反動中傷の薄ら笑いが君の人生

全方位迫りくる壁コンクリの向こうが見たい瓶詰のSUN

村を出て市場を離れ歩く道敵はいないが仲間もいない

舞台上あの子の

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死因

死因

あんなのは勝利者たちが美化した仮初の物語
最も肝心なところが割愛されている 騙されるなよ

いつだって頼りになるのは自分の力だけ
しかしそれには生まれつきの上限が重く圧し掛かる

助けを得られるのは魅力という最強の力があるから
美談とは臭いものに蓋をした上での談合だ

他人と競争して勝たなければ価値にならない仕組み
当然金にもならない 余計なものは燃えないゴミ

つまるところ全ては力学的なやり取り

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短歌11首 交差点みな顔の無い人の群れ僕はさまよう「陽炎の街」

短歌11首 交差点みな顔の無い人の群れ僕はさまよう「陽炎の街」

短歌を作るのはほぼ初めて。
俵万智「サラダ記念日」を読んだのをきっかけに。
楽しかったです。31音に自分の世界を出現させられるところとか。

「陽炎の街」

交差点みな顔の無い人の群れ僕はさまよう陽炎の街

奴ら言う「敏感過ぎ」と「急げよ」と 屍人の行進向かうは何処?

「あいつ馬鹿!」タイムラインに愛はないみんな何かと戦っている

ガチャ回し容姿と才能Cランク 狩られて踏み台勇者パーティの

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十四歳で立てた中指を

十四歳で立てた中指を

ただ中指を立てるだけなら十四歳から可能だが
その中指をさらに十四年後も下ろしてないのは誰にでも出来ることじゃない

皆がそれぞれの落としどころを見つけていく中で
その中指がつまずきの証に思えて暗いpocketへ隠したくなってくる

二十歳までには死ぬって言ってたあいつに久々に会ったらさ
結婚してて子どもの話なんかしてやがんの

そんで「お前は丸くなるどころが会う度に尖っていくな」なんて言葉を
もう

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殺さなければ生きていけない

殺さなければ生きていけない

「今日からセールなんですよ! 今日から!」

店頭に置かれすぎて日焼けした冬用コートを売ろうとする爺さん

「いや、間に合ってるんで……」

瞬間、捕食者と獲物に分かれたかのような感覚がなんとも

「本当に安いんだよ! 若い人にも良く似合うよ!」

向こうも仕事なのはわかるけどさ

でも 自分の足でこの通りを歩いて

シャッターが目立つこの商店街を抜けた頃には

大型ショッピングセンターの灯りがど

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skit talk - Internet idol 2019

skit talk - Internet idol 2019

「わたしのところまで直接言いに来るのはまだいいんだよ。別に効いてないし。でもさ、わざわざ5chにスレ立てて悪口書き込むのはやめてくれない? 本当にそうなのかもって思っちゃう。そんなに嫌われることしたっけ」

127:ブスなのに調子に乗ってるところがむかつく
128:だったらわざわざ幸せアピールすんなよ。金とか男の話とかさ
131:しらねえよ

「いいじゃん別に! プロとしてやってるわけでもないし、

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ほんとあの頃が懐かしい(少年時代)

ほんとあの頃が懐かしい(少年時代)

遊戯王ならば ブルーアイズ
放課後のベンチで デュエルした小学生

脳裏に海馬浮かべ モンスター召喚
すると発動する トラップカード と 友達のしたり顔

思わず再戦を希望した 夕暮れ
同時に鳴り出したチャイムが17時を 告げたね

体育はちょっと苦手で いつも憂鬱
運動会の50メートル走はビリで フィニッシュ

でも水泳なら50メートルでも泳げたね

いとこはクロールで記録残してて
そのことに血

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駅のホームの黄色い線の内側で踏みとどまる

駅のホームの黄色い線の内側で踏みとどまる

昨晩のすき屋の牛丼の持ち帰りの容器と 発泡酒の空き缶だけを片付けて
散らかったテーブルも床も台所も どこかしもがとりあえずの先送りで

何を間違ったのか立ち止まって考える暇もないままに
慌ただしく家を出る朝だけれど

どんなに働いても前に進むどころか後退しているかのような感覚
それでも駅のホーム 黄色い線の内側で踏みとどまる

毎日のように行われるこの闘い 負ければ死 勝っても報酬は0円
単なるエ

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オンライン上の思想戦争

オンライン上の思想戦争

オンライン上で繰り広げられる 思想戦争
昨日今日も誰もが人集めに 必死の形相

「良かったらフォローをお願いします!」

冒頭から読者の脳内へ 忍び込ませていく共感
読み進めるにつれ 高まっていく内なる賛同 と衝動の高揚

でもそのあとに求められるのは やっぱり購入
タダより高いものはない やっぱり交換

みんな知ってる画面の向こう側の人間 と
 自分 は違う人間
だということは 忘れてはならない

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寂しいから余裕がなくなる。余裕がないから嫌われる。嫌われるから寂しくなる。

寂しいから余裕がなくなる。余裕がないから嫌われる。嫌われるから寂しくなる。

寂しいから弱くなる。寂しいから頑張れなくなる。寂しいから尊重できない。口だけになる。

寂しいからどこまでも譲歩してしまう。寂しいから都合のいい存在にしかなれない。つけあがらせる。どこかへ行ってしまうのを見送るだけ。

寂しいから自分の価値が下がる。寂しいから鍛えられない。寂しいから進めない。弱さで人を惹きつけられる存在に一番嫉妬してる。崩れていく。

寂しいから勝たないといけない。でも寂しいから

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皆、去っていった。僕だけが大人になれなかった。雨の日。

皆、去っていった。僕だけが大人になれなかった。雨の日。

本当はわかっていた。どうにもならないし、どうにもなっていなかったことに。

周りを見渡すと劣等感しかない。すげー優秀じゃん。この人らは日々鍛錬し、積み重ねてきた人なんだなということが見て取れる。

器用だなー、小気味よくテキパキこなしていくなー。安定感あるなー。それだけ繰り返してきたってことなんだろうなー。

自分はゴミだなー。少し仲良くしてくれる人がいるのは、僕が奇抜な行動に出て悪目立ちしている

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それでも進んでいきたい、薄皮でくるまれたような淡い世界を

調子に乗っていたのか また転んでしまった

格好つけてみたけど まるで似合わなかった

身分不相応な言葉たち 慌てて引っ込めた

新たに書き始めた それがいま見せてるこれだ

そこの君、少しだけ聞いていってくれよ 開いてみてくれよ

……じゃあ、準備はOKかな? 始めるとしようか

何か悲しいことがあったとする

そんなとき君ならどうする?

僕はいつもこうしてる その方法を示そうと思う

まず必

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罪深き好意(行為)

罪深き好意(行為)

誰かに拒絶される度に考えてしまう

好意を持つことって悪いことだったのかなと

いや、まあ、自分の場合は、そうか……

さらに慎重になる

もう諦めたくなる

二度と勇気を出したくなくなる

今までのことも全部勘違いだったのか

驕っていただけなのかという考えが頭から離れなくなる

諦めるごとに老いていくのかもしれない

他人の失敗をあざ笑っているほうがずっと安全だ

誰かみたいに無神経にはなれそ

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かたなきず

野武士の一振りで右腕を切断された

開いた断面から鮮血が噴き出す

彼は下卑た笑みを浮かべてこちらを一瞥し

捨て台詞を吐いて去っていった

これが、負けたくないという一心で臨んだ戦いの幕切れだった

蝉のけたたましい声だけが鳴り響いていた

辺り一面に

残された身体と右腕

地面には武士の誇りの欠片

とにかく安全なところを探す 隠れる

間に合わせの応急処置をする

どうなるかわからないが傷

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