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現代社会に蔓延する「孤独」の正体――ジョン・T・カシオポ著『孤独の科学』を読み解く

現代社会は、情報技術の発展により、かつてないほど人々が繋がっているように見えます。

しかし、その一方で、深い孤独感に苛まれる人が増えているという パラドックスが発生しています。

SNS 上での交流は、一見、活発に見えても、表面的な繋がりに終始し、真の心のつながりを欠いていることが多いのかもしれません。


孤独の科学:ジョン・T・カシオポの洞察

ジョン・T・カシオポは、シカゴ大学心理学教授であり、社会神経科学の分野における世界的権威です。

彼は、長年にわたり「孤独」の研究に取り組み、その影響力を科学的に解明してきました。

その集大成ともいえる著書『孤独の科学』は、孤独の実態、その影響、そして克服方法までを、心理学、脳科学、社会学、進化生物学など、多岐にわたる分野の知見を総合して深く掘り下げています。

孤独 vs 孤独感:健康を脅かす真の敵

本書でカシオポは、「孤独」と「孤独感」を明確に区別しています。

「孤独」は物理的に一人でいる状態を指すのに対し、「孤独感」は主観的な感情であり、周囲に人がいても感じることがあります。

そして、健康に悪影響を及ぼすのは、物理的な孤独ではなく、この「孤独感」であると断言します。

孤独感は、まるで体内に潜むウイルスのように、私たちの心身を蝕んでいきます。

この本では、孤独感が、うつ病、不安障害、心血管疾患、認知症、免疫力の低下など、様々な疾患のリスクを高めることを、具体的な研究データに基づいて示しています。

例えば、ある研究では、孤独感を感じている人は、そうでない人に比べて、早期死亡リスクが26%も高いという結果が出ています。

さらに、孤独感は睡眠の質を低下させ、肥満や糖尿病のリスクを高めることも指摘されています。

孤独感は、単なる気分の問題ではなく、私たちの健康を脅かす深刻な問題なのです。

孤独感はなぜ生まれるのか?進化論的視点からの考察

では、なぜ私たちは孤独感を感じてしまうのでしょうか?

カシオポは、人間は社会的な生き物であり、進化の過程で「つながり」を求めるようにプログラムされてきたと説明します。

社会的なつながりは、生存と繁殖に不可欠であり、孤独はそれを脅かす危険信号として機能してきたのです。

現代社会では、物理的な孤独は減りましたが、SNS上での表面的な繋がりは、真の社会的なつながりを代替するものではありません。

そのため、多くの人が、つながりに飢え、孤独感を感じているのです。

孤独感の蔓延が社会に及ぼす影響

孤独感は、個人の問題にとどまらず、社会全体にも深刻な影響を及ぼします。

孤独感は、自殺、犯罪、格差などの社会問題とも密接に関連していることが指摘されています。

近年、多くの国で孤独対策が重要課題として認識され、政府や自治体による様々な取り組みが行われています。

例えば、イギリスでは「孤独担当大臣」が設置され、地域社会におけるつながり作りを促進するための政策が進められています。

しかし、孤独感を克服するための最も重要な鍵は、個々人の意識と行動にあります。

カシオポは、本書の中で、孤独感を克服するための具体的な方法を提示しています。

  • 質の高い人間関係を築く
    表面的な付き合いではなく、心から信頼できる人と深い関係を築くことが重要です。

  • 地域社会に参加する
    地域活動やボランティア活動に参加することで、共通の目的を持つ人々と繋がり、社会に貢献することができます。

  • ペットを飼う
    ペットとの触れ合いは、孤独感を癒し、ストレスを軽減する効果があります。

  • マインドフルネスを実践する
    瞑想やヨガなどを通して、自己認識を高め、心を穏やかに保つことができます。

これらの方法を実践することで、孤独感を克服し、心身の健康を取り戻すことができるでしょう。

『孤独の科学』が私たちに問いかけるもの

『孤独の科学』は、現代社会における「孤独」という問題を深く理解し、その解決策を探るための必読書です。

この本を読むことで、「孤独感」のメカニズム、「孤独感」が心身に及ぼす影響、「孤独感」を克服するための方法を理解することができます。

そして、私たち一人ひとりが、孤独について真剣に考え、自分自身と周りの人たちとのつながりを大切にすることの重要性を改めて認識するきっかけとなるでしょう。

あなたは、今、どんな繋がりの中で生きていますか? そして、どんな繋がりを求めていますか?

【編集後記】
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