マガジンのカバー画像

中学受験について

27
中学受験について、重要ポイントを解説しています。
運営しているクリエイター

記事一覧

中学受験の意味と意義

中学受験の意味と意義

 4月になると、どの小学校でも新学年が始まります。
この春6年生になった小学生は、今気分も新たになっていることでしょう。しかし今年の中学受験は、もう既に始まっているのです。

 どこの塾でも、2月が新学年スタートの時です。
2月1日から、東京の御三家を始めとする中学受験が始まるからです。
その受験が一段落した2月10日頃から、新6年生としての授業が始まっているのです。
算数では「整数論」「規則性」

もっとみる
過去問と中学受験

過去問と中学受験

長年にわたって、受験対策の指導をしていて感じることは、
「過去問に触れれば触れるほど、講師としての職能力が上がる」
ということです。

今から20年ほど前、生徒数が千人を超える大教室に勤務していた時のことです。いつものように、机の上にドカッと20冊ほど過去問を並べていると、すぐ隣に座っていた副教室長がびっくりしたような顔をして、こう言いました。
「そんなことをしている人を初めて見た。自腹を切って過

もっとみる
中学受験のための良い学習習慣づくり

中学受験のための良い学習習慣づくり

ゴールデンウィークの時期になると、中学受験対策の塾では何らかの特別講座を設置します。こういう時は、大抵ご父兄から、このような講座は受講した方が良いかと言う質問を受けます。

このような講座は万人向けであるため、必ずしもその子にとっての弱点補強になるわけでもなく、第一志望の学校の対策になるわけでもありません。それでも学習の習慣づくりとしては良いと言えると思います。

ゴールデンウィークに限らず、世の

もっとみる
中学受験は知的な遊びである

中学受験は知的な遊びである

中学受験の指導をしていると、どうしても成績の伸びない子のパターンというのがいくつかあります。そのうちの1つに真面目で伸びない子というのがあります。

塾の宿題は全部やっています。土曜特訓や日曜特訓も全回出席してます。ゴールデンウィーク講座やお盆特訓もやってます。正月特訓もやってます。でも成績が伸びないのです、どうしたら良いのでしょう、と言う御父兄の相談です。

こういう御父兄に共通なのは、これだけ

もっとみる
中学受験の理科は言葉の学習から

中学受験の理科は言葉の学習から

中学受験の理科では水溶液の問題はよく出題される分野の1つです。酸とアルカリの中和反応、気体の発生、そして最近ではメタンガスの燃焼の問題も出題されています。

都内の男子校などでは理科全体の配点が算数・国語の半分(50点)しかないケースも多く、どの学校も力学と化学の頻度は高いのです。

大学受験で物理と化学が得意でないと、理系大学の合格率が下がるのではないかという思惑がはたらいているようにも思います

もっとみる
エジソンとニュートンから見る中学受験のロールモデル

エジソンとニュートンから見る中学受験のロールモデル

中学受験の進学塾に勤務していた頃、エジソンの伝記を課題図書として、内容を授業で問うという仕事をしていました。

エジソンは疑問に思った事は何でも問わずにはいられないという性分で、学校の先生を質問攻めにして、学校の先生はもてあまし、この子は低能児に違いないと小学校中退を余儀なくされました。

エジソンの母が元々、中学校の先生をしていたため、エジソンを教育しました。父が牧師をしていたために厳格で、くだ

もっとみる
【中学入試問題】コレラから見る感染症の現状

【中学入試問題】コレラから見る感染症の現状

平成29年度の海城中学入試で「コレラ」が出題されました。日本細菌学の父と呼ばれた北里柴三郎はコレラの病原菌を発見したドイツのコッホの教えをドイツで受けていました。コレラは、十九世紀に世界中で流行し数千万人の死者を出したと言われています。

コレラは紀元前からインドのベンガル地方だけで流行していた風土病であったのが1817年、インドの全土で突然大流行をはじめ、十九世紀の終わりに世界中で爆発的に感染者

もっとみる
中学受験のツボ 「速さ」をどう扱うか 厚い教材の罠

中学受験のツボ 「速さ」をどう扱うか 厚い教材の罠

中学受験の算数は、図形と割合、速さをマスターすれば安定的に5割から6割位の得点を取れるようになります。

図形だけで、3~4割の出題率があるのですから、速さの攻略は得点率上昇の重要な鍵となるのは明らかです。しかしながら、わかっていても中々うまくいかないのが入試の現実です。

私の知る限り、速さが得意で得点源になった生徒は、まず見たことがありません。好きな子供はいますし速さをやりたがる子はいます。し

もっとみる
中学受験の社会は暗記科目ではない

中学受験の社会は暗記科目ではない

社会を教えていると「扇状地」と「三角州」の区別がつかない子供がいます。扇状地も三角州、三角州も三角州なのです。三角形に見える地形は全て三角州なのです。

なぜこのような事態が起きるのか、原因はいくつかあります。

まず第一は社会は暗記科目であるとする、大人のまちがった通念、第二に形状について似て非なるものと注意して教えない点、第三に、自然科学的な構造性を教えない点です。

地理を教える時に科学的な

もっとみる
中学入試、環境問題の価値観は人間中心主義ではない

中学入試、環境問題の価値観は人間中心主義ではない

東京大学の文系の現代国語の問題では、100字から120字の論旨要約問題が出されています。

最近の例では近代社会は能力主義の名のもとに格差が確定化し自由、平等とは有名無実化してしまった、という内容のものが出題されていました(2020年度)

私立中学でも100字程度の要約問題を必ず出題する学校はいくつかありますが、首都圏では江戸川取手中学がその代表です。この学校は医学部進学の教育目標を掲げており、

もっとみる
中学受験「アルキメデスの原理」 浮力と密度の関係性を原理から考えると解りやすい

中学受験「アルキメデスの原理」 浮力と密度の関係性を原理から考えると解りやすい

「アルキメデスの原理」という有名な原理があります。

というものなのですが、伝説によると、古代ギリシャ時代、国王ヒエロン二世から「王冠が純金なのか不純物入りか」確認するように命令を受けていたアルキメデスが、お風呂に入っていた時に、あふれた水の流れを見て閃いた原理であるとされています。

その原理を発見した時に、アルキメデスが言った有名なセリフが「ユアリーカ!ユアリーカ!」(解ったぞ!解ったぞ!)だ

もっとみる
中学入試最前線 夏は本当に天王山か 子供を潰さないための夏期講習とは

中学入試最前線 夏は本当に天王山か 子供を潰さないための夏期講習とは

六月の声を聞くと塾の夏期講習の受付が始まります。一日二十四時間、約四十日間に渡って塾主導で管理できるので塾にとっては書き入れ時です。

自然、夏は天王山だと連呼し、力を入れます。ところが子供の側からすればこれは、負担も大きいのです。今の夏の暑さは異常です。35度を超えて体温を上回ることなど我々の子供の頃はありえなかったのです。関東では30度を超えるともう暑い暑いと言っていたくらいなのですから。
 

もっとみる
鷲田清一〈顔〉の現象学 【中学入試の最前線】

鷲田清一〈顔〉の現象学 【中学入試の最前線】

哲学者である鷲田清一さんは、今、時の人です。
中学入試、高校入試、大学入試の全てにおいてよく出題されています。
中学入試でもよく出されているため塾の公開模試でも出題されるようになりました。

攻玉社中で平成26年(2回)入試で出題された「〈ひと〉の現象学」についてみてみましょう。

西洋哲学はすべて「存在とは何か」という所から始まります。
「存在論」と言うジャンルは、古代ギリシア・ローマの時代から

もっとみる
中学入試の現場から 立体の切断は計算力ではなく眼力である

中学入試の現場から 立体の切断は計算力ではなく眼力である

巣鴨中学で算数選抜の入試が始まりました。(2019年より) 1科目だけの一芸入試というのは昔からありました。しかし、学校によっては長く続かなかったりして評価は定まっていないようです。今後の推移を注目していきたいところです。

もともと巣鴨中学は解答に答えだけではなく、式の記述を①の(1)から全問要求するので有名な学校でした。答えだけ合っていれば良いとするのではなくプロセスの正当性を要求してきたので

もっとみる