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中学入試最前線 夏は本当に天王山か 子供を潰さないための夏期講習とは

六月の声を聞くと塾の夏期講習の受付が始まります。一日二十四時間、約四十日間に渡って塾主導で管理できるので塾にとっては書き入れ時です。

自然、夏は天王山だと連呼し、力を入れます。ところが子供の側からすればこれは、負担も大きいのです。今の夏の暑さは異常です。35度を超えて体温を上回ることなど我々の子供の頃はありえなかったのです。関東では30度を超えるともう暑い暑いと言っていたくらいなのですから。
 
 更にコロナ禍が追い打ちをかけます。昨年(2020年)あった事ですが、一学期ほとんど授業が無かった学校が遅れを取り戻すため8月に入っても登校させました。夏休みはお盆の頃の一週間程度で、また学校に通わなくてはならなかったのです。

しかし、塾は今更夏期講習の予定を変えるわけにはいきません。九月以降のスケジュールがびっしり詰まっているからです。夏は夏でカリキュラムを熟さないと後がつかえているのです。
 
 子供は朝から学校に通い、昼の2時から3時の一番暑い時間帯に塾に向かわなくてはなりません。それから夏期講習なのです。カリキュラムは登校が無い時の普通の夏期講習と同じ内容です。どれだけ疲労が溜まるか、想像がつくというものです。

私が現役の講師で夏期講習の授業を担当していた頃も、子供たちにあまり無理をするなと声をかけていました。もちろん夏は天王山などとは決して言いません。

一日5~6時間の授業でも結構きついので体調管理を優先させたのです。それでも必ずクラスに1人くらい熱を出す子供がいます。それも39度を超える高熱で1週間休む子供もいるのです。

復帰しても1週間はボーっとして勉強どころではありません。結局前後2週間あまり何もできなくなるのです。これで夏休みの三分の一を使ってしまうくらいならば、いい加減にダラダラと二週間やっていた方がよほど効果的です。継続こそが力なりなのです。
 
 そもそも天王山という言葉は大学受験生のために予備校が言い出したことです。浪人生であれば、相当過激な事をしないと優秀な現役の高校生に負けてしまいます。気が緩んで遊びモードにならないためにも、天王山と連呼して一日八時間以上勉強させないといけないのです。
 
 七月八月に無理をした小学生は九月にへばりが来て成績が急落します。十一月に成績を落とした子供は危険です。こうなるとほとんど間に合いません。

本当の天王山は九月、十月、十一月なのです。十一月の公開テストで自己ベストの成績を出した生徒は一月、二月に良い結果を出します。ですから六月の段階で、「本当の天王山は十一月なので夏は無理するな」、と言わなくてはなりません。

根性論だけで通用するほど中学受験は甘くないのです。十二歳の体力に十八歳の知性を要求し、大人の知恵と計算がいるのです。これが中学受験必勝の夏期講習の利用法なのです。

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