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【中学入試問題】コレラから見る感染症の現状

平成29年度の海城中学入試で「コレラ」が出題されました。日本細菌学の父と呼ばれた北里柴三郎はコレラの病原菌を発見したドイツのコッホの教えをドイツで受けていました。コレラは、十九世紀に世界中で流行し数千万人の死者を出したと言われています。

コレラは紀元前からインドのベンガル地方だけで流行していた風土病であったのが1817年、インドの全土で突然大流行をはじめ、十九世紀の終わりに世界中で爆発的に感染者が広がる「パンデミック」現象を何度も起こしたのです。

そのきっかけは、インドを占領するためにイギリス軍が各地を動き回った事が原因でした。イギリス軍がインド中に感染を広げ、イギリスの船によりインドと他の地域との貿易が盛んになった事で、インドのコレラが外に「持ち出される」ことになった、と海城中学の入試問題本文に書いてあります。

 新型コロナウイルスの感染が国内で最初に報道されたのは2019年(平成31年)の12月31日でした。まるで新型コロナウイルスのパンデミックを予見したかのごとく、コレラのパンデミックを入試問題に出題したのです。

中学入試ではよくあることですが、結核や天然痘の感染症の問題は麻布中学でも平成14年に出題されています。女子学院中学校でもハンセン氏病が何度か出題されています。

感染症の問題は中学入試で定番と言えるでしょう。地球温暖化の影響により熱帯の風土病が世界中に広がるということは、これからもあるかもしれません。

 インドでは今、一日に40万人を超える感染状況で、アメリカに次いで世界第二位で変異種が猛威を奮っています(2021.5.8現在)

ヒンズー教の宗教行事が重なったことが感染拡大の原因だとテレビでは報道されていますが、本当の原因は貧困とそれにともなう衛生状況の悪化ではないかと思います。特にインドは水についての衛生観念が希薄であることが原因であると思えてなりません。


当時のロンドンでコレラが爆発的に流行したのはなぜか、180字以内で説明せよ

というのが平成29年の海城中の入試問題でした。

コレラの流行ルートや当時のロンドン市民による証言、首都水道法の文言やロンドンのある水道会社の取水口を示した絵まで載せてあるので書くべき内容は明らかです。トイレの汚水が水道水に入り込んで、コレラ菌が水道水を通って広がっていたのです。

 今のインドも同じ状況でしょう。特に農村部では上下水道が完備されているとは思えません。それでもテレビではインドの上下水道の現状に触れている報道は全くありません。

しかし、平成29年度の入試問題を解いて海城中に合格した生徒達はテレビ報道の描かれないウラを見抜いているに違いありません。上下水道の完備が発展途上国の大きな問題であることを認識していれば、その後の人生観に大きな影響を与えるでしょう。

 このような問題に子供のうちに触れる事が、人生における中学受験をする意味と意義なのです。

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