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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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2023年4月の記事一覧

水深800メートルのシューベルト|第531話

「結局、アシェルに正直に打ち明けたんだから、いいじゃない。許してくれるよね? 私だって、…

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水深800メートルのシューベルト|第530話

僕は裏切られた、彼女は僕を犯人に仕立て上げようとした。いや、そんなはずはない。そう呟いて…

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水深800メートルのシューベルト|第529話

「そ、そこの庭に埋めるのはどう?」  僕は、近くに捨てるしかないと思ったが、メリンダは即…

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水深800メートルのシューベルト|第528話

 僕は、彼女(メリンダ)の手を振りほどいて言った。 「無理だよ」 「なによ! 私を連れ出し…

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水深800メートルのシューベルト|第527話

「シッ!」僕は、自分の唇に指を当てた。 「アパートの人に聞かれちゃうよ」 「こんなボロ家に…

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水深800メートルのシューベルト|第526話

「びょ、病院に連れて行こうよ。誤って銃が暴発したって言えばいいよ。それに、助かるかもしれ…

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水深800メートルのシューベルト|第525話

「ねえ、指が止まらなくて……、銃がママを……」  僕は現実を見たくなくて、メリンダに構っていたが、ここにいつまでもいられないという思いが、キッチンの方へ眼を戻す力になった。  うつ伏せのおばさんを見ると、血まみれの背中があったが、首や足から見える肌は、まだ生きているような色合いだと思った。しかし、体は微動だにせず、呼吸をしている様子もなかったので、段々とただの服を着た重たい荷物のように見えてきた。 「メリンダが撃ったの? 僕が持っていた銃で?」  彼女は、小さく「ええ」と

水深800メートルのシューベルト|第524話

「ア、アシェル……。私……どうしよう。とうとう……、引き金を弾いただけなのに……」  彼…

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水深800メートルのシューベルト|第523話

 すると、ぱっと電気が点いた。僕は眩しくて思わず顔を背けた。すると目の前に、赤黒い粘っこ…

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水深800メートルのシューベルト|第522話

(メリンダが)泣いているのかと思い、僕は、暗闇に向かって声をかけた。 「メリンダ、僕だよ…

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水深800メートルのシューベルト|第521話

 誰もいないかもと思うと、かえって僕の気持ちは落ち着き、ドアを拳の骨で二回叩いた。長く間…

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水深800メートルのシューベルト|第520話

 メリンダのアパートメントは、電気がどこにも点いておらず、巨大な墓石のように見えた。彼女…

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水深800メートルのシューベルト|第519話

「もう、やめなよ。子ども相手にさ」  近くにいた女の人が、その酔っ払いの腕に自分の腕を絡…

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水深800メートルのシューベルト|第518話

 僕は、雪山の店先でグラスを片手に大騒ぎするおじさんたちの前を、足早に通り過ぎようとした。その近くにはメリンダとは違う女の人が、暗闇に光る血のような色の口紅をつけて、酔っ払いを見ていた。 「おい、坊主。子どもがこんな時間にうろちょろするんじゃねえ!」  ドスのきいた声に、僕は飛び上がりそうになった。横を見ると、酔っ払いの中でも、ひときわ大きく、首まで真っ赤にお酒で染まった男が、立っていた。僕は、恐くなったが、メリンダの家に向かう道は、目の前の道しかない。彼をやり過ごそうと笑