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水深800メートルのシューベルト|第531話

「結局、アシェルに正直に打ち明けたんだから、いいじゃない。許してくれるよね? 私だって、誰かに罪を押しつけたくなんかなかったし、実際、そうしなかったでしょう?」
 僕は、どう答えていいかわからず、黙ったままでいた。これからどうするべきか、彼女に自首を促したほうがいいのか、メイソンにいつ銃を返そうか、考えなければいけないことが一斉に頭の中に押し寄せてきて、僕は混乱していた。


 彼女は、どうやらそんな僕が怒っていると勘違いしたようだった。
「ねえ、機嫌直してよ。君は男の子でしょう。警察に突き出すのをやめたのよ。それでも不満があるの?」
 彼女は怒ったような口調で言ったが、どこか自身なさげだった。

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