僕は裏切られた、彼女は僕を犯人に仕立て上げようとした。いや、そんなはずはない。そう呟いてみたが、それも遠い世界の話のようで、実感が湧かなかった。
「でも、できなかった。最初はアシェルに頼んで始末してもらおうと思ったの。それができそうにないと思って、せめて……。だって、逃げられなかったのよ」
彼女は、憎しみを込めた目を死体に向けていた。僕は、彼女の手を掴もうとしたが、できなかった。
「だからって、僕が捕まってもいいって言うの?」
目に涙が溜まっているのを感じながら、言った。
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