水深800メートルのシューベルト|第1187話
決意を固め、拳銃を枕の下から引き抜いたとき、肘にコツンと固い感触があった。それはベッド脇に置いてあったおもちゃのピアノだった。プラスチックの鍵盤に貼ってあった音符を示すシールはとっくの昔に無くなり、その跡の粘着物の残骸だけが汚れとして残っていた。僕はその汚れた鍵盤の間にある黒い鍵盤をそっと撫でてみる。ああ、これを一度も弾かなかったなあ。小さい頃に何度も練習して上手くなった時の記憶が甦ってきた。しかし、それも無駄になる。潜水艦の存在を秘匿する意味は無くなり、逆に音を出して水上