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毎日ちょっとだけ連載小説|水深800メートルのシューベルト

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連載で小説を始めてみました。一話をかなり短く(200文字くらい)毎日ほんの少しずつ進める予定です。 読んで頂けると嬉しいです。
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水深800メートルのシューベルト|第1話

       第一部        (1)  ドンッ!   ロバートに胸ぐらを掴まれ、居住…

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水深800メートルのシューベルト|第1192話

僕は、その表情に戸惑った。もう一度言われた通りに演奏したら、馬鹿にするつもりだろうか? …

吉村うにうに
22時間前
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水深800メートルのシューベルト|第1191話

「だが、もっと滑らかに弾きやがれ。タン・タ・タン! じゃなくてよ。ターン、ター、ターンー…

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水深800メートルのシューベルト|第1190話

「アシェル、そこで何をしてやがる?」  その声には、怒りや嘲りの調子が含まれていないのが…

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水深800メートルのシューベルト|第1189話

 あいつにこの曲を聞かせてやろう。この眠りに就く前の曲を。それで、僕に襲いかかってきたら…

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水深800メートルのシューベルト|第1188話

ハッチの向こうでは、ドンドンと壁を叩き続ける音がする。遅めだが、一定の規則正しい音。あれ…

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水深800メートルのシューベルト|第1187話

 決意を固め、拳銃を枕の下から引き抜いたとき、肘にコツンと固い感触があった。それはベッド脇に置いてあったおもちゃのピアノだった。プラスチックの鍵盤に貼ってあった音符を示すシールはとっくの昔に無くなり、その跡の粘着物の残骸だけが汚れとして残っていた。僕はその汚れた鍵盤の間にある黒い鍵盤をそっと撫でてみる。ああ、これを一度も弾かなかったなあ。小さい頃に何度も練習して上手くなった時の記憶が甦ってきた。しかし、それも無駄になる。潜水艦の存在を秘匿する意味は無くなり、逆に音を出して水上

水深800メートルのシューベルト|第1186話

規則では軍法会議は間違いないだろうが、それは無事に救出された場合の話だ。助かった場合は、…

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水深800メートルのシューベルト|第1185話

それならセペタを助けるために、というのはどうだろう? しかし、自分は正義の人ではない。か…

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水深800メートルのシューベルト|第1184話

 僕は、顔で枕を強く抑え込んだまま、その下で、弾倉を再びシグ・ザウエルの本体へそっと押し…

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水深800メートルのシューベルト|第1183話

 顔をそっと上げて、目で周囲を確認する。僕を見ている者がいないのを確認すると、グリップ脇…

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水深800メートルのシューベルト|第1182話

 僕は、寝返りを打って腹這いになり、何気なさを装って枕の下に手を入れ、そこに忍ばせていた…

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水深800メートルのシューベルト|第1181話

「おい、お前。もう死んじまったのか? それとも会話禁止で性根が腐っちまったのかよ。お前の…

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水深800メートルのシューベルト|第1180話

一旦喧嘩が収まっても、数時間後には怒鳴り声が始まる。完璧に規則違反だが、彼はお構いなしだった。一人で怒鳴り、僕らの酸素を無駄遣いしていた。きっと自分の死を悲観して自暴自棄になっているんだ。そうとしか、思えなかった。もしかして、相手が挑発に乗ったら、それを口実にそいつを殺して……、いや、いくらなんでも、合衆国海軍の軍人がそんな……。いや、人が一人亡くなれば、その分酸素の分け前が増える。彼の緑の目はカッと見開いていて、結膜には血管がひび割れのように走っていた。  それとも、乱闘