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水深800メートルのシューベルト|第525話
「ねえ、指が止まらなくて……、銃がママを……」
僕は現実を見たくなくて、メリンダに構っていたが、ここにいつまでもいられないという思いが、キッチンの方へ眼を戻す力になった。
うつ伏せのおばさんを見ると、血まみれの背中があったが、首や足から見える肌は、まだ生きているような色合いだと思った。しかし、体は微動だにせず、呼吸をしている様子もなかったので、段々とただの服を着た重たい荷物のように見えてきた。
「メリンダが撃ったの? 僕が持っていた銃で?」
彼女は、小さく「ええ」と言った。さらに銃をすり替えた理由や、自分のママを射殺した理由を聞きたかったが、それよりも、メイソンから借りた銃ということを思い出して恐ろしくなった。メイソンや彼の兄貴が仕返しをするかもしれない。