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短編小説

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【小説】僕と絵描きとゴールデンレトリバー

【小説】僕と絵描きとゴールデンレトリバー

第二回あたらよ文学賞応募しましたが、ダメだったやつです。
他の方の講評を読んで、お題に対する発想力や設定の時点で全然及ばなかったんだなと思いました。
少し恥ずかしいけど、やっぱり自分が嫌いな物語ではないので。ここに置いておきます。

懲りずにまた書きます!

(約5,000字)

「もしも孤独に色があるなら、俺は、青だと思うんだよ」
 パレットの上で絵の具を捏ねながら、ゴウさんが言った。
「孤独…

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【小説】先生の花

【小説】先生の花

(約10,400字)

 いまはもう草原と化したグラウンドの真ん中に、先生は、ただひとりで立っていた。

 その凛々しい姿を目にした瞬間、あたりに立ち込めていた蝉の声が、しゅわっとやんだ。考えるよりも先に、身体が動く。わたしは草を踏み分け、先生のもとへ走り出していた。

 近くまで来ると、わたしは先生を見上げる格好になった。

 草の青さをいっぱいに載せた風が吹き、先生の身体がゆらゆらと揺れる。そ

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【小説】地球の上であなたと

【小説】地球の上であなたと

(約13,000字)

 バンのスライドドアが開くと同時に、金木犀の匂いを載せた空気が車内に流れ込んできた。後部座席にいた僕は顔を上げ、こんな都会の街にも咲いているんだなと思った。
「ここで降りてください」
 運転席から、コバヤシが人の良さそうな顔で振り返って言う。
「ここで、ですか?」
 聞き返しながらも僕はシートベルトを外してカバンを肩にかける。
「はい。あなたが面会を希望した方は、今日この場

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【小説】ハッピーエンド(第一回あたらよ文学賞応募)

【小説】ハッピーエンド(第一回あたらよ文学賞応募)

 第一回あたらよ文学賞に応募しました。
結果はニ次落選でしたが、嬉しい講評もいただけて、本当に参加してよかったです!

 以下、本文です。(約6700字)

         ◆◆◆
「カーペンターズって知ってるか?」
 私が訊ねた声が、薄暗い店内にふわりと浮かんだ。平日の夕方、行きつけの居酒屋は今日も私以外に客の姿はない。真冬の空は、すでにとっぷりと夜の闇に浸っている。
「知ってますよ。ずいぶん

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【小説】始まりの兆し、終わりのキッカケ

【小説】始まりの兆し、終わりのキッカケ

(約9,800字) 2023/12/26追記

「月が出てる」
 半歩先を歩くダイスケさんが白い息を吐きながらそう言った。12月26日の月曜日だった。
 道路に積もって凍った雪を踏む、わたしたちふたりの足音が、静かな住宅街に響いていた。綿をちぎってばらまいたような雪がふわふわと舞っている。
 ダイスケさんの視線を追いかけて東の空を見上げると、山吹色のほそい月が浮かんでいた。下弦の月だ。
 夜空が瞬

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【小説】星へ(第29回電撃小説大賞応募)

【小説】星へ(第29回電撃小説大賞応募)

約19,000字
第29回電撃小説大賞で三次通過(四次選考で落選)した物語です。
書いている間、自分自身がずーっと楽しくてわくわくした思い出の小説です🌌

    ★

 土曜日の午後二時。あの頃よく通っていた定食屋で、一人テレビを眺めている。

 入り口以外に窓がないからか、店内全体が日陰に入っているように薄暗い。昼時の混雑も終わり、客の姿はまばらで、厨房からは食器を洗う音が聞こえてくる。

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【小説】その苦しみの欠片ひとつ

【小説】その苦しみの欠片ひとつ

(約3700字)

「どうしてさあ、」

太陽の方向から声が落ちてきたから、わたしは反射的に顔を上げ、眩しさに目を細めた。
声の主は、わたしの身長と同じくらいの高さの防波堤の上を、太陽を背負って歩いていた。

高校の授業が終わって、幼馴染のハルと、海沿いの道を一緒に帰っているときのことだった。

「ーーーーのかな?」

海のほうを向いたまま続きを喋ったハルの声が、風に連れ去られる。

「なに??」

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【小説】夜間飛行(1/1話)

【小説】夜間飛行(1/1話)

約24000字
同じクラスの男子高校生3人が主人公です。

THE BLUE HEARTS 「月の爆撃機」歌詞
←この物語のなかで重要な役割を担っています

    *

 放課後の学校は、音で溢れている。
 ボクは屋上に立って、じっと、耳を澄ましている。やわらかい風が、頬を撫でる。
 野球部の掛け声や演劇部の発声、吹奏楽部の演奏、体育館の床とシューズが擦れる音に、駐輪場を出ていく生徒たちの笑い声

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【小説】続き

【小説】続き

(906字)

ベッドの上で目覚めると、あなたがいなくなっていた。

わたしはアパートを飛び出し、あなたを探した。
夜の冷たい風が、無防備な身体を容赦なく刺した。

あなたは、映画が好きだった。
わたしの部屋に来るときは必ず、コンビニの袋とレンタルショップの袋を下げていた。

「今までみた映画で1番好きな映画は?」
 わたしが訊ねると、あなたは、

「考えたこともなかった」
 と答えた。

 しば

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【小説】カラスの子

【小説】カラスの子

 朝の情報番組で、30代の男が家出した少女を自宅で軟禁し、逮捕されたというニュースをやっていた。
「私は彼女を助けたんです」
 警察の取り調べに対して、容疑者の男はそう供述したそうだ。

 僕は何の気なしにそれを眺めながら、味のしない朝食を無理やりに飲み込んで、機械のように外出する準備をしていた。

 アパートを出ると、太陽の光と冬の寒さが肌に刺さった。コートのポケットに手を突っ込んで、別に急ぎた

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【小説】君が月(1/1話)

【小説】君が月(1/1話)

約16000字
おじいさんが主人公です。
もしも頭の中で過去と現在の見分けがつかなくなったらどうなるんだろう、という空想から生まれた物語です。

   *

 目が覚めると、隣で眠っているはずの君が、いなかった。

 パジャマからセーターとスラックスに着替え、一階へ下りていく。家の中は物音ひとつせず、空気さえもまだ眠っているかのようだった。リビングへ続くドアを引くと、キイ、と蝶番がきしむ音がやけに

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【小説】少年とクジラ(1/1話)

【小説】少年とクジラ(1/1話)

 ある少年が、一頭のクジラに出会った。
 月光の欠片が海面をきらきらと漂う、静かな夜だった。

 少年は真っ暗な海底のような表情をしていた。
 クジラのほうも、月のように穏やかな瞳で少年を見つめていた。

 少年が口を開いた。
「人間の世界はつまらない。窮屈で、貧しくて」
 少年の言葉が泡になって上っていく。
「もう、嫌になったんだ」
 少年は、目を伏せうつむく。

「あなたは何もかも知っているん

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【小説】少女と風(1/1話)

【小説】少女と風(1/1話)

 ある少女がひとり、海を眺めていた。
 レモン色の陽射しが、水平線を照らしている。

 ふいに、少女の耳に声が届いた。

 「知ってる?あの海の中にはね、全部があるんだよ」

 はっとして辺りを見渡すものの、生き物の気配はない。
「全部?」
 少女は思わず聞き返し、じっと耳を澄まして答えを待つ。

 すると再び、声が聞こえた。

「そう。もう二度と戻らない命も、いま生きている命も、これから生まれる

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