マガジンのカバー画像

教材屋の独り言

47
教育関係の記事を放り込んでいます。「教材屋」と言ってますが「教材販売店」の人ではなく、「教材を作っている人」です。でも最近は広める・売る仕事の割合が大きくなってきました。軸はどこ…
運営しているクリエイター

#教材

教材屋にとっての「神は細部に宿る」

教材屋にとっての「神は細部に宿る」

久々に、「あー教材作っているなぁ」と実感できる仕事をしました。

本文の一文一文、一語一語に対して、辞書を片手に「もっとよい表現はないか」「この表記が適切か」ということを吟味していく仕事。正直、何も手を入れなくても及第点ではあるのです。このこだわりは、ほとんどの読者には気づかれないかもしれない。それでもベストを目指すという作業。

表記・表現って、ルールを決めて機械的に作業していくのが楽なのです。

もっとみる
【塾チラシ観察】高まる私学人気&思考力と表現力

【塾チラシ観察】高まる私学人気&思考力と表現力

今日のチラシはご存じ日能研。

■ このワード、ご存知ですか?

「このワード、ご存知ですか?」はなかなか興味深く。「グローバル教育」がちょっと浮いていますが(一般語に近い気も。共学化もそれ自体は…って感じ)、知ってるようで知らない言葉が並んでいるように思います。どうやら私学の教育を表すキーワードのようです。

■ 高まる私学人気上のキーワードの説明があるかな…と思ったら、ほとんどの言葉はチラシの

もっとみる
紙で見るか、モニタで見るか

紙で見るか、モニタで見るか

河合塾の小池先生が以下のようなツイートをされていました。私は「プリントアウトして校正」に一票を投じました。

やはり紙派が多数派。でも確かにディスプレイだけで完結させる人はいるし、私もモノによっては出力せずに済ませます(とはいえやっぱり基本は紙)

以下のまとめが大変興味深く。

プリントアウトがよい理由として、視線や光、姿勢、俯瞰性、「ペンでの赤入れ行為」の意義などなど挙げられている一方、「本当

もっとみる
【塾チラシ観察】塾で身につくスキルの定義について

【塾チラシ観察】塾で身につくスキルの定義について

★塾チラシの打ち出しを研究する(大げさ)シリーズです

新年度募集期につき、毎日たくさんチラシが入っております。塾通いが盛んな地域に住んでいるというのもあるでしょうが。

今回の塾は、プログラミング、英会話、作文、理科実験、絵画…と、とにかく多種多様なプログラムを導入しています。それを受けて、チラシでのキャッチフレーズは「夢をかなえる! 夢を見つける!」ということなのだと思います。

◆リンク:学

もっとみる
【塾チラシ観察】一生ものの思考力を、身につける。

【塾チラシ観察】一生ものの思考力を、身につける。

「2020年度から始まる新入試を各社どう捉えているか」を日々ウォッチしておるのですが、小中学生対象の塾はさほど推していない印象です。まだまだ見えないところが多いのと「まだまだ先のこと」という感覚が(塾というより親に)あるのかなと推測します。

写真は、そんな中で新入試対応を比較的大きく打ち出した某塾のチラシ。思考力を特に推しています。

(学習指導要領の)改訂の大きなポイントは「知識を使う力」

もっとみる
【思い出】高校時代使っていた学参

【思い出】高校時代使っていた学参

20年前に使っていた本が今も現役、というのがあり得るのが学参。私が使っていたものを思い出してみると…

■英語↑高3時の英語の先生がZ会シンパで、学年採用しておりました。「蚊の話」とかまだ覚えてる。当時、田舎者にとっては未知の出版社だったZ会ですが、私はデザインが妙に好きで、遠くの書店まで足を運んでいろいろ買っておりました。

↑どうやら「英頻」と呼ぶのが一般的らしいですが、私達は「即ゼミ」と読ん

もっとみる
【思い出】CTPとはなんだったのか

【思い出】CTPとはなんだったのか

私が新卒入社した当時は、DTP(Desktop publishing = PCで印刷データをつくる)の変革期にあたります。具体的には、QuarkXPressからInDesignへの移行期でした(私はQuarkを触ったことがありません)。

で、Indesign普及と同じ時期に盛んに飛び交っていた言葉が「CTP」です。DTPの仲間みたいですが、「Computer To Plate」、すなわちフィルム

もっとみる
【表記表現あるある】つまづく

【表記表現あるある】つまづく

意外と見かける、赤字入れたくなる表記が「つまづく」です。

語源が「爪突く」のようですし、歴史的仮名遣いである「つまづく」も使用を許容されてはいますが、少なくとも教材屋的にはより一般的な「つまずく」を採りたいところです。

「いなづま」か「いなずま」かというのも、同じ問題(?)です。教材屋としては「いなずま」を採ります。漢字表記の「稲妻」から考えるとかえって混乱するという…

特に小中学生モノであ

もっとみる
「ルビ  小さな働き者」

「ルビ 小さな働き者」

昨日の朝日新聞朝刊「文化の扉」欄がなかなかに興味深く。

リンク先は会員じゃないと読めないんですけど、特に(教材)編集に関わる方は楽しいと思いますのでよろしければどうぞ。

ルビを「黒い虫の行列」と呼び廃止を主張した山本有三と、「働き者の黒い虫たちを駆除すると日本語はバラバラになる」と擁護した井上ひさし。「黒い虫」って表現がなんともよいです。

そもそも「ルビ」って呼称、何の疑問も持たずに使ってい

もっとみる
「●●力」はセンスが問われる

「●●力」はセンスが問われる

教育産業における宣伝文句としてよく使われるのが「●●力(が身につく!)」というものです。

既存の言葉でもよい、というかそちらの方が多い印象ではあります。最近だと「創造力」「課題(問題)解決力」「論理的思考力」あたりが刺さる印象(自分も使ってるんだけど)。

---
造語の場合はセンスが問われます。実はずいぶん前に『●●力養成ブック』(仮称)という教材を担当したんですけど、元々自分が考えていたタ

もっとみる
【教育メモ】外化する力≒表現力

【教育メモ】外化する力≒表現力

教育においては「思考する」ことがとにかく重視されてきましたが、教育改革の議論の中で、いわゆる「学力の3要素」として「思考力」だけでなく「判断力」、そして「表現力」にも光があたっています。

「判断力」は自分自身よくわからないところがありもっと勉強せねばですが、「表現力」については仕事絡みでこれまでいろいろ見たり聞いたりしてきました。自分の整理のために少しまとめておきます。

教育学の世界では、表現

もっとみる
「合格体験記」は役に立つか否か

「合格体験記」は役に立つか否か

受験指導を生業とする場合、いちばんの宣伝になるのは「合格実績」であり、「合格体験記」です。「合格体験記」は合格者の顔が見えるので親近感が持てますし、商品・サービスの効能をPRする性格があるので、できる限りたくさん集めたいところ。よって各社2月〜3月にかけて、合否結果の確認と取材を血眼になって行うわけです。

この「合格体験記」に疑義を呈する記事を見つけたのでシェア。

要するに、当該東大生(や保護

もっとみる
続・古典は本当に必要なのか

続・古典は本当に必要なのか

「古典は本当に必要なのか」というテーマ、当該のシンポジウムの枠を越えて、ネット上(主にTwitter上)で議論を呼んでいます。シンポ当日、実況が盛んに行われた結果、ハッシュタグ「#古典は本当に必要なのか」がトレンド入りしたことが大きかったかと。
※シンポジウムの動画視聴メモはこちら

で、三省堂の辞典編集者・飯間浩明さんもTwitterで本件に言及されており、大変興味深かったので転載させていただき

もっとみる
【視聴メモ】古典は本当に必要なのか

【視聴メモ】古典は本当に必要なのか

先週開催されたイベント、気になってたんですけどYouTubeにアップしてくださってたので観ました。

感想としては、いろいろ考えるきっかけにはなりましたが、よいイベントだったかというと微妙。議論が噛み合ってなかったというか、前提が共有されてなかったというか。もやもやしました。

●古典を現代人が学ぶ必要があるのか
●高校国語の中で古典が占める割合は今のままでよいのか
●高校で古典を必修とする必要が

もっとみる