「合格体験記」は役に立つか否か
受験指導を生業とする場合、いちばんの宣伝になるのは「合格実績」であり、「合格体験記」です。「合格体験記」は合格者の顔が見えるので親近感が持てますし、商品・サービスの効能をPRする性格があるので、できる限りたくさん集めたいところ。よって各社2月〜3月にかけて、合否結果の確認と取材を血眼になって行うわけです。
この「合格体験記」に疑義を呈する記事を見つけたのでシェア。
要するに、当該東大生(や保護者・指導者)が語る合格体験記は、あくまでも本人に与えられた教育の一部を示すものに過ぎず、
●体験記で語られた教育・学習は本当に有効なのか
●体験記で語られていない環境や遺伝などの影響はどうなのか
といった側面から、体験記を盲信するのは危険、ということかと思います。
さらに、最近よく聞く「エビデンス・ベースド」な教育についても、やはり個人個人への効能まで保証するものにはならない、とのこと。
つまり、「エビデンス」があるとされる教育も、全体で見れば効果があるのだが、それが自分の子供にどの程度効き目があるのかは事前に分からないし、効き目があるとも限らないのである。
(「東大生やその母親が語る「合格体験記」の信頼性が高くない理由」)
となると、世の中の教育本・学習本も、塾・予備校での指導も、有効性を疑いたくなってきますね…どうすればよいか、著者の畠山勝太さんはこのように述べています。
ただ、私に子供ができたら、「東大合格体験記」を信奉するのではなく、効果があるというエビデンスもそのメカニズムも分かっている教育論の中から、試行錯誤で自分の子供のやりたいことや特徴に合うものを探していくことだろう。もちろん配偶者と相談しながら。
(「東大生やその母親が語る「合格体験記」の信頼性が高くない理由」)
結局、何事も鵜呑みにせず、試行錯誤しながら自分に合った学習をするしかない、と…。ただ、そうであるならば、信憑性に疑問の目を向けられている(エビデンスが無い・希薄とされている)合格体験記も、試行錯誤の選択肢を増やすという意味では(全てではないにせよ)使える気もします。少なくとも、その学習をした・その教育を受けた人が合格しており、かつ本人は有効だったと捉えているわけなので。
ちなみにビジネス書も著者の成功体験記と考えれば、本に書かれている要素以外が成功に寄与している可能性も十分にあるわけで、その手のものは参考になるかもしれないけど鵜呑みにしてはいけない、というのはわかる気がしますね…
ともあれ、教育効果の測定って難しいなぁと思うとともに、教材づくりにおいても学習効果という側面をしっかり意識せねば…と改めて気を引き締めた次第です。